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#050 セリウスさんの家を作ろう

 もうそろそろ今年の狩猟期間が終わるけど、俺達の狩猟は開始後3日で終了した。あれ以上稼いだらある意味顰蹙ものだ。


 今日は、セリウスさんのログハウス造りのお手伝い。物騒な刀は置いていくから、俺の装備ベルトにはM29のみがバックの裏に隠れてるだけだ。

 セリウスさんの斧をもってこいという言葉に、姉貴は鍛造の斧をザックから出してくれた。薪割り用ではなく、刃の薄いクラフト用の斧である。手斧タイプだから部材の修正には重宝するだろう。ありがたく受取り、腰に差した。

 

 伐採用の両手斧を持ち、「じゃあね!」って家の扉を開ける。


 「お弁当は後で届けるねー!」


 姉貴の声に片手を上げて応えると、石畳を歩き通りに出た。


 もう直ぐ狩猟期間も終わるので、あんなにたくさん出ていた屋台も段々と少なくなってきている。

 それでも何軒かは威勢のいい客引きの声を上げている。

 適当に片手を上げてそれに応えながら進むと、キャサリンさんのログハウスに着いた。


 「おぉ、来てくれたか」


 キャサリンさんの家の隣にある空地で、何やら腕組みしながら考えてたセリウスさんがいた。


 「何か、心配ごとですか?」

 「心配というわけではないのだが……。いざ、家を作るとなると、どんな家にしたらよいかと悩みはじめてな」

 

 これは、意外とよくある話らしい。道場に通っていた生徒達が、親の造った家に不平を言っていたのを聞いたことがある。

 

 「最初から完璧に作ろうって考えるからですよ。

 セリウスさんもミケランさんもハンターなんですから、状況に応じてどんな場所でも寝起きは出来るはずです。

 だから、最初は普通の家を考えて、少しづつ直してけばいいんですよ」


 「確かにそうだな。考えすぎなのか……。ところで、普通の家とはどのようなものなのだ?」


 凄い切りかえしだ。俺だって、この世界の普通の家なんて知らないぞ。  ん!……俺達の家は普通の家だよな?


 「俺達の家を参考にしたらどうですか?……子供が多くても問題ないですし、住み心地もいいですよ」

 「だとすれば……、こんな感じだな」


 セリウスさんは棒きれで地面に簡単な間取りを画いた。

 広間と左の小部屋。右には台所と浴室等。広間の半分程はロフトにして、入口の正面には暖炉を置く。


 「良いんじゃないですか」

 「よし。では、まず縄張りからだ」


 ここで、この世界の長さの基準となる物差しをはじめて見た。以外と尺貫法の物差しに近く、ディと呼ばれる単位は約1尺の長さだ。

 

 先ず、広間の間口と奥行きを決めて、全体の大きさを考える。日本建築は3の倍数が基本だから、それを真似て間口は12D、奥行き24Dとした。


 「こんな、感じですけど……」


 簡単に寸法を測って、4隅に棒を立ててみた。


 「以外と小さいな。だが、家族が増えれば増築すればよい。これで行こう!」


 左の小部屋の横幅と台所の横幅は8Dとすれば、全体の大きさは、28D×24Dだ。

 少し広く杭を打ち、28D×24Dになるように紐を張った。更に、内側に8D、12D、8Dの紐を張ると、縄張りが終了となる。


 2人で一服していると、村人が荷馬車で石を沢山運んできた。どうやら、土台造りをセリウスさんが頼んでいたらしい。

 早速俺達の縄張りを基準に土を固めながら石を積み上げていく。

 凸形になるように石を並べて漆喰で固めている。セメントの代わりみたいだけど、大丈夫なんだろうか。

 

 俺達は次の荷馬車が運んできた解体されたイカダの木を使って、壁になる木材を斧で切断しはじめた。

 

 十数本を切り出すと、嬢ちゃんずが手篭を持って現れた。


 「「お昼を持ってきたよ」」


 俺達は村人を誘ってお昼にすることにした。

 アルトさんが邪魔にならない所で簡単な焚火をおこすとポットでお茶を沸かす。

 ミーアちゃんとサーシャちゃんは、皆に黒パンサンドを配ってあげてる。

 

 「まだ、ぜんぜん進んでおらぬではないか。もっと頑張らぬか!」


 サーシャちゃんは、まだ土台の形もなしていない現場を見て、俺を叱責したけど、こればっかりは、急いでも無理だぞ。土台だけで20日は見る必要があるだろう。

 でも、「はい。頑張ります!」って答えておいた。でないと、さらにハッパをかけられる可能性がある。

 

 「ミケランはどうしたのじゃ?」


 アルトさんはキョロキョロと辺りを見渡してセリウスさんに聞いてみた。

 「うむ……。雑貨屋に行くと言っておったが、そういえばまだ戻らんな」


 俺達がそろそろお昼を終わりにしようとした時、ゴトゴトと一輪車を押してくるミケランさんを通りに見つけた。

 何か、沢山の荷物を乗せてるみたいだけど……。


 「あぁ!先に食べたにゃ」


 空地の端に一輪車を置くと、此方に走ってきて俺達を叱責する。でも、買い物にどれだけ時間を掛けてきたんだ?

