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「うわああああああ!!」


 俺は頭を抱えうずくまった。

 何だ、俺はなんなんだよ。どうして俺は異世界になんかきてのうのうと暮らそうとしてるんだ。

 それが俺の人生なのか? 俺はなんのためにこの世に生まれて、生をなしているんだ……わからない、わからないよ……


「ちょっと、大丈夫?」


「……」


 俺は完全に取り乱していたが、一つ落ち着いて深呼吸を入れた。

 いや、そうだ。今こんなところで悩んだって何も意味はないじゃないか。

 俺はそもそも地球で死んだんだ。

 それを神様に拾って貰って、魔王を倒すように頼まれた。

 そう、何もおかしいことはないんだ。

 俺はいわば義理を通さないといけない。

 俺の生まれてきた理由なんて、ひょっとしたらそれだけなのかもしれなかった。


「今はもうそういうことにしておこう」


「話聞いてる?」


「ああ、とはいえ隣の大陸にいるってことは分かった。ちなみにそこまではどうやって行ったんだ?」


「さぁ、気づいたら着いてたから」


「だと思ったわ。もうとりあえず王都に行こう。王都とかいうんだから広くていろんな人がいるだろうし、ここよりは情報も手に入るだろ。しかもいざとなれば普通に図書館で調べればいいしな」


 結局このプランが最強なんだ。

 もうとっとと王都に行ってしまったほうが先に進む気がする。


「うへぇ、王都に行くの? なんだか面倒くさいわね」


「別に着いてこなくたっていいんだぞ。俺は一度も頼んでないからな」


「いえ、私はあなたの秘密を暴くって決めたのよ! どこまででも付いていくわ!」


 ラブはやる気まんまんのようだった。

 うん、まぁいないよりはいた方がいいとは思うけど、どうやら強いらしいし。そういえばさらっと言ってて俺もスルーしてたけど勇者パーティーに同行してたとかなんとか……本当かなぁ? まぁ嘘を吐く理由も思いつかないしな……。

 でもそうだとしてこんだけ強いやつがなんでこんなにも暇そうにしてるんだろう……そこだけが本当に怖いし謎だ。まぁ俺が深く考えることでもないか。言うたって相手からしたら俺もかなり謎だろうしな。でも実際のところは俺も大した事情はないわけだ。案外そういうものなのかもしれない。


「よしじゃあ早速明日にでも出発するとしますか。あれ、でもちょっと待てよ、そういや王都まで馬車で一ヶ月かかるみたいな話だったよな?」


 そうだ、そもそもそれで今朝行商人の馬車に乗せてもらうみたいな話をしていたはずだ。


 俺はそのへんをかいつまんでラブに説明した。


「一ヶ月……」


 ラブは露骨にげんなりしていた。


「嫌だったら別に付いてこなくたっていいんだけど」


「い、いえ。女に二言はないわ。いや、やっぱり一ヶ月は無理ね。絶対に耐えられないわ」


 どっちなんだよ。


「あんまり無理もさせられないから、俺一人で頑張るよ。気持ちだけ受け取っておくよ」


「いえ! こうなったら最終奥義を使うしかないわ!」


「なんだよ最終奥義って」


「ふふん、まぁ付いてくればわかるわ」


 何やら秘策があるらしかった。

 全くどういうことかわからないが、ここまで言うんだからなにか考えがあるんだろう。これでもし何もなかったとしたら確実にブチギレるとは思うが、何か本当にあるということに賭けて、余計な言及もせずにだまった付いていくことにした。





 かなり歩いて街の外にある森まできた。


「ぐへぇ、ぐへぇ」


 俺はもう死にかけ寸前だった。かるく二時間くらいは歩いたと思う。

 ほぼほぼ遠足みたいなもんだ。

 俺は汗もだらだらで、息も絶え絶え。おそらく目も血走ってる自信がある。

 傍から見れば確実に近寄ってはまじ人間に見られることだろう。まぁ幸いにも今この大自然の中にいるのは俺とラブの二人だけだ。


「全くだらしないわね。って言おうとしたけど案外歩いたわね。むしろ根性を褒めたいくらいよ」


「う、うぅ」


 俺はもう言葉を発することができなかった。

 もう今にも貧血で倒れてしまいそうだ。

 なんだかとても気分が悪かった。


「の、喉が、乾いた……死ぬ」


「まぁそれだけ汗を書いてたら脱水にもなるでしょ。水とか持ってないの?」


 俺は首を横に振った。

 今俺が持っているものといえば、小銭の入った巾着ぶくろくらいのものだ。ほぼ生身そのままで来ている。


「はぁ、仕方ないわね……ガチで嫌だけど死んでもらっても困るし、私の水あげるわ」


 するとラブが腰にぶら下げていたひょうたんのような容器を差し出してきた。


「え、え……いいのか? 悪いけど、今の俺の、コンディションだったら、確実にがぶ飲みしてしまうぞ」


「い、いいわよ。まぁもともと連れてきたのは私っていうのもあるし……でもこういうの初めてだから、どうだろうみたいな思いもあったりなかったりというか」


 なんかしどろもどろになったと思いラブの顔を見てみると頬が赤く染まっていた。

 なんだ、まさか差し出しているわりに恥ずかしがってるのか? まぁ冷静に考えて関節キスだもんな。まぁ俺クラスになれば口をつけずに若干浮かせて飲むこともできるが、ラブ自身が口をつけていたとしたら、結局口のついた中身を飲むことになるので関節キスと変わらない感じになってしまうだろう。あんまりこういうのに耐性がなさそうというのはなぜか一安心ではあるが、言うても俺も完全童貞だしな……初めての相手にすべてを捧げるって決めてるし、ここでふしだらな関係を持っていいものかどうか。


「……いや、やっぱりやめとくよ。気持ちだけ受け取っておこう」


 俺は断腸の思いで断ることにした。

 この決断により、もしかしたら俺は死ぬかもしれない。

 だけど男には命より大事なものがある。そう思っているんだ。


「え? いいの? ……意外と気づかってくれたりするのね」


「いや、シンプルにくさそうだからやめとくわ!」

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