38話:自己紹介
あれから2回ほど"Fire"を使って魔物を一掃したあと昼休憩に入った。これでだいたい階層の20分の3を攻略したことになる。ほぼほぼ俺の炎魔法で森を焼き払い、そこから逃れてきた残党をほかのメンバーで掃討するといったかたちだ。
この調子で行けば3~4日でこの階層を攻略できそうだ。
俺とアーサーはハンスさんからの依頼ということもあり、この1週間は特別外泊許可を貰っているため木・金もダンジョン攻略に時間を避ける。
この階層は経験値も大変美味しいのでゆっくり一匹残らず狩り尽くそうと思う。
今は各々持参した昼食を輪になって食べているところだ。周り一体を焼き払ったので見晴らしも良く、魔物が出たら直ぐにわかるため特に見張りも立てず寛いでいる。
「そうだわ、せっかくだしお互いに自己紹介しましょう!」
アーサーの隣でもぐもぐとおにぎりを頬張っているとシリネが急に手をパンッと鳴らして自己紹介を提案してきた。
「確かに、一緒にダンジョンを攻略するのにまだ互いのことをほとんど知りませんでしたね。」
「でしょ?ていうことでじゃあまず言い出しっぺの私から行くわね!」
そこにハクも同意したことで早速自己紹介が始まった。
「私はシリネ・カーネリアン。職業は聖女でヒーラー全般とバフが使えるわ。一応ユニークスキルで聖女の祈りっていう死者蘇生のスキルを持っているわ。でも魔力依存だからこの階層ではスキルが使えないんだけどね。あと、クリスとは幼なじみなの。ちょっと天然でぶっきらぼうだけど本当は良い奴だから仲良くしてくれると嬉しいわ!」
「...おい。」
シリネの最後の一言にクリスがジロっと睨むがシリネは何処吹く風だ。
「じゃあ次はクリスね!」
そのままシリネの隣に座っていたクリスが指名される。
「...クリス・レイモンドだ。職業は英雄。ポジションはオールラウンダー。ユニークスキルは全ステータス10倍の起死回生と10秒間どんな攻撃も無効化する絶対防御がある。が、起死回生は体力が残り1割を切らないと使えないし絶対防御はクールタイムが6時間という制限がある。...それと、君たちの実力を疑ったこと、謝罪する。悪かった。」
クリスが頭を下げほかの面々も同じように謝罪をしてくる。どうやらずっと機会を伺っていたようだ。
「そんな!全然気にしてませんよ!ね、ミホーク先生、リン。」
S級冒険者全員がこちらに頭を下げている状況にアーサーがあたふたし急いで答えた。それに俺とミホーク先生も同意する。
「ありがとね。この階層はリンくんが要になると思うから私たちのパーティーは全力でそちらのサポートをさせてもらうわ。そのためにもお互いのことを知っておいた方がいいと思うし自己紹介を続けましょうか!」
シリネの言葉にクリスの隣に座っていたゼクトが応じる。
「じゃあ次は俺だな!俺はゼクト・ライナス。見ての通りライオンの獣人で職業は狂戦士で近接アタッカーだな。狂獣化っていうユニークスキルを持っていてライオン簡単に言うと体力を消費した分他のステータスを上げるスキルだ。ただライオンの姿にならないと使えないがな。」
ライオンの姿になるという言葉に思わず反応してしまいそうになる。
(後でモフらせてくれたりしないかな...。)
馬鹿なことを考えてるうちにハクの自己紹介に移った。
「私はハク・ミースガルド。種族はエルフで職業は大精霊使いです。基本的には精霊に戦ってもらってますが、精霊化というユニークスキルを持ってますのでこれを使って近接で戦うこともありますね。まあ所謂精霊降ろしのようなスキルです。」
なんでも魔力を消費して精霊を降ろすのだそうだが、そもそも成功させるには一定以上の知力があることが前提だそうで今はその基準に達していない(デバフのせい)ため使えないとの事だ。
「じゃあ次は私〜。果たしはローズ・バレット。ダークエルフで職業はネクロマンサー。私も基本はアンデッドを生成して戦うんだけど〜知力と魔力がそれなりに必要度から今は使えないかな〜。ただ暗殺者に近いスキルも沢山持ってるから近接もいけるよ〜。」
ローズは太ももに挿していた短剣を手に取ると手の上でクルクルと回しながら話した。本当に剣の扱いには慣れているようだ。
「次は私か。私はシュベール・ダックワーズ。職業は大賢者だ。炎・風・土・光・雷の5属性が使える。ただ私も魔力依存のためここでは大した魔法は撃てないだろうし数も出せない。だからあまりあてにはしないでくれ。」
「ワシはディクトル。ドワーフじゃ。職業は武具マスターで材料さえあればなんでも思う通りの武器、武具を作れるしどんな武器でも扱うことができる。ワシは知力依存で武器を作るんじゃが今はデバフで知力が低下しとるからあまりいい武器は作れんじゃろう。」
クリスたちのパーティーはこれで全員だ。それぞれレベルも桁違いに高く、本来ならばS級ダンジョンもそれほど苦労なく倒せるくらいの強さを持っている。だが、この階層は特に全ステータス10分の1というデバフが付くせいで、クリスたちはもちろん今まで名のあるSランク冒険者達が何年も足止めされてきた。でもそんな時に攻略の鍵となりそうな俺が現れ、ハンスさん含めた上層部が目をつけたという訳だ。
俺たちもクリスたちと同様に自己紹介を終え、やはり今後も俺を要としてこの階層を攻略するという方向で固まった。そして今はステータスの話からそのまま俺の話題で俺以外が盛り上がっているところだ。
「本当に魔力の消費無しで無制限にあの規模の魔法が使えるのか?」
「なんて羨ましいスキルなんだ...!私にもそのスキルがあれば...!!」
「まだ小さいのにもう5種類の魔法が使えると...?シュベールと同格、いやユニークスキルも鑑みるとそれ以上じゃないですか!やはり私と結婚しましょう!」
「ハク〜また病気が出てるよ〜。でもリンくんの歌はすごく好き〜。ずっと聞いてたいかも〜。」
「同感だ!それに踊りもかっこよかった!戦いも忘れて魅入ってじうほどだったぜ!」
何故かまたゼクトは俺を膝の間に座らせ、その周りをクリスたちメンバーが囲って好き勝手話しているという状況だ。ミホーク先生はシリネと何かを話しているしアーサーもディクトルと聖剣グラムを見ながらなにか話しているのでこの状況にツッコミを入れてくれる人は誰もいない。
さっきからクリスは真顔で見てくるし、シュベールは目を血走らせながら凝視してくるしで仮面をつけてるのに恐怖を感じる。ハクはハクで隙あらば手を握ろうとしてくるし...もうヤダ。
(ゼクトのしっぽでも触って落ち着こう。)
そばにあった毛先がフサフサのゼクトのしっぽを触らせてもらいながらその輪の中から開放されたのはアーサーが剣の話を終えて戻ってきてからだった。




