10話:クラス分けテスト③の2
風魔法のレベル1は風の玉。これも10個ぶつけると結果は”60”だった。これは最初獲得したときはそよ風くらいの威力しかなかったからだいぶ進歩した方だと思う。
続いてレベル2は風刃。こいつはかまいたちのように相手に切り傷を与える。最近は切れ味もよくなってきていてダンジョン攻略中によく使用している。これも5つ同時に放ち、結果は”115”。レベル2にしては威力が高い方だ。
レベル3は風玉。これはレベル2の風刃を手のひら大くらいに圧縮したものをまとめてボール状にしたようなものだ。例えるならミキサーが一番近いかもしれない。これも殺傷力が高いんだが、当たるとちょっとグロイのであまり積極的には使っていない。それにまだE級ダンジョンしか行っておらず、これを使うほどの魔物がいないからな。
まあでも今回は全力でと言われているし当てるのは壁なので気にせずぶちかます。5個当てて結果は”190”。他と比べると攻撃力がとびぬけている。これから先のダンジョン攻略で役立ちそうだ。
風魔法最後はレベル4の風壁。こいつは広く展開すると防御になるし、展開範囲を狭めると竜巻みたいになり攻撃にもなる。今回は展開範囲を最大限狭めて風を圧縮し竜巻のようにして壁にぶつける。もちろんこれも竜巻の中には無数の風刃が圧縮されているので攻撃力は半端ない。おそらくこの風の中に入ったらE級ダンジョンの魔物では一瞬でミンチになることだろう。結果は驚異の”250”。レベル5の炎魔法を軽く超える威力だ。
でもまだ壁自体は無傷だ。傷一つ入ってない。
(一体どれだけの攻撃力ならあの壁を破壊できるんだ?)
疑問に思いながらも続けて土魔法に移る。
土魔法のレベル1は土の玉。地面の土をこぶし大の大きさにしたものだ。硬度は普通の石と同じくらいだ。10個生成し壁にぶつけると”60”と出た。まあこんなものだろう。
次はレベル2の武器生成(石)だ。これは任意の武器を生成することができる。強度は石と同じかそれよりもちょっと硬いくらいだ。今回は特大ハンマーを1本生成し風魔法でブーストをかけてハンマーを投げ飛ばし壁に叩き込む。結果は”110”。俺の身長と同じくらいのハンマーを生成したため1本しか作れなかったが威力はそこそこあったようだ。作ったものは分解できないためそのまま放置だ。
最後はレベル3の武器生成(鉄)だ。同様に今度は鉄製のハンマーを生成し、さっきと同じように壁にぶつけてみた。結果は”135”。武器の固さによってもやはり攻撃力は変わるようだ。
これで現段階で獲得している一通りの魔法はすべて出した。次はユニークスキルか。
「先生、今僕がもっているスキルはこれで以上です。ユニークスキルについてはどうしたらいいですか。」
俺のユニークスキルは単発攻撃ではなく持続型と威力上昇型の特性を持っているためこの威力を測定する試験では不向きなように思う。その旨を教員に伝えたところ、教員もどうしたらいいか分から中たのか後方の人込みの中に目を向けた。俺もつられて後ろを見るといつの間にか学園長と鑑定の儀にいた管理職の方も来ていた。
「確かに単発攻撃の威力を測るこの試験ではリン君のユニークスキルの真価を捉えることは難しいでしょう。ですが、リン君がもっているユニークスキルは今まで記録に残っている他のユニークスキルとはタイプが全く異なり、極めて稀なものです。だからこそ、今後のためにも魔石カメラで記録を取らせてほしいんです。もしかしたらリン君が気づいていなような特性やもっと有用な使い方があるかもしれません。」
どうやら今まで威力が持続するようなユニークスキルは発現したことがなかったらしく、また複数所持しているのも記録上俺を含めてたった数人しかいなかったようだ。その数人というのもすべて職業は”勇者”で最大所持数は3つだったらしい。という事で勇者でもなくユニークスキルを6つも持っている俺は前代未聞なんだそうだ。
