27話:C級ダンジョン攻略完了
「30階のボスについてなんだけど、私の予想ではまたウェアウルフが出てくる可能性が高いと思ってる。」
「えっ」
それを聞いてまた顔が青ざめる。
(あの気持ち悪い奴がまた出てくる…?)
さっきの虫と言いもう俺の精神はボロボロだ。なぜこんなにも、あのウェアウルフに俺がおびえているかというと前世に原因がある。
実は俺は前世でストーカーに危うく襲われかけたことがある。デビュー前の練習生だったときにダンスレッスンを終えて一人で帰る途中、宿舎まであと少しというところでストーカーに押し倒された。背後から覆いかぶさってきたそいつは地面に俺を押さえつけ、服をめくって体中をまさぐってきたのだ。その時はちょうど帰ってきた雷君が直ぐにストーカーを撃退してくれて大事にはならなかったが、その時のあいつの体中を視姦する目とウェアウルフの目つきが重なって見えてしまいどうしても体がすくんでしまう。
「10階層と20階層で同じ種類のボスが出た場合、最後の30階層でも同じ種類のやつが出てくる確率が高いんだ。」
「20階層では2体出てきましたけど次は何体くらい出てくるんですかね?」
「恐らくだけど3~5体は出てくるだろう。そのうち一体はBランク程度の強さを持ってるだろうね。」
「3体くらいだったら俺一人でも何とかなりそうだけど5体だったら厳しいかも……」
アーサーは魔法が使えない。剣のみで多数を同時に相手するのは厳しいだろう。ボスとなるとなおさらだ。
「……大丈夫。今回は俺も戦うよ。いつまでもこんなんじゃAランク冒険者なんて名乗れないしS級ダンジョン攻略なんて夢のまた夢だ。」
俺の言葉にアーサーと先生が心配そうな顔を向けてくる。
「リン、無理してないか?顔色が悪いぞ……?あ、そうだ、俺にいい考えがある!」
そう言ってアーサーはおもむろに自分の服を破き出した。先生は興味津々といった面持ちでその様子を眺めている。
「アーサー?」
「ウェアウルフは面食いなんだろ?だったらこれで顔を隠してしまえばリンを変な目で見たり襲おうとしたりすることも無くなるんじゃないか?」
アーサーは名案ですとでも言うように誇らしげに破った服をこちらに渡してくる。でも確かにアーサーの言うことも一理ある。俺はアーサーから布を受け取り顔に巻き付けた。
今俺たちは傍から見たら変人に見えるだろう。アーサーは誇らしげな顔で腹を丸出しにしているし、俺は無造作に顔に布を巻き付けたせいで顔だけミイラ男のようになっている。先生に至っては爆笑しすぎて地面に倒れ込み、体をビクビクさせている。はっきりいってカオスだ。でもこの状況のおかげで恐怖心は消え、逆に落ち着いてきた。
「ちょっと不本意ではあるけどお陰で戦えそうだ。ありがと、アーサー。」
「不本意ってなんだよ!でも役に立ったようで良かったよ。じゃあボスを倒しに行くとしますか!」
過呼吸気味の先生を引き起こして3人で最後の階層へ向かう。
30階層にいたのは先生の予想通りウェアウルフだった。5m級が1匹、4m級が2匹、3m級が2匹の計5匹だ。
ウェアウルフたちは部屋に現れた俺たちを順々に一瞥した。ウェアウルフたちと目が会った瞬間身体が強ばったが、今までと違いやらしい目で見られることはなかった。アーサーの作戦勝ちだ。
それどころか俺たちの中に好みの獲物が居ないと分かるとカーッと喉を鳴らしぺっと唾を吐き出した。そしてやれやれと言ったようにため息をつく始末。
(あの態度はあの態度で逆に腹立つな。)
「よし、さっさと倒そう。」
「ははっ。今度は大丈夫そうだな。でも念の為リンは後方から魔法での援護で頼む!」
「りょーかい。」
アーサーは俺を見て大丈夫なのを確認したあとすぐさまウェアウルフに向かっていった。最初は3m級から倒す算段のようだ。先生も今回は大丈夫だと判断したのか後方の壁にもたれてリラックスし見学の姿勢に入っている。
