第8話 『守』による『雷』抹殺作戦
俺は仁科守義。タブーチルドレン幹部抹殺作戦のリーダーだ。
作戦が始まったきっかけは、千葉の暴力団、芝崎組の組長、芝崎がTC壊滅軍の本部へ半グレに追われながら来たことだ。芝崎曰く、芝崎組はこの前、タブーチルドレン幹部の雷光に壊滅させられたのだ。
そして、助けを求めるために若頭の高木と共に東京に来たものの、タブーチルドレンの者と名乗る半グレに高木を殺されてしまう。
それで何とか下井さんが半グレを倒し、今に至るのだ。
その件から二日後、俺は友添さんと諜報機関隊長、青柳さんに呼び出された。
「仁科。雷の情報が割れた」
「本当ですか!?」
「えぇ。奴は毎週木曜日の夜、隣町の足原町のバー『ポピー』で酒を飲むそうです」
「じゃあ、狙うならそこか…」
「あぁ。だが、お前だけじゃあ心許ない。戦闘班から二人ほどやろう」
「ありがとうございます」
「狙うは明日。そこで奴を潰す!」
「はい!」
初の殺し。だが、俺は正義のヒーローではない。人を守る忌み子だ。
そして次の日、午後8時。俺は戦闘班の大村と有川と共にポピーに向かった。
「リーダー曰く、店長に話を付けてあるとか。だから客は雷だけだ」
「えぇ。流石に一般人に迷惑をかけたらダメだ」
向かいの空きビルからポピーを監視し、俺達は雷を待つ。
そして8時半。進展した。
「おい!来たぞ!奴だ!」
「何っ!?」
有川が指差した方には、雷がいた。
「よし、奴が怪しんで戻る前に突入だ」
雷が店に入り、俺達は急いでビルを出る。しかし、雷の奴も想定していたのか。店前にはスーツの男が三人いた。
「何だよお前ら。ここには雷様がいるんだ」
「ちっ、流石に考えるか」
すると、大村がナイフを出した。
「ここは任せろ。奴が帰る前に!」
「あぁ。分かった!行くぞ、仁科!」
「はい!」
「なっ、テメェ!」
俺と有川が男を押し退け、ポピーに入る。
「おらぁ!カチコミじゃあ