鑑定の儀においてこのことが国の上層部で話題となり、S級ダンジョン攻略のカギとなるのではないかという話になったと管理職の方が教えてくれた。
(ずいぶん大事にされているな…)
そのため、俺のユニークスキルを余すことなく分析・研究するためにその映像をとりたいそうだ。
「今まで記録に残っているユニークスキルはそれぞれ基本の型のようなものがあったんですが、リン君のにはそういう基本の型、動きはありますか?」
「基本の型ですか?」
「ええ、例えば”勇者”の方がもっていた”天の裁き”というユニークスキルは剣を上段から振り下ろすことで最大の威力が発揮されていました。」
管理職の方が言うには攻撃型のユニークスキルにはどれも基本の型や動きがあり、その動きをすることで最大威力で発動することができるらしい。逆にその動き以外では発動はできるが威力が落ちるんだそうだ。
(基本の型か。そんなものがあるなんて知らなかったな。普通にいつも戦いながら使ってたし…。俺のユニークスキルの基本の型って言ったらやっぱり前世のダンスのことかな。1度3歳の時に母さんと父さんの前で踊ったことはあるけどあれもアレンジしたからなあ。)
管理職の方に言われて初めて、俺はこの世界に来てから一度もオリジナルの動きでユニークスキルを使っていないことに気づいた。そして何となくだが、俺のユニークスキルの基本の型となるのは前世のセンターポジションでのダンスを繋ぎ合わせたものになるんじゃないかと思った。
(やってみる価値はありそうだな。)
「やったことがないので合ってるか分かりませんが、思いつくものはあります。なのでそれで試してみてもいいですか。」
俺の答えに管理職の方は目を輝かせてもちろんですと答えた。とりあえず基本の型で動いてくれさえすれば他の魔法の発動やタイミングはすべて任せるとのことだたので、好きにやってみようと思う。
今俺の周囲には俺のユニークスキルを余すことなく記録するため10個ほどの魔石カメラが浮いている。ドローンのようなもので自動で俺を追尾、撮影するらしい。超高画質で1個当たり前世の値段で言うと100万を超えるそうだ。
(間違っても壊さないようにしないと…)
学園長や管理職の方、他の教師陣たちから肉眼でも見たいと要望があったため、今俺は壁に背を向けてみんなの方を向いている。管理職の方と話している間に教師剣を受けていた子ども達もほぼ全員入ってきたのか、ざっと3000人はいそうだ。
(しかし、こんなに観客がいてカメラで撮影もされるなんて本当にアイドルに戻ったみたいだ。これでここにみんながいてくれたら完璧なのに…)
ちょっと感傷に浸っているとこの人数にも関わらず最前列のど真ん中を陣取っているアーサーと目が合い、ニッと笑って思いっきり親指を立てられた。
(あれは頑張れって事かな。ちょっと元気出た。…よし、やるか。)
この中の大半はただの興味本位で見に来た子たちだろう。中には俺のことをよく思っていない、敵意を持った視線も感じる。
(どうせやるなら楽しく全力でやろう。ここにいる人たちを俺のファンにするつもりでパフォーマンスしてやる。)
ここには音源も舞台設備もない。完全なアカペラだ。アカペラでのパフォーマンスは確かな歌唱力と人を引き付けるセンスがないとすぐに飽きられてしまう。でも俺は前世ではメインボーカルとして高い歌唱力を売りにしてたし、グループ内でも実は一番人気が高かった。ずっとトップアイドルとして誇りをもって活動していたため俺自身の見せ方も熟知している。
心を落ち着かせながら足でリズムを取り、深く息を吸い込む。やっぱりはじめは”Fire”からだ。
ーさあ、始めようか
準備はいいかい?