アーサーが3m級を相手にしている間に俺ももう1匹の3m級に炎魔法の爆発を仕掛ける。他の3匹には邪魔されないようとりあえず土魔法で壁を作り閉じ込めておく。流石にボスだけあって1発では倒せないので続けざまに風玉もぶつけて体の所々を抉りとっていく。いくつかは避けられたが魔力にはまだまだ余裕があるし、無くなったとしてもユニークスキルを使えばいいから出し惜しみはしない。弱りきって動けなくなったところで風刃を放ち首を刈り取る。
俺が倒し終えたと同時にアーサーも倒し終わったようで残りの3匹を倒すべく土魔法を解除する。3匹とも近くにいたアーサーに一斉に向かっていき、爪での攻撃を仕掛けたがアーサーはそれを空中に飛び上がって難なく避け頭上から聖剣を放ち4m級を一刀両断していた。
(すげ、ボスを一撃かよ。)
残りは2匹。アーサーの強さにたじろいだ2匹は後ずさり、目に入った俺に向かってきた。
「リン!」
アーサーが焦ったように俺を呼ぶ。まあ、さっきまでの俺の醜態を見ていたのだから慌てるのも無理はない。
「大丈夫。」
アーサーのおかげであんなに怖かったウェアウルフが今はただの雑魚モンスターにしか見えない。
俺は土魔法で2匹の足元から巨大なトゲを出現させ串刺しにしようと試みる。4m級の方はあっけなく何本ものトゲが腹を突き破り倒すことができたが、5m級の方は外皮が硬く、トゲの方が折れてしまった。
そのままそいつは俺を八つ裂きにしようと爪で無数の斬撃を飛ばしてくるが俺はそれを体を捻ったり風魔法の風刃を飛ばして相殺したりして避ける。
「リン、大丈夫か!?」
「うん、平気。それよりもあいつめちゃくちゃ硬いよ。アーサー斬れる?」
ウェアウルフの攻撃を避けている間に駆け寄ってきたアーサーが俺を庇うように俺の前方で構えた。
「うーん、やってみないとわかんないな。リン、援護頼む!」
そう言ってアーサーは今まで使っていた剣を腰に戻し、背中に背負っていた大剣に持ちかえて突撃していった。
今までは使い慣れた剣の方がやりやすいという理由で大剣はほとんど使ってなかったが今回は大剣の方が最適だと判断したようだ。
最後のボスである5m級のウェアウルフは外皮の硬さもさながらスピードもほかの魔物とは段違いに速いので攻撃を当てるのも一苦労だ。
アーサーが攻撃しやすいようにウェアウルフの足元付近に風魔法を生成して動きを緩めたあと土魔法で拘束する。それも一瞬で破壊されてしまったが、アーサーにはその一瞬で十分だ。
「おりゃぁぁぁ!」
アーサーはウェアウルフが動きを止めた瞬間を逃さず右足に一太刀浴びせる。そしてすぐさまウェアウルフの反撃を避け俺の元に戻ってきた。
「ダメだな。スキル無しだとかすり傷で精一杯だ。なんであいつだけあんなに硬いんだよ。」
「聖剣は使えないのか?」
「さっき使っちまったからあと3分は使えない。レベルが上がって威力が増したのはいいんだけどクールタイムができたから。」
「他のスキルはないのか?」
「あるけど今回の戦いには向いてないんだ。聖壁は防御系スキルだし、聖光はレベル的にアイツに通用しないから。」
実はこれ、話しながらウェアウルフの猛攻を避けている。余裕っぽく見えるかもしれないが結構ギリギリだ。だんだん体に生傷が増えてきた。
「うーん、じゃあどうしようか。歌ったところで俺の魔法もアイツにはほとんど効かないだろうし……」
何か手はないかと考えを巡らせているとE級ダンジョンの時のことを思い出した。
「あっ!」
「どうした?なにか思いついたのか!?」
「ああ、いい方法がある!」
これはE級ダンジョンの時に思いついた方法だ。でもあの時は相手がスライムだったから通用しなかったが、こいつなら確実に効くはずだ。
俺は大きく息を吸い込んでユニークスキル"Water"を発動した。素早く動き回るアイツに的確に魔法を当てるには魔法を自分の体のように扱う精度が必要だ。俺はまだユニークスキル無しでは魔法を細やかに操作することはできない。そのため歌で精度をカバーする。
アーサーも俺の意図を汲んでできるだけアイツの動きを止めようと立ち回ってくれている。
ウェアウルフが爪で攻撃をしかけ、アーサーがそれを剣で受け止め、動きが止まったその隙に俺はウェアウルフの口元に水魔法で水玉を生成し、やつの呼吸を奪った。
