プロローグ
つたない文ではありますが、読んでいただけると嬉しいです。
「おはようございます、壬生さん」
今日も僕はその店に入る。賑やかな表通りから一本外れた裏通り。何もないそこに平屋の大きい家があるとは、誰も考えないだろう。
玄関を入り中を覗く。静かな室内には人の気配がない。
いつものことだ。いるのに返事をしないから、中に入るまで確認は出来ない。「壬生さん? いないんですか?」
居間には読み広げられた新聞、コーヒーの入ったマグカップがテーブルに置かれたままだった。
またそのままにしてどこかに行ってしまう……。
ため息をついて新聞をたたむ。すると一枚の紙切れが床に落ちた。
「……なんだろ」
紙には見慣れない文字と模様が書かれている。
―― なんだっけ、この文字……。
見たことのあるその文字は漢字と何かが混ざっている。そして思い出す。
「あっ!」
思い出した瞬間、横から手がのび紙を取られる。
見ると壬生さんが不機嫌そうに顔を歪めていた。
「壬生さん……」
「人の物勝手に見てんなよ、松陰」
「松陰て呼ばないで下さい。ちゃんと松生千陰って名前があるんです」
「はいはい……。何回も聞いてるよ」
耳を塞ぎアピールする。僕は荒く息を吐くしかない。
「そうだ、仕事が入ったんだ」
「……仕事、ですか?」
壬生さんは話をそらすかのように別のメモをポケットから出してみせる。それには呪いについての依頼が書かれてあった。
「呪い?」
「嘘臭いよな? だからさっさと終わらせんの」
僕に向かって「行くぞ」と言うとさっさと出ていった。
何でも依頼を受け付ける何でも屋。壬生辰曉は今日も仕事へ向かう。とんでもない出来事に巻き込まれるなんて予想もしないまま……。




