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異世界でもアイドルデビュー!?~アイドルの経験を活かして無双します~  作者: Nanairo


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26話:C級ダンジョン 苦手なもの

14階層へ降りてきた。最近ずっと"Wind"ばかり歌っていて飽きてきたので今日は”Earth”を試しに歌ってみることにする。


「今日はちょっとやり方を変えますね。今から俺が乗り物を出すので2人はそこに乗ってください。それに乗って攻略を進めてみます。」


そう言って俺はまず土魔法で車のような乗り物を創造した。天井部分は空いており、車の前方はドリルのようなものをくっつけてある。


「さあ、これに乗ってください。アーサーは俺と一緒に前へ、先生は後ろでくつろいでいてくださいね。」


俺の指示通りに二人とも車に乗り込んだのを確認すると俺も車に乗り”Earth”を歌い始めた。土魔法の応用でドリル部分とタイヤ部分を回転させ、車はあっという間に時速200㎞までスピードを上げた。これ以上はさすがに風魔法がないと目を開けていられないので土魔法ではこのスピードが限界だ。でもこの速さでも1階層当たり1時間もかからないので十分だ。


「ひゃっほーう!!なんだこれ、めちゃくちゃ楽しいじゃん!これからずっとこれで行こうぜ!」


アーサーは風魔法のときは最初はあんなに怖がっていたのにこれは怖がるどころかとても楽しそうだ。何が違うのか俺には分からない。先生も心なしか目をキラキラさせている。気に入ってくれたようだ。この階層は飛ぶような魔物は出なかったため、ほぼほぼ車のドリルで魔物をミンチにでき、俺たちは車で殺し切れなかった魔物をちまちま殺していくだけだった。


それ以降の階も特に苦戦することなく魔物を討伐し続け、昼前には20階層に続く階段前にたどり着くことができた。


「あっという間だったね。もう20階にたどり着くなんてさすがだよ。このダンジョンの最高攻略階数はまだ18階だから次の階層のボス情報がないんだよね。君たちなら大丈夫だとは思うけど気を引き締めてね。」


知らぬ間にこのダンジョンを攻略しているパーティーの攻略階数を追い抜いていたらしい。今18階を攻略しているパーティーは2年も前からこのダンジョンの攻略に当たっているようだ。それをたった2日で追い抜くなんてそのパーティーが知ったら泣くね。とミホーク先生があきれたような顔で言っている。確かにちょっとずるしているような感じがして気が引けるがこんなのは気にしたら負けだ。


(ここまで来たら今日中にこのダンジョンをクリアしたいな。)


「じゃあいったん俺が前衛、リンが後衛っていう形でいいか?どんなボスか分からないし細かい作戦は下に降りてから決めようぜ。何だったらまたリンは休んで俺一人で倒してもいいし。」


19階まででアーサーはさらにレベルが2回上がり、さらに動きに切れが増していた。そこらの大人顔負けの戦闘力を持っている。どんなボスかにもよるが、アーサー独りに任しても恐らく問題はないだろう。でも10階層のときは全部アーサーに任せてしまったから今回はちゃんと戦闘に参加しないと。


「とりあえずアーサーの言う通り前衛と後衛でいこう。アーサーに任せっきりも悪いし今回はちゃんと戦うよ。」


なんてことを言ったのに、いざ20階に降りてみるとそこで待ち構えていたのはまたウェアウルフだった。しかも今度は2体。大きさも10階層に比べ一回り大きくなっている。


今回も2体ともが俺を見た瞬間、鼻息を荒げてあの気持ち悪い目で全身をなめ回すように見てくる。しまいにはじゅるりと舌なめずりまでし、手は何かをもむような動きをさせながらジリジリと近づいてきている。


「ひぃっ!」


「あちゃー、20階層もウェアウルフだったか。しかもまたリン君を見てるね。今にも別の意味で襲いかかってきそうだ。」


「ちょっと、先生あんまりリンをいじめないで下さいよ。震えているじゃないですか。」


先生の言葉に貞操の危機を感じてさらにガタガタ震えているとアーサーが10階層の時と同じように自分の身体でウェアウルフからの視線をさえぎってくれた。


「ごめんごめん、そんなつもりはなかったんだけどね。さて、どうする?今回は私も戦おうか?」


「大丈夫ですよ。それに昨日リンと約束したので。この剣でリンを守ります!」


そう言って昨日金箱から出てきた大剣を抜き、俺を振り返ってニッと笑って見せた。確かに昨日アーサーに剣を譲る口実にそんなことを言ったが、改めて言われるとめちゃくちゃ恥ずかしい。姫にでもなった気分だ。


「じゃあちゃっちゃと倒してくるから少しだけ待っててくれ。すぐ戻る。」


(おい、さらっと頭をなでるな。ほほ笑むな。心臓が誤作動を起こしてきゅんとするだろ!)