目をそらさないで
よく見ていて
これはまだ序章に過ぎない
雷くんの低音パートでは、5歩ほど前に歩きながら右手を前に差し出しみんなに語り掛けるように歌った。歩きながらも周囲にはどんどん炎の玉を浮かべていく。3歳の時にしたように俺は右手を前に伸ばすと同時に手のひらの上に炎を出した。そして”これはまだ序章に過ぎない”という部分を歌いながら手のひらの炎を握りこんで圧縮し爆発させ、周囲に浮かせた炎の玉も一気に爆発させる。
子ども達の方からは驚く声や歓声が上がった。アーサーも目を輝かせて喜んでいるようだ。
ー君の瞳、君の唇、君の指先
頭からつま先まで君のすべては俺たちのもの
よそ見をする暇なんて与えない
邪魔するものは消してしまおう
俺たちの炎はすべてを飲み込む
ここからは一気にテンポを上げていく。煉くんがよくしていたように適当に最前列にいる女の子たちと目を合わせながら唇を親指でなぞって舌をのぞかせたり、右手の指の間からウインクしたりすると女の子たちから黄色い声が上がった。
(うん、いい感じだ。久しぶりに踊るからちょっと心配だったけどちゃんと踊れてるみたいでよかった。)
歌いながら、背後の壁の前にどんどん炎玉を浮かべていき、”俺たちの炎はすべてを飲み込む”という歌詞のところで炎玉を一気に炎壁に変化させ、横幅50mある後ろの壁全体を炎壁で覆った。
これには教師陣からも歓声が上がり、学園長に至っては目をむいている。ちょっと顔が面白い。
(何だろう。いつもよりだいぶ炎が扱いやすい。すべて自分の手足になったみたいだ。)
やはり、これが俺のユニークスキルの”基本の型”であっていたらしい。管理職の方が言っていたように最大威力を発揮しているかは分からないが、格段に炎が扱いやすくなっていて細かい動きも難なくこなせそうだ。
(いいことを思いついた。)
ーFire 燃え盛れ
一度ついたら消せやしない
余計なものは全部燃やして
ここからはずっと俺たちのターン
ーFire もう手遅れ
俺たちの炎は防げやしない
一人たりとて逃しはしない
さあ次の標的は誰だ
俺と陸くんのパートでサビの部分。ここは7人そろっての激しいダンスが魅力。だから7人で踊ってみた。そう、炎でメンバーを作り出したのだ。今までサビの部分だからと言ってこんなことはできなかった。できてもせいぜい一人分が限界だったのに6人分を難なく動かせている。
7人揃いのダンスを踊りながら、コンサートのときのように前面を爆発させながら盛り上げる。さらにハイトーンボイスを炸裂させながら空中に無数の炎玉を浮かべ、観客の周りも四方を炎壁で囲む。最後の”さあ次の標的は誰だ”のところでアーサーを指さしニヤッと笑うとアーサーがびくついていた。他の女の子たちからはまた黄色い歓声が上がり、男の子たちも声を上げて楽しんでいるようだった。
サビが終わった後もずっと6人分の人型の炎を自在に動かせたので7人でのパフォーマンスをすることができた。時折炎玉を花火のように爆発させたり、鳥の形にした炎をいくつか観客の真上に飛ばしたりしながらパフォーマンスを行った。そして最後のサビが終わるころにはここにいる人数分の炎玉を小鳥の形に変化させ、一人一人の肩や頭の上、手のひらに止まらせて歌を終えた。何人かは小鳥の形をした炎が向かってきたことで慌てふためいていたが、燃えないことが分かるとホッとしていた。アーサーには特大の鳥を向かわせたので一番慌てていて面白かった。悪戯成功だ。
燃やす、燃やさないは俺の意思で選択できることがこの7年で分かっていたのでちょっとしたサプライズのつもりだった。歌を終えると同時に小鳥の形をした炎もフッと消えたので残念がっている子ども達もいたが、次の瞬間、張り裂けんばかりの大歓声と拍手の嵐が俺を襲った。それと同時にわっと驚いた声も上がる。みんなが俺の後ろを指さしているので振り返ると、壁に”187200"という数字が映し出されていた。
そしてあれだけ何しても無傷だった壁の表面がボロボロと崩れていた。
原因はおそらく序盤で出した炎壁だ。序盤で出してからずっと出現させたままでいたからずっと1回の攻撃として攻撃力が積み重なってカウントされていたのだろう。サビの部分はまた威力10倍になっていたらしい。
「そんなばかな。この学園ができてから誰も傷を入れることなどできなかったというのに。それになんだこのでたらめな数値は…」
学園長があっけに取られている。
「いやあ、ほんとに素晴らしい。まさかあれだけの数の炎を自在に操れるなんて、攻撃力もさながら驚きました。それに歌とダンスもとてもお上手で時間も忘れて見惚れてしまいました。同じようなユニークスキルがあと3種類あるんですよね。それも見せていただけますか。」
管理職の方は学園長と違ってずいぶん好意的だ。
俺自身も久しぶりのパフォーマンスが思ったよりも楽しかったので二つ返事で了承した。