ウェアウルフは急に現れた水に驚いて足を止め、必死に口元に手をやり水をどかそうともがくが、水が掴める訳もなくゴボゴボと空気だけが口から漏れ出ている。
「おお!すっげ!こんな方法もあるんだな!」
アーサーはもがき苦しむウェアウルフを見ながら感心したような声をあげている。ミホーク先生なら風魔法でウェアウルフの口元まわりの酸素を奪って窒息死させることもできたんだろうが、俺はまだそこまでできない。多分できたとしても近くにいるアーサーの空気まで奪ってしまうだろう。早くミホーク先生から指導を受けたいものだ。
1分ほどでウェアウルフは力尽き、光となって消えていった。
「よーし!これでC級ダンジョン攻略完了だな!」
「2人ともお疲れ様。本当に2日間で攻略しちゃったね。前代未聞の快挙だよ。このダンジョンの攻略を進めていた冒険者たちもびっくりするだろうね。」
俺は2人の会話を聞きながら顔に巻いていた布を取ろうとする...が、適当に巻きすぎてなかなか取れない。その様子を見た先生が笑いながら近くに寄ってきて取ってくれた。
やっとミイラ男から解放されてホッと息をついていると部屋の中央が光出した。
宝箱出現の合図だ。
「今度は何色だ!?」
今回は少し苦労した分アーサーも宝箱の出現に興奮しているようだ。どこかゲームのガチャを回す時の瑠偉くんを思わせる。
そして光が収まった時出てきたのは金箱だった。
「また金箱が出るとは...!」
これには先生も驚きを隠せないようだ。滅多に出ない金箱が二日連続で出たのだから無理もない。
早速3人で一緒に宝箱を開けると中から出てきたのは仮面舞踏会で付けるようなデザイン性のある面だった。
「なんだこれ? 」
「これは私も初めて見るね。仮面のようだけどどんな効果があるんだろう...?」
「付けてみましょうか?」
「いや、やめておいた方がいい。中には呪いがかかったものもあるからね。帰ってからこれもハンスさんに調べてもらおう。」
ということで面も一旦収納袋にしまって俺たちは学園に戻ることにした。ダンジョンが消えてから歩いて学園に戻っても良かったがもう外では夜になっており、明日も学園があるということでミホーク先生の好意で転移アイテムを使わせてもらった。
寮の前に着くと、昨日と今日で稼いだ魔石についてはこれからミホーク先生がエリック先生と飲みに行くついでに換金してきてくれると言うので言葉に甘えた。ゲットしたアイテムは明日学園が終わった時にアーサーと一緒にハンスさんのところに持っていこうと思う。
とりあえず今日は疲れた(主に精神的に)のでもうどこにも行きたくない。
アーサーと俺は寮に戻ったあと直ぐに風呂に入り、空腹よりも眠気が勝ったため一緒にベッドに倒れ込みすぐに意識を落とした。
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名前:アーサー Lv36 249500/7000000
年齢:10歳
種族:人間
職業:聖騎士
[能力値]
体力 :219
魔力 :80
知力 :75
攻撃力:148
耐久力:146
敏捷 :120
運 :40
[スキル]
聖剣Lv4
聖壁Lv1
聖光Lv1
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名前:天神 琳 [リン] Lv39 9909500/10000000
年齢:10歳
種族:人間
職業:アイドル
[能力値]
体力 :405
魔力 :495
知力 :325
攻撃力:340
耐久力:320
敏捷 :355
運 :150
魅了 :215
[スキル]
炎魔法Lv5 228465/1000000
水魔法Lv4 22910/500000
風魔法Lv4 18870/500000
土魔法Lv3 41500/200000
[ユニークスキル]
Fire メインボーカル
Water メインダンサー
Wind コンサート
Earth
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