アーサーは若干涙目になって震えている俺を安心させるように軽く頭を撫でた後、ウェアウルフの方に向かって行った。


「リン君、いろんな意味で大丈夫かい?でも震えは止まったみたいでよかったね。顔色も…うん、まあ青よりはいいだろう。アーサー君の人たらしにも困ったもんだね。」


ミホーク先生が俺の真っ赤になった顔をみながらクスクス笑っている。でもミホーク先生もさりげなくウェアウルフから俺をかばってくれているので文句も言えない。


ミホーク先生の身体の陰からちらっとアーサーを見てみると2体同時にも関わらず、軽い身のこなしでウェアウルフからの鋭い爪や牙での攻撃をかわし次々に傷をつけていっている。1体からの攻撃をもう1体の股の間を潜り抜けて回避し、代わりに攻撃を受けてもらいながら背後からも一太刀浴びせるなど敵の攻撃もうまく利用している。


そして片方の敵に隙ができたところでアーサーが大きく跳びあがり大剣を振るって1体目の首を切り落とした。アーサーが今まで使っていた剣とは異なり刃渡り自体も大きいため、立った一振りで首を落とすことができていた。もう1体の方もアーサーは何かをつぶやいた後ウェアウルフの目を攻撃して視力を奪い、その後すぐにウェアウルフの頭上から剣を振り下ろし一刀両断していた。


「悪い、リン。待たせたな。ってどうした?なんか顔赤くない?」


「なんでもない。10階層に続き20階層も一人で戦わせてごめん。助かったよ。ありがとう。」


覗き込んでくるアーサーの視線から逃れるため顔をそらしてお礼を言っていると、口元をニヨニヨとさせているミホーク先生と目が合った。


「っ、それより宝箱を確認しに行こう!」


二人の種類の異なる視線に耐え切れなくなり、話題を無理やり変えて部屋の中央に向かった。部屋の中央はすでに光始めており、すぐに宝箱が出現した。


「おお、今日は銀箱か。」


昨日金箱が出たので感動は薄いが、銀箱も通常はそんなに出るものでもないのでミホーク先生は驚いているようだった。


今回もアーサー1人で倒したのでアーサーに宝箱を開けてもらう。すると中から出てきたのは中身が空の魔法瓶だった。


「なんだこれ?」


ただの水筒にしか見えないアイテムにアーサーと二人首をかしげていると後ろから覗き込んでいたミホーク先生が説明してくれた。


「それは多分マジックポーションだね。どんな液体でもその中に入れると望んだポーションに変わるんだ。魔力ポーションとか回復ポーションとかっていう風にね。結構有用だからそれは売らずに持っておいた方がいいよ。」


という事でこれは収納袋に入れておくことにする。いちいちポーションを買いに行く手間が省けそうだし、今のところアーサーも俺も回復魔法は使えないので怪我したときに役立ちそうだ。


ちょうどいい時間なので20階層でまたミホーク先生特製の昼食をごちそうになった後21階層の攻略を始めた。ミホーク先生とアーサーに風魔法と土魔法どっちがいいか聞くと二人とも土魔法がいいとのことだったのでまた車を生成し攻略を進めた。


25階層と26階層は鳥系や蝙蝠系の魔物が多かったので”Wind”を使って時速300㎞で攻略した。途中天井にびっしりと蝙蝠系の魔物が止まっていてあまりにも気持ち悪かったので炎魔法の爆発(エクスプロード)をで一気に蹴散らした。でも勢いで使ってしまって威力を調節し忘れたため、天井が崩れそうになったのは反省点だ。もちろん土魔法ですぐに補強したので問題はなかったが次からは気を付けようと思う。


