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「なぁ、ラブは一体どこの宿に泊まってるんだ?」
冒険者ギルドから出て、とりあえずお開きとなったところでラブに尋ねてみる。
「どうしてそんなこと聞くのよ。もしかしてストーカーの真似事をしようとしてるんじゃないでしょうね」
「そんなアホなことするわけないじゃないか。俺は単純にいい宿がないかと悩んでるんだ。そこでラブの泊まってる宿を参考にしようと思っているだけだよ」
「私は結構いいところに泊まってるから多分ユノミレベルのあれじゃ無理だと思うわよ。私一泊二百万イイネのところに泊まってるし」
二百万だと……? そりゃ確かに無理だ。さすがはSランク冒険者さんは違うな。
「わかった諦めるよ。俺はその辺の安い宿に泊まることにするよ」
「それがいいと思うわよ。それに私の泊まってる地域は誰でも入れるってところじゃないの。貴族街って言って一般人は入場不可能なところにあるから」
「へー、上級国民なんだな。俺はもう一般的なところに泊まらせてもらうよ」
「なんかトゲがある言い方に聞こえるわね。まぁ私の家来ってことなら連れていけると思うけど、どうする?」
「え、いいんですか」
俺は考える。ラブが泊まる高級すぎる宿がどんなのか見てみたい。
しかしながらラブは女の子だ。そんなところに俺がノコノコ泊まりにいくというのはいかがなものだろうか。
「でもお金あるの? 一人二百万イイネに設定されてるわよ?」
「どのみち無理じゃーん」
やはり諦めるしかないらしい。
俺はさいしゅうしゅだんとして土下座を敢行し、ラブにお金を借りてしまおうか迷った。
しかしそれは流石にどうかと思い、やめた。
「それじゃあまた明日も冒険者ギルドに来なさいよ! まだあなたの力見れてないんだからね!」
そう言ってラブは目の前から去っていった。
「はぁ、なんやかんや濃い一日だったな。異世界初日がこれか。もっとゆっくりじっくりスタートしたかったんだけどな」
俺の目的は魔王討伐だが、別にそんな急を要するということもない。
いや、でも結構魔王が強くてやばいみたいな話だったっけ? となるともしかして急がないとまずかったりするのか? いかんせん情報がまるでないので判断がつかない。
「こんなことならラブに聞いておけばよかったな」
「何を聞いておけばよかったって?」
気づけば俺は周囲を男どもに囲まれていた。
いつの間に?
ぼうっと考えながら歩いていたが、知らぬうちに細めの路地まで入り込んでいたらしい。これはやらかしたか。
「え、ええっと、あなた達は一体どこから?」
「へっ、答える義理があるかよ。しかしよもや自分から細い道に入ってくれるとはな。こりゃ隠蔽の手間が省けたぜ」
そういうのはかなりガッチリとした体型の野蛮そうな男だ。
かなり強そうと言うか、ヤバそうだった。
「アニキ。やっちまいますか?」
「まぁ待て。殺す機会なんざいままでいくらでもあっただろう? だがそんな一瞬で楽になるようなやり方じゃ生ぬりぃ。たっぷりと地獄を味あわせてやらねぇとな」
男は持っていたナイフを下でべろーーーーーーーーーーーっと舐めた。ふへええ、痛い……くないのか?
どういうわけか知らないが俺はやばい状況に追い込まれているらしいことはわかる。
ここは許しを請うべきだろう。
「やめてください! 暴力はいけませんよ。もう本当に僕にどういった非があるっていうんですか!」
「はん、まぁ確かにお前自身には特段非はねぇわな。しかしあの女とつるんだからにはお前も同罪なんだよ!」
「ど、どういうことだ?」
「あの女にはちょっとした借りがあってよぉ。常にそれを晴らせる機会を探ってたんだが、あいつなかなか隙を見せねぇ。ちょっと昼寝でもすりゃいいのに常にはっきりしてるっつぅか隙がないっつうか……まぁそれはいい。重要なのはその女と仲睦まじそうにしてる男がいるってことなんだよ。そう、お前とかなぁ!」
あの女……もしかしてラブのことだろうか。そうとしか考えられない。
「もしかして、嫉妬してるとかか?」
至って真面目に尋ねてみた。この状況でボケられるほど、俺の肝は座っていない。
「おいお前俺をあんまり怒らせるなよ……つい殺っちまうかもしれねぇじゃねえか」
地雷を踏んでしまったようだ。
「俺はあいつの悲痛に歪む顔が見てぇんだ!! めったに仲間を作らねぇあいつが見せた仲間! そいつを痛めつけりゃどんな反応が見れるか……ふっひゃー! 想像するだけでたまんねー! お前をひたひたのボロ雑巾見てぇにして、人かゲロかわからなぇくれぇにしてそれでクソ拭いてるところをあいつに見せてぇ!!」
下卑たように笑う男ども。
ああ、これは完全に終わりのパターンだ。
よくもそんな不愉快なことを思いつけるものだ。もしかして俺はここで死ぬのか? 痛い思いをしながら死んでしまうのか? ああ、こんなんだったらラブと別れなければよかった……もし何かの間違いでこのピンチを切り抜けることができたとしたら、どんなことがあってラブに付いていこう。そうすれば用心棒代わりになって俺の身の安全は保たれるはず。変態とでもストーカーとでも呼べばいいさ。しんでもかじりついてやるからな!




