13
男たちがにじり寄ってくる。
「まずは、完璧なボディーブローを決めてやるよ。ちなみに叫んでも無駄だぜ? その瞬間お前の顎が砕かれることになる。まぁどのみち全身ズタボロにするつもりだけどな!」
ああ、どうしよう、このままじゃ一巻の終わりだ。
仕方ない、街中ではどうかと思っていたけどここは魔法を使わせてもらおう。
確実にそうしよう。
でもできるだけ相手にバレないように使ったほうがいいよな? 手を前に突き出さず撃てるのだろうか。いや、俺ならやれる。
俺は目を閉じ、集中力を高めた。
感じる……瞑想してわかった。俺の体を、得体のしれない何かが循環している……これが魔力の源か? できる。今の俺ならどこにでも登り詰められる気がするぞ! 俺ってこんなにすごかったっけ?
ばひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!
俺は周囲にためていたオーラを解き放った。
周囲の建物が根こそぎ破壊され、更地になった。
「ふふふ、見たか、これが俺様の力だ。念動力ってやつなのか? よくわからんがお前らなんて雑魚、俺の相手は務まらないんだよ! おととい来やがれ!」
どんな魔法か自分でもわからなかったが、とにかく最強だった。あまりに最強すぎた。
「お、おい! なんだこれは……」
俺が余韻に浸っているうちに、はなれた位置に野次馬ができつつあった。
やべ、これはバレたら完全にやばいんじゃ……
つい調子に乗ってしまっていたが、いっきに血の気が引いてきた。
これはもしかしなくてもやり過ぎたんじゃなかろうか。
「男どもは……!?」
キョロキョロしてみたが、姿は跡形もなかった。
消し飛んだらしい。
考えてみればこんなの普通の人間に耐えられるわけがない。
まぁいいや、もうとにかくこれは正当防衛の結果なんだ! あいつらが絡んでこなければ、こんなことにはなってないんだ!
俺は急いでその場を後にしながら、悪態をついた。
そうだしょうがない。世の中にはしょうがないことはいっぱいあるんだ。でも次からはちょっぴりだけ気をつけるとしよう。
俺は頑張って歩き回り、二時間ほど掛けへとへとになりながら適当な宿を探し回った。
「起きて! 起きて! てば!」
う、うぅ……眠い……もう五分……だいじょうぶ、俺はなんやかんやでギリギリで遅刻を回避できる男なんだ……仮にちょっと遅刻したとしても土下座すれば先生は許してくれる……
「起きてよ。ぜんぜん起きないよこの人!」
すごい揺さぶられてる……こんな起こされかたされたことないぞ……しかし妙に声が高いというか……俺のお母さんこんな若かったっけ?
うっすらと目を開けてみる。
眩しい。
そんな中で浮かび上がってきたシルエットは、幼い少女のものだった。
「誰!?」
がちん!
「いったああい!」
「いっ……」
少女の額と俺の額がごっつんこしてしまった。
少女はものすごく痛そうにしていた。
金髪っぽい茶髪のツインテールの少女だった。小学生くらいだった。
「な、なんでクソガキが俺の部屋に!?」
俺は本気で混乱してしまった。
「もう! いきなりなんなの。早めに起こしてって言ったのはユノミさんの方でしょ!」
え、なんでこいつ俺の名前を知ってるんだ? 俺の部屋にかってに上がり込んできてて、その上名前まで把握してる……ひょっとしてストーカー? でも女児のストーカーなんて聞いたことないぞ。
「あーもう! 何がなんだか!」
「もしかして寝ぼけてる? 言われてみれば昨日は相当疲れてそうだったし……あのね一応言っておくとここは私のお父さんがやってる宿で『ボンボン亭』っていうの。そして私はその従業員」
え、宿?
なんだここは俺の部屋じゃない……?
今更気付いたが、俺は知らない部屋にいた。
今まで見たこともないようなとてつもなく質素な部屋だ。
「なんで俺はこんなところに……はっ!」
俺は突如としてすべてを思い出した。
そうだ、俺は異世界に転生したんだった……それで昨日の夜へとへとになりながらもなんとか適当な宿を見つけて、そこに転がりこんだんだ……そして即効ベッドに大分した感覚は覚えてるぞ……
「でもおかしい。やっぱりこんな女の子は初めて見る」
「私のこと忘れちゃったの? この部屋に案内したのも私だし、毛布かぶせてあげたのも私なんだから! 最後に『明日の朝用事があるから起こしてくれ』って言い残して寝ちゃったんだよ」
「まじかよ、ガチで覚えてないわ……でも確かに宿に泊まろうとしたことは確かだから、おそらくあってるんだろうな。ありがとう、見ず知らずの俺を起こしてくれて」
「いや、そこはまぁお客さんだし。なんだか危うい倒れ方だったから心配だったしね。まぁ何事もないようなら一安心って感じ?」
うーん、なんかよく分からないけど、気を使わせちゃったんだな。ていうか歳の割にしっかりしてるな。この宿屋の跡継ぎにふさわしいと思うわ。
「あとこれ! 昨日適当に巾着袋だけ渡されたけど、こんなに大金はいらないから。宿代は一泊四千イイネだから、その分はこっちで勝手に差し引かせて貰ったからね。きっちりと必要分だけ引いてるから、あとから盗られたとかないとか言い出さないでね」
少女は巾着袋を渡してきた。
中には金貨がたくさん入っていた。
俺はどうやらこれをまるごと渡してしまっていたらしい。
アホだな。
俺は悲しい気分になった。




