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「かといって解放するとは言ってないわ! そんな魔法を持っている人を放っておくわけないじゃない」


 痛い……耳がちぎれる……なんて馬鹿力だ。ガチで耳が引きちぎれる寸前だったぞ……まだ痛いもん。本当に引きちぎれてたりしないよな?


「どうすればいいんだよ」


「ちょっと撃ってみてよ。もう一回私の目で確認させて」


「なんでそんな面倒くさいことをしないとならんのだ」


「それはそんな凶悪な魔法を使う人をほいほい放っておける訳ないでしょ。あとは単純に私の興味ね」


 なんだよこいつ……いきなり現れたと思ったら勝手なことを言いまくりやがって。俺がこの少女に何かしたか? やられてることは単純に不良の恫喝だ。一方的に自分の都合を押し付けてるだけにすぎない。俺にメリットなんて一ミリもないだろ? ふん、耳をつままれようがそれがなんだ。もう俺は怒ったぞ。こいつの言うことなんて絶対に聞いてやるもんか。それは俺のプライドだ。男の意地なのだ。


「残念だがそれは無理な相談だ。お前の都合をどうして俺が聞く必要があるんだ? 俺にメリットがあるのか? 等価交換の法則って知ってるか? 何かを享受したければ、それ相応のものを差し出さないといけないんだ。お前が今やっていることは一方的な要求にすぎない。俺は全くお前と話したいと思わないんだからな。それともお前はそういう類の人間なのか?」


「ぐっ、妙に強気じゃない……確かに多少無理矢理なところがあったのは悪かったわ。じゃあいいわ。そこまで言うんならあなた側の要求も聞きましょう。私の方は何をすればいいの?」


「特にやってもらいたいことはないな。じゃあこれで話は終わりだ。じゃあな」


「ちょ、ちょっと待ってよぉ!」


 少女はまだ食らいついてこようとする。しつこいなぁ。俺の旅人風の服を掴んで移動を妨げてくる。だがその手にはそれまでの力みはなかった。


「気になるじゃない! 私がすごく気になるの! このまま放ってなんておけない! お願い、お願いだからその魔法をもう一回見せて! だってこんな魔法みたことないもん! 絶対に見なかったら後悔するもん!」


 そして子どものような駄々をこねだした。どんなだよ……いうて俺と同い年くらいだろ? 十五か十六歳そこそこのはずだ。

 俺は一周回って恥ずかしくなってきた。


「ああ! もう面倒くさいな! そんな言われてもだめなもんはだめなんです!」


「そんなぁ。ああそうだ、だったらあなたの活動をちょっとだけ手伝ってあげるわ! こう見えても私はSランク冒険者なんだから! 最強の剣姫とか言われてもてはやされてるんだからね! 将来有望というかもうすでに英雄の域に達してるとかいう噂もそれとなく聞いたことがあるくらいなんだから! そうよ! 私は最強なんだわ。そんな私の助力を得られるというだけでとんでもなく価値があることだし、何より活動をともにすることで嫌でもこの男の秘密を暴けるじゃない! お互いにウィンウィンってやつよね? 私ってひょっとして天才!?」


 俺の服を掴んだまま一人でぶつぶつとつぶやいていた。

 もしかしたらこの子はアホなのかもしれないと、今気付いた。


「ということで良いわよね! この私があなたを手伝ってあげるわ!」


「お断りします」


「なんで!?」


 なんでいけると思ったんだよ……もうアホなことが分かっちゃったし、より一層関わりたくないんだよ。俺は適当に魔法を倒すための旅をしないといけないんだ……でもとは言っても俺ってまだこの世界のことそんなに分かってないよな? そんなにどころか転生してきたばっかで全く分かっちゃいない。分かっていることはこの世界の人間はかなり頭がおかしいということと最強の魔法を使えるってくらいだ。はぁ、なんか見てきてるなぁ。頬を膨らませて見てきてるなぁ……かわいい……じゃなくてまぁあれか、一旦はこの世界の住人に世界を軽く案内してもらうってのも悪くないのかな。それが一旦安牌な気がするし、まぁそれがこの少女というのは若干遺憾ではあるけど……まぁ容姿だけは可愛いからその分で我慢してやるか……


「ぐすん、もういいわ! こうなったら決闘よ! 私と勝負しなさい! そうよ、私が攻撃を仕掛ければいやでも対応せざるをえなく――」


「何アホなこと言ってるんだよ。もう分かったよ。そこまで言うなら俺についてきてやってもいいぞ」


「……へ、いいの?」


「ああ、実は俺はずっと山奥にこもっててこの世の常識というのをあまり知らないからな。しばらく案内役に任命してやってもいい」


「山奥に……確かにそれなら今まで話を聞かなくったって不思議じゃないか……」


「だが俺にもいちおう目的はあるんでな。邪魔だったり余計なことをしないと誓うってのが条件だからな」


「目的!? 気になる、気になりすぎるわ! 分かった、それでいいわ! もちろん邪魔なんてしないわよ。私はできる子だから」


 少女は一気に嬉しそうになった。単純すぎない……?


「そうか、じゃあ早速最寄りの街まで案内を頼む……ええと、なんて言うんだっけ」


「ラブレリカよッ! さっき自己紹介したばっかじゃない、信じられないわ。まぁいいけど、で、そっちの名前は?」


「俺は坂井柚乃実だ」


「サカイユノミ……?」


「ああ、柚乃実でいいよ」


「そう、ユノミね! さすが浮世離れしたところにいただけあって不思議な響きの名前ね! 短い間だけどよろしくね! じっくり見極めさせてもらうわ!」

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