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爆発の余波で、炎が広がっている。
目の前にいた人たちは俺の魔法により跡形もなくなってしまった。
「や、やってしまった……これはもう完全にやらかしたという他ないよな。まさか異世界に来てそうそう人殺しをしてしまうことになるなんて……まぁいっか」
大丈夫、きっとこれは大丈夫だ。
だって正当防衛じゃない? 俺まじで悪くなくないか? 相手から仕掛けてきたんだろ、俺はただ自己防衛したまでだ。
「よーし、気を取り直して周囲を探ろう。もう何事もなかったかのようにすればきっと大丈夫なはずだ。ええっと、俺はとりあえずこの平原からどこかに移動しようと――」
「ちょっとあなた!」
「……え?」
としたところで声がかかった。
そちらの方を見てみると、剣先をこちらに向けている少女が立っていた。
いつの間に!? ていうか誰だこいつ、危ないだろう!
その人物は青髪のポニーテールの女の子だった。
歳は俺と同じくらいだろうか。
赤い髪留めが特徴的で、目鼻立ちがかなり整っている。というかものすごい整っていた。紛れもない美少女だ。おそらく俺が今まで目にしてきたどんな女の子よりも美少女だ。もろタイプだった。
俺はおもわずうっとりと見とれてしまいそうになった。
「ものすごいエネルギーの波動を感じたから来てみたんだけど、何よこれ。火魔法? こんな強烈な魔法今まで見たことない。もしかしてあなたがやったっていうの? 答えなさい!」
ただ誠に残念ながらその少女は攻撃的に俺に刃を向けてきた。
答えを間違えればそのまま斬られてしまいそうだった。うそん、ど、どうしたらいいんだ俺は……
「そ、そうだとしたら何だっていうんだよ! 俺はただ化け物に襲われたから反撃しただけだ! それの何が悪いってんだよ。そんなことよりそんなふうに人に武器を向けるってのはどうなのかと思うけどな! 俺は一般人だぞ!」
俺はあえて強気に出ることにした。
弱気になっていたら相手に漬け込まれかねない。
しかもそうやって冷静に考えてみれば、別に俺はこの少女に対して何もしてないはずだ。だったらこの少女に今されてることは完全に脅しの行為であり、それは断ずるべき行いのはずだ。
「化け物……? そんなのこんな草原の近くにいるかしら?」
まぁ化け物というか人間だったけれども、その凶暴性は間違いなく化け物級だったはずだ。嘘はついてないぞ。それともひょっとしたらさっきの人たちってこの子の知り合いだったりする……? だとしたらかなりまずい。
「いたから駆逐したんだ」
「まぁそこについてはいいわよ。とにかく問題はあなたよ! そんな力どこで手に入れたの? 明らかにおかしい危険人物よ。この世界の平和は私が守らないといけないの。一体何を企んでるの!? 全部吐きなさい!」
「だから何もしてないって! 君こそなんでこんなところにいるんだよ。一体何者なんだよ、名乗るのはまず自分からだろ!」
というかなんでこんな理不尽な目にあっているんだ。もういろいろめんどくさいし魔法で吹き飛ばしてしまうか? いやそれは流石にもったいないか? こんな美人を世の中から葬りさるというのは人類にとってかなり損失な気がする。
「私について知りたいのね、いいわ。私はラブレリカ。とある事情から冒険者をやってる者よ。私の預かる任務には魔物の討伐の他に街や人に害をなす存在の排除も含まれているわ。つまり、あなたが今その審議対象というわけよ。さ、あなたの身分を名乗りさない! これ以上ごまかすというなら」
少女の目にやばい光が灯った。
こ、こいつ、やる気だ!
「だ、だから俺は本当に一般人なんだって!」
とはいえほんとのことを言うしかない。訴えるしかなかった。
「どこから来たの?」
「それは言えない」
「普段は何をしているの?」
「うーん、ゲームとか家でだらだらしたり」
「排除するわ……」
「待って! やめてくれ! 本当に俺は悪いやつじゃないんだよ! 俺を見てみろよ! 俺の目を見てくれ!」
俺は最終手段に出た。
もうこうなれば気合で訴えかけるしかない。俺のありったけの思いをぶつけて、それで判断して貰うしかないんだ。
俺は少女と目を合わせた。
藍色の丸くきれいな瞳が俺をとぶつかる。うぅ、かわいい……じゃない照れる場合じゃない、のは分かってるけどだめだ、もうこれ以上目を合わせ続けたら、俺はもう完全に駄目になっちゃう……
「ふぅ、まぁいいわ」
だが寸前ののところで、まさかの少女が折れてくれた。
なんだ!? 勝ったのか? 俺はまさかの大勝利を収めたということだよな!? やった! やったぞ! 俺はとんでもない偉業を成し遂げたんだ! 要するにあれか? 相手の方が俺を見つめすぎて照れちゃったってことか? 俺は別にイケメンでもなんでもないけど、やっぱり内側からにじみでるオーラでいっちゃったんだろうな。まぁしょうがないな。俺の本質を見抜いてしまった女はこんなふうにイチコロなのさ。
「よく考えればこんな原っぱの真ん中でこんな目立つことして何になるのという話だし……それに一人で何ができるというわけでもないだろうし、何かできそうな顔とも思えないしね。怪しいのは確かだけど……。多少強引につめちゃったことは悪かったわ」
少女は誤ってきた。
なんだ、殊勝な態度じゃないか、嫌いじゃないぞ。
「そうだろう、じゃあ俺はこれで失礼するな!」
振り返って逃げようとしたら耳をつままれた。
い、いつの間に!? いたいいたい……!