 それでも、ミーアちゃんの差し出した黒パンサンドを齧りだしたら怒りもおさまってきたようだけどね。


 「ミケランさん。何を買ってきたんですか?」

 「あぁ、アキト。今日はありがとにゃ。……家を作る道具にゃ。それと、ギルドに行ったら、マスターがこれをくれたにゃ」

 

 なるほど、一輪車にはいろんな大工道具が乗ってるぞ。……そして、俺に差し出した手には、薄い本がある。題名は「……君にも出来る一戸建て」

 中を見てみると、意外とまともな記述だ。これなら、木組みの仕方も参考になるかもしれない。

 

 「セリウスさん。この本役に立ちそうですよ。色々と参考になります」

 「そうか。だが、先は長い。のんびりやるさ」

 

 村人達は、お昼を食べて帰っていった。午後は、狩猟の獲物運びが始まるのだ。

 俺とセリウスさんは黙々と木を定尺寸法に斧で切っていく。

 ミケランさんは嬢ちゃんずを従えてピンと張った紐の中を偵察している。

 そんな感じで、家造り1日目は終了した。

 

 そして、ひたすら斧で木を定尺寸法に切る作業を続ける日が続いたけど、今日はそれも一休み。

 狩猟期間が今日で終了するのだ。

 みんなで西門に出かけ、広場にある掲示板を見る。

流石に、俺達を上回るチームはいなかったが、皆1万から2万程度の獲物をとることができたようだ。


 この狩猟を行なうために集まってきたハンター達は午前中に山から下りてきている。後は、セリの代金を保管してきたギルドが、税金のような形で、獲得金の3割を引き、残りをハンターに支払う。

 運搬等を行なった村人への支払いは明日ギルドで行なうそうだ。

 ここで支払いを受けたハンターは、すぐさま町や王都に帰る。小さな村には洒落た酒場も無いからだ。

 登録番号をシャロンさんが呼ぶと、鑑札札と引換えにセリの売り上げを支払っていく。

 

 「登録番号13番!」


 シャロンさんの呼ぶ声にセリウスさんが受付に行くと、しばらくして大きく膨らんだ革袋を持って帰ってきた。


 「では、一旦アキトの家に行こう。そこで分配だ」


 俺達はキャサリンさんを誘って帰路についた。


 テーブルには、俺と姉貴、キャサリンさんとジュリーさんそれにセリウスさんとミケランさんが着いた。嬢ちゃんずは暖炉の前で夕食のシチューを温めている。

 本来はアルトさんとミーアちゃんも分配される側なのだが、それは、姉貴とジュリーさんが代理を務める。


 「俺達の獲得金額は、72300L。ここから3割が引かれて、分配金額は50510Lだ。狩猟に上下は無い、山分けとする。

 1人、6410Lで30Lが余る。これは村に寄付したいと思う。良いな。」


 「「いいわ(よ)」」


 そんな訳で、俺達は大銀貨6枚と銀貨4枚それに銅貨を10枚手にいれた。

 姉貴が俺達の分け前を一括して預かるけど、姉貴はミーアちゃんの分を別の袋に入れている。

 

 不思議に思って聞いてみたら、「持参金の準備よ!」って言ってたけど……。だいぶ先の話だよな。

 だいたい、そんなことにはならないはずだ。


 「俺を倒してから連れて行け!」


 うん。これで行こう。


 「これで、家が形になりますね」

 「あぁ、村人に支払う人工費もバカにはできん。だがこれで何とかなるだろう」


 村人には1人、1日で10Lを支払うそうだ。10人で50日とすれば、それだけで5000L……こりゃ大変だ。頑張って手伝わないと、セリウスさんが破産しかねない。


 分配が終わると、皆で夕食だ。嬢ちゃんずの為にこないだ椅子を4個買っておいた。お客さんが来た時に座る場所が無くて困るのはいやだものね。

 嬢ちゃんず監修のシチューの出来は良かった。

 これに黒パンを付けながら食べると結構美味しいんだけど、サーシャちゃんはきちんとパンを千切って食べている。こういうところはお嬢さんなんだよな。

 

 セリウスさんの家は1週間ほど掛かって土台ができた。10日程乾かして、いよいよ丸太組みを開始することになる。

 

 そんな訳で、ひたすら毎日、俺とセリウスさんで木を定尺に切る作業を続ける。

 ミケランさんと姉貴は嬢ちゃんずと一緒に湖の岸から握り拳2個分位の石を沢山運んでいる。これは、暖炉を作る材料にするそうだ。暖炉と煙突・・考えるだけでもかなりの量が必要となる。

 暖炉は冬までには作りたいと言っていたが、出来ない場合は囲炉裏を作るなんてセリウスさんは言っているけど。


 狩猟期間が終わると日を追って涼しくなってきた。朝晩は少し寒いと感じるようになってきた。

 キャサリンさんは「後、一月位で初雪になりますよ」って言っていたが、暖炉の薪は大丈夫なんだろうか?……少し心配になってきた。

 

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