31話:パントクラトール
剣の鑑定が終わり、次は仮面の鑑定に移る。ハンスさんが仮面を手に取りまた凝視する。
「おお、これも凄いですね!」
ハンスさんは鑑定した結果をミホーク先生から受け取ったレポート用紙に書き込んでいく。
【パントクラトール】
・レベル1
・魔力+150
・所有者の精神を安定させる(精神系魔法無効化)
・所有者の性別、年齢などあらゆる特徴の認識を阻害する。
・所有者の魔力を一定量流すことで仮面を成長させることが可能。(所有者:未定)
※最初に魔力を流したものが所有者となりその後は譲渡不可。
「こっちも成長型ですか!この仮面はリンくんが適任じゃないでしょうか。」
ミホーク先生の言葉にアーサーも頷く。
「そうだよ!精神を安定させるって書いてるし、これ付けてたらもしかしたら虫とかも平気になるんじゃない?」
「そうですね。この前のウェアウルフのような魔物から認識を逸らすこともできますし。」
2人とも俺が仮面を持つことに賛成してくれてるようだ。
「2人がそう言ってくれるならこの仮面はありがたく俺が使わせてもらいます。ありがとうございます。」
ということで仮面に軽く俺の魔力を流し所有者を自分に設定した。
「では、鑑定も終わったことですし私はお暇させてもらおうと思うのですが、その前にもう1つお知らせがあります。」
鑑定してくれたハンスさんにお礼を言おうとするとハンスさんはおもむろに持参していたカバンからあるものを取り出した。
「これを見てください。」
そう言って取り出したのは成人男性の拳大の大きさの黒い球体と前世でよく見ていたスマホのような物体だった。
「これはなんですか?」
ミホーク先生もこれについては何も知らなかったようで机の上に置かれた物体をまじまじと見ている。
「ふっふっふっ。よくぞ聞いてくれました。これはここ1週間、研究所に缶詰になって職員一同と心血を注いで開発した動画配信機器です!」
「動画配信機器...?」
アーサーは聞きなれない言葉に首を傾げている。
「リンくんの歌が他者のステータスをアップさせることができると知って、学園内の生徒たちだけでなく、世界中の冒険者たちのステータスもアップできないかと考え、これを開発しました。こちらの球体の機器に撮る対象者を設定すると自動で追尾してくれるのでダンジョン内でも撮影することが可能です。そしてこちらの四角い端末で撮影している様子をリアルタイムで見ることができるのです!」
テレビのショッピングサイトの宣伝者のように身振り手振りで興奮しながらハンスさんが話す。
「そしてもちろんこれは機器を持っている冒険者なら誰でも配信できるので、ダンジョン内の様子を配信しやすいですし、危険な状況に陥った時はこれでSOSも送れるのでダンジョン内での死亡率を下げることもできます!」
ハンスさんの熱弁に感化されたアーサーも目をキラキラさせている。ミホーク先生も画期的な機器に興味を持っているようだ。
「ついさっき、国から認可をもぎ取ってきたので明日にでも早速全世界にこれらの機器が無料で配られる予定です。」
やっぱりハンスさんはできる大人だ。仕事が早い。
「先んじてリンくんとアーサーくんにはこれらの機器を渡しておきますね。まだこれからどんどんアップデートをしていく予定ですので楽しみにしておいて下さいね。では言いたいことも言えたので私はそろそろ帰ります。」
そう言ってハンスさんは話すだけ話したあと帰って行った。ミホーク先生もその後すぐに帰ろうとしていたが引き止め、約束通り土魔法で車を作ってプレゼントした。(先生に頼んで先生の家までテレポートしてもらいそこで作った。)
車には運転席を日本スタイルで右側に設け、ハンドルとアクセル、ブレーキもつけた。車の詳細な構造は分からないが、見た目だけ車に近づけて魔力によってタイヤが回る仕組みを作った。アクセルを踏めば注入する魔力量が増え、ブレーキを踏めば魔力供給が途絶える仕組みだ。俺も細かいことは本当に分からないが、「魔法は想像力だ!」とよく瑠偉くんが言っていたので頑張って想像したらなんかできた。魔法ってすごい。
ということで諸々説明し先生にプレゼントすると諸手を挙げて喜んでくれた。家宝にするとまで言っていたがそこまで喜んで貰えるとこっちも嬉しい。
アーサーにもねだられたが、作っても置き場がないのでダンジョンに行った際に色んな車を作ることを約束し納得してもらった。
そんなこんなであっという間に1日が終わり、次の日も特筆することなく同じように実践演習を行って1日を終えた。
そして本日土曜日。俺とアーサーはハンスさんに頼まれ、動画配信のテストも兼ねて前とは別のC級ダンジョンに来ている。今回は仮面もあるしアーサーの実力もCランク以上だとお墨付きを貰ったので先生の同伴無しで2人だけできている。
早速一昨日ハンスさんに貰った機器を取り出して電源を入れる。撮影対象者として既に俺とアーサーを登録済みなので後は放ったらかしで大丈夫だ。
ふよふよ空中に浮いて俺たちを映しているはずの機器を見る。
「電源入れたけどちゃんと撮れてるかな?」
「この端末で確認して見よーぜ。えーっと、どこで見るんだったっけ...、あ、ここか!」
アーサーが不慣れながらも端末を操作し動画配信用のアプリを起動する。すると画面右上に配信中という文字が小さく浮かび、画面の中には俺たちを上から撮っている映像が映っていた。
左上には視聴者数を表す1の文字が。
まだ端末が届いていない地域も沢山あるし使い方も昨日全国放送でサラッと流しただけなのでまだまだ普及は先だろう。
ちなみに俺は今既にこの前の仮面をつけている。また前みたいに俺がポンコツになったらやばいのでこれからはダンジョンに入る際は常につけていることにしたのだ。そのため、アーサーからは俺が全くの別人に見えているらしい。でも特徴を説明しようとしても認識阻害のせいかこれだという特徴が浮かばないそうだ。
(効果は抜群みたいだな。)
「じゃあ中に入ろう。今日は動画配信が主な目的だしゆっくり行こうか。車出すしアーサー運転してみる?」
「え、いいのか!?するする!させてください!」
車を出すと言った瞬間アーサーのテンションが爆上がりした。ぴょんぴょん跳ねながら俺の周りを駆け回っている。本当にこういうところが犬みたいだ。耳としっぽか見える。
「ふふっ、いいよ。じゃあ今日は俺が魔法で倒すからアーサーは運転頑張って。事故らないでね。魔力は歌で供給するからアーサーは足元のペダルで調節してね。」
「やったぜ!任しとけ!」
そうして俺たちの初めての配信、C級ダンジョン、ドライブ配信が始まった。




