32話:C級ダンジョン、ドライブ配信
「ひゃっほーーーーい!」
"Earth"を歌って車に魔力を供給しながら隣のアーサーの話に耳を傾ける。
「あ、こんにちは!えーっとミルカさん?見に来てくれてありがとうございます!"今どこにいるんですか?"今はですねー、C級ダンジョンにいます!」
配信を始めて10分ちょっと。既に何人かの人が動画を見に来てくれている。それにハンスさんがコメント機能も追加したらしく、視聴者がコメントを送れるようになっているのだ。
俺は歌っていて話せないのでコメントの返信は全てアーサーに丸投げしている。
「"今どういう状況ですか?"今はC級ダンジョンで車、この俺たちが乗っているやつのことですけどこれに乗ってダンジョンをドライブしているところです!」
「"めちゃくちゃ若そうだけど君たち何歳?"俺たちは10歳です!」
「"無許可でダンジョンに入ってるの?"いえいえ!ちゃんと許可はとってますよ!特例で俺たちはつい最近ハルバード学園に入学してランク認定も受けてます!」
「"ランク証を見せてください"?ちょっと待ってくださいね...、ほら、これがランク証です!俺はCランクでこいつはなんとAランクなんですよ!!」
視聴者からのコメントにアーサーが次々と答えながら胸元からランク証を取り出し俺たちを自動追跡しているカメラに見せる。ちなみに俺の方も見せろとのコメントがあったので胸元から取り出して見せる。
"10歳でもうランク証持ってるなんてすごっ!"
"俺なんてまだDランク..."
"隣の人はなんでずっと歌ってるんですか?"
"君たちの職業は何?"
"魔物はどうやって倒してるの?"
"周りの景色がすごく速いんだけどどんなスピードで攻略してんの!?"
"運転してる子、すごくタイプです!"
"歌ってる子なんか見れば見るほど全然顔覚えらんないんだけどなんで??"
"顔全然わかんないけどすごく綺麗な歌声!ずっと聞いてたい!"
"なんて曲ですか?初めて聞きます。"
「うわっ、急にコメント増えたっ、て、えっ!?視聴者数が100超えてる!!」
さっきまで10人前後だったのに一気に人が増え始めた。アーサーは運転しながらコメントを拾っていたので急に大量に流れ始めたコメントにあたふたしている。あたふたすると同時に車も蛇行し始めた為、「揺らすな、酔う。」という意味を込めてアーサーの肩を叩く。
アーサーはどどいながらも拾えるコメントから拾っていく。
「"君たちの職業は何?"職業は...あ、そうだ、じゃあ今からちゃんと戦うんで当ててみてください!」
突然のクイズ方式にコメント欄は盛り上がっている。アーサーが戦うと言うので車の操縦権を俺に切り替えていつも通り歌で操作する。
アーサーは車の操縦権が俺に切り替わったのを確認すると背中に背負っている聖剣グラムではなく、腰に指している普段使いの剣を取り出し構えた。
アーサーがちらっとこちらを見るので今までアーサーが運転していた時速100キロから一気に200キロにまで速度を上げる。
"うわっ、スピードえぐっ!"
"速すぎっ!"
"すげぇー!!"
とてつもない速さにコメント欄も沸き立っている。でも見せ場はここからだ。
ほとんどの魔物を車ではね飛ばし、対処しきれなかったものや飛行する魔物はアーサーの剣技によって瞬く間に一刀両断されていっている。
視聴者からしたら一種のスプラッタ映画を見ているような気分になることだろう。
"グロいグロいグロい!"
"どんな動体視力してんの!?"
"手元が全く見えない件について"
"あれ...、C級ダンジョンってこんな感じだったっけ...?"
"ほんとに10歳!?"
"イケメンが血みどろに..."
想像以上のアーサーの実力にコメント欄は大騒ぎだ。
"剣を使ってるってことは剣に関する職業だよね?"
"そうだった、職業を当てようとしてたんだった。"
"うーん、剣士...よりは上の職業だよね。"
"剣豪とか?"
"魔法は使って無さそうだから魔剣士ではないか..."
"騎士じゃね?"
"あー、そうかも"
"いや、でもあそこまでの実力だったら剣聖もあるかも"
"確かに。"
アーサーの職業についてコメント欄は色々と議論を重ねているが、惜しい答えはあるもののまだ正解は出ていない。
そうこうしているうちに1階層の攻略を終えてしまった。
"え、もう1階層終わり?"
"あれ、この配信始まったのって1時間前とかじゃなかった?"
"?????"
"俺がおかしいのかな...なんか1時間で攻略が終わったように見えたんだけど"
"私も同じ幻覚が見えてる..."
"D級ダンジョンでも1階層分攻略するのに5日くらいかけてるんだが...?"
「ふぅー、1階層終わりっ!どうですか?俺の職業分かりましたか!?」
アーサーは剣についた血をピッと振り払って鞘に収めながら視聴者に語りかける。だが視聴者はまだ混乱中でそれどころでは無さそうだ。
「ははは。攻略時間ですか?俺も一番最初にこいつと組んでダンジョンに来た時はめちゃくちゃ驚きましたけどもうこれがデフォルトって感じで慣れました。それに今日はまだ遅い方なんですよ!」
"これで遅い方って何事!?"
"宇宙人ですか???"
"俺たちとはレベルが違う..."
"これが最近の若者か...。俺にもこんな時代があった...いや、なかったな(泣)"
"それより結局職業はなんなんだ?"
「あ、そうでした!俺の職業は聖騎士です!スキルを使わなかったので分かりにくかったですね、すみません。ん?ああ、こいつの職業ですか?」
コメント欄の"もう1人の方の職業は何?"という質問にアーサーがちらっとこちらを見る。そしてニヤッとするとそのまま言葉を続けた。
「こいつの職業も当ててみてください。もし当てれたら仮面を取ってくれるそうです。あ、ちなみに学園関係者の人、もしいたら内緒でお願いします!」
人差し指を立ててしーっというポーズをしながらカメラに向かって言葉を紡ぐ。
(おいおい、これもう仮面外せないやつじゃん。アイドルなんて職業、俺が世界初なのに当てれるわけないだろ。)
だがコメント欄はこの職業当てゲームが気に入ったらしく大盛り上がりだ。当てたら正体を明かすというような商品設定が特に良かったらしい。
というわけで今日から何故かダンジョン内だけでなく学園などそれ以外の時でも一日中仮面をつけて過ごす日々が始まった。
アーサー曰く、今後は色んなところでいろんな人が配信をするため、どこで顔バレするか分からずそうなると面白くないとの事だった。
まあでも俺もすぐに学園関係者がバラしたり口を滑らせたりするだろうと思って軽い気持ちでアーサーの作戦に頷いたのだが、これが意外にもみんな俺の職業をバラすことなく、逆に職業がバレずに俺が仮面で過ごすのを面白がったせいで長い間仮面生活を送る羽目になるのだった。




