第11話 鈴①
「武器ってどういうものがあるんですか?」
「そうだな。お前たちが悪魔と近距離戦闘に向いているのならば
こっちの剣を、あまり近くに寄りたくなく
遠距離戦に向いているのならば、こっちの銃だな。
お前たち、適正審査は受けたよな?」
適正審査という言葉を初めて聞いた二人は頭を横に振った。
すると葉山は心底驚きの表情を浮かべたのち、鈴を睨みつけた。
「鈴。てめぇ!!毎度毎度言ってるよなぁ。
新しく人を連れてきたらまず先に適正審査を受けさせろって!!
こっちの仕事が増えるだろうが。はぁ。まったくお前たちも大変だな。
こんな奴に連れてこられて。」
鈴に対して怒鳴り声をあげてしまった葉山を
近くにいた武器庫の人が一斉に見ていた。
それを見て、明と真はこんな女の子になんてひどいことを言うんだろうか。
せっかく親切でここまで案内してくれたのに。泣いているんじゃ・・・
そう思い、鈴の顔を見た瞬間、
二人は今までに感じたことのないほどの寒気を感じた。
鈴の顔面には明らかな怒りが張り付けられていたのだ。そして
「葉山、その言葉を美玲さんに一言一句同じ言えるように言える?」と
「はぁ!?言えるわけないだろ?美玲さんにそんなことを言ったら、
俺リーダーに殴られるぞ。というかそれと何の関係があんだよ!!」
葉山は鈴の言葉に対して、
なんで美玲さんの名前を出してきたのかが分からずに、
また強い口調で鈴を責めた。
すると次の瞬間、突然葉山が宙に浮いた。
「関係があるも何も!!あの子たちを連れてきたのは美玲さんよ!!
それなのに、良くも私のことを責めてくれたわね~!!
皆に見られたじゃない!!この馬鹿葉山ぁ!!」
普通にこの言葉を聞いた人々は、可愛い女の子が大人の男の人に怒られて、
口論になっている。可愛いとぐらいにしか思わないだろう。
しかし明と真、そして武器庫にいた人たちは違う感情を抱いていた。
その感情の名前を人々はこう呼んでいるだろう。恐怖・・・と。
葉山が宙に浮いた理由、それは鈴にアッパーを食らわされ、
普通であれば、足が少し浮くくらいの衝撃だろうが、
葉山が受けたのはそんな小さな衝撃ではなく、
トラックに突っ込まれたような衝撃が彼の体を襲ったのだ。
それだけでも十分、その場にいる人に恐怖という感情を刷り込ませたのだが、
それだけで鈴の怒りは収まることはなかったようで、
宙に浮かんだ葉山に対して、鈴も飛び上がると、
見ている人の目にも映らないスピードで殴る・蹴るの暴行を繰り返していたのだ。
そして最後の「馬鹿葉山ぁ」の声とともに
とどめを刺すかのようなかかと落としを放った。
ド~ン!!
葉山が宙から落とされた衝撃で爆音とともに地面が揺れた。
そのせいなのか、いやそんな恐怖体験をしたからだろう。
明と真の足は小刻みに震え、顔からは血の気が失せ、
すっかり鈴のことを畏怖の対象として怯えてしまった。
鈴は地面に足を付けると、二人のもとに駆け寄って行った。
その後ろで葉山は意識を失っているのか、はたまた死んでいるのか、
ピクリとも動かない。
「まあ、あの馬鹿は放っておいて、適正審査に行きましょう」
「「は、はい!!」」
真と明はさっきまでの鈴に対する態度を改める決意をした。