そんなこんなで27階層と28階層も難なく攻略し、29階層に降りてきた。


「この階層が終わったら次はボス部屋だね。さて、この階層はどんな魔物が出てくるのか…」


そんなことを話しつつ、土魔法の準備をしているとどこからともなくカサカサという音が聞こえてきた。


カサカサ、カサカサ、カサカサカサカサカサカサカサッ


その音に背筋がぞわっとして恐る恐る振り返ると口に出すのもおぞましい害虫たちがどんどんこちらに向かってきていた。


「ひやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


「リ、リン?」


「えっと、リン君、大丈夫かい?」


土魔法を使って一瞬で俺たち3人をドーム状の土壁で囲み、外と遮断する。耳を両手でふさいで小さく丸まっている俺を二人が心配そうに見てくる。


「もしかして、リン君、虫が苦手なの?」


苦手なんてものじゃない。前世から虫と名の付くものはてんでダメで、アリや蚊でさえも視界に入れたくないし、あの名前も出したくない黒光りする人類の敵が現れた時なんかは声も出ず失神しかけたくらいだ。そばにいた零くんが対処してくれたときは一生ついて行くと誓ったほどだ。それが1匹どころかさっきちらっと見ただけでも恐ろしい数の虫がいた。しかもでかい。なんなんだあのでかさは。触覚がめちゃくちゃ長くて足もたくさん生えてて………おえっ


記憶したくないものほど鮮明に記憶に残るし、思い出したくないのにさっきの光景が頭から離れない。


「リン、苦手ならこの階もまた俺が倒してやるから、このドーム解いてくれない?でないと倒せるものも倒せないよ?」


「だ、だって、これ解いた瞬間虫が迫ってくるし、もしかしたら上から降ってくるかも…このドームの周りにびっしり虫が張り付いていたらどうしよう……。俺、死んじゃう……」


俺のあまりの悲壮感にミホーク先生までもおろおろしている。


「うーん、困ったね。こんなにもリン君が虫が苦手だとは。しょうがない。この階だけ私も手伝うよ。とにかくドームを解除しないことには何もできないから…あ、そうだ。リン君、自分の周りにもう一個小さいドームを作れる?その後このドームを解除してくれたら周囲の魔物を私とアーサー君で片づけるよ。できるかい?」


ミホーク先生の提案に申し訳なさを感じながらも、うなずいて任せることにする。


「じゃあアーサー君、リン君のためにも早く片付けちゃおっか。」


「はい!」


二人の頼もしい声を聴きながら俺は自分の周りに小さいドームを生成し、最初に作ったドームを解除した。外からは二人の戦う音や声が聞こえてくる。


「アーサー君、そっちでかいの行ったよ。気を付けて!」


「分かってます!先生も上に蜘蛛の魔物いるんで気を付けてください!」


そんな声を聴きながら5分後。


「よし、こいつで最後だっ!」


ザンッという音がして以降、魔物の這う音が聞こえなくなった。


「リン、聞こえるか。周囲の魔物は全部倒したから出て来いよ。もう大丈夫だぜ。」


アーサーが壁をノックして虫がいなくなったことを伝えてくる。恐る恐る土魔法を解除して周りを見てみたが今のところ周囲に虫はいないようだった。でもずっとさっきの虫の光景が頭から離れず、いつまた虫が出てくるかと不安に思いながらアーサーの左腕にぴったりとくっついているとミホーク先生から声がかかった。


「この階はおそらくずっと虫の魔物が出てくるから今までみたいにリン君が戦うのは難しいだろう。でもそうするとこの階を攻略するのに3~5日はかかる計算になる。となると、多分リン君の精神が持たないからちょっと考えてみたんだけど、リン君、今まで作ってた車、私が操縦できるようにすることは可能かい?」


今まで作っていた車は運転席などはなく、全部歌で操作していた。でもそれを前世の車みたいに運転席を作ってハンドルで操作できるように作り替えたらミホーク先生が車を運転することは可能だ。


「はい、できます。」


そう言って俺は運転席有の車を創造した。


「おお!さっきと少し変わったね。これどうやって操作するんだい?」


「えっと、このハンドルで方向を操作して足元のペダルでスピードを調節します。ハンドルは右に回せば右に、左に回せば左に車が曲がります。足元のペダルは右側を踏めばスピードが上がって左側を踏めば減速します。燃料は魔力なのでそれは俺が歌って補充します。」


「おっけー。何となくわかった。こういうのちょっとテンション上がるね。じゃあこの階は私とアーサー君に任せて、リン君は歌だけお願いできる?目をつむっててもいいからさ。」


「そうそう、ここは俺たちに任せとけ!リンには虫が近づかないように俺が全部倒してやる!だから安心しろ!」


アーサーがまた頭をなでてくる。なんか少し零くんに似ていて少し落ち着いてきた。


「うん。お願いします。」


そうして俺は屋根がついた後部座席に乗り込み、先生は運転席、アーサーは助手席に乗り込んだ。主にアーサーが剣で魔物を倒し、先生が運転しながら魔法で援護する作戦だ。俺はマジでこの階は使い物にならないので後部座席でひたすら”Earth”を歌って車を動かす役だ。本当に申し訳ない。


「よし、じゃあ行くよ。リン君。歌をお願い。」


歌い始めると先生は一気にアクセルを踏み込みスピードを上げた。体感的に250㎞は出てそうだ。ダンジョン内は一本道といえど結構曲がりくねっていてハンドル操作が難しいのに先生は初めてとは思えないドライブテクだった。虫なんて一切視界に入れたくなかったし、入れたら失神する気しかしていなかったが、目をつむるのも気が引けて何とか薄目で状況を見ていたが、先生は10分ほどで完全に運転に慣れ、その後は片手で運転しながら近くの魔物を剣で切り倒していた。アーサーもなんともともと使っていた剣と10階層で手に入れた大剣を両方使って双剣で次々と魔物を斬り裂いていた。


「アーサー君やるねえ。長さも重さも違う剣を自分の手足のように使いこなすとは。Cランク冒険者の評価は改める必要がありそうだ。」


「ありがとうございます。でも先生も運転しながら剣と魔法両方使いこなすとか何なんですか!てか、運転めちゃくちゃ楽しそーで俺もやりたいんですけど!」


「うん、これはやばいね。すごく面白いよ。癖になりそう。ねえ、リン君。このダンジョンの攻略が終わったら同じような車を作ってほしいんだけど、いいかな?」


「あ、先生だけずるい!リン、俺にも作ってほしい!そして運転させてほしい!」


二人が談笑しながらこちらを振り返って車をねだってきたので了承の意味でうなずいておく。ていうか二人ともノールックで正確に魔物を切ってるの何なの?できるだけ魔物を見ないように視線をアーサーや先生に固定して見ていたが、二人とも洗練された動きで無駄が一切なかった。剣術だけで言ったらアーサーの動きは先生にほとんど劣っていないように見えた。それを二人は談笑しながら行っているのだから余裕がうかがえる。


たまに俺が特に苦手な足がものすごく多い奴や糸をまき散らす奴、人類の敵などが出てきたときは悲鳴交じりで歌の音程を外してしまって二人に笑われたし、そのたびに二人から俺を慰めるような励ますような言葉がかかっていたたまれなかった。


そんな永遠にも感じられる時間がやっと終わり、ついに30階に続く階段の前にたどり着いた。時間的には40分ほどだったが、体感的にはその何倍にも感じられた。この階では俺は歌っていただけなのに恐怖からずっと体に力が入っていたせいで今までで一番の疲労感だった。この前のシャトルランよりも疲れていた。


俺は車から降りてすぐ、虫が近づいてこないように今まで通ってきた道を遮断するように壁を作りその場に座り込んだ。


「いやあ~楽しかった。実はちょっと退屈してたからいい気晴らしになったよ。リン君は大丈夫かい?もう後は30階のボスだけだし少し休憩しようか。」


ミホーク先生がグーっと伸びをしながら近くに寄ってきた。そしてポンポンと俺の頭をなでながら横に腰を下ろす。アーサーも座り込んだ俺を心配しながらミホーク先生と反対側の俺の隣に座った。


「先生もアーサーもありがとうございました。役立たずですみません。虫は本当にダメで……。ダンジョンから出たら約束通り車をプレゼントします。」


「楽しかったから気にしなくていいよ。でも車はありがたく貰うね。」


「そうそう、それに俺たち友達だから助け合うのは当然だろ?これからもリンが戦えない時は俺が守ってやるから遠慮なく頼ってくれ!」


アーサーはこういうことを恥ずかしげもなく言うから本当に困る。アーサーの笑顔がまぶしい。


「ありがと。」


恥ずかしくてうつむきながらお礼を言うと先生から視線を感じた。どうせまた口元をニヤつかせながらこっちを見ているんだろう。


先生の視線はそのまま無視し、俺たちは最後のボスについて話し合いを進めた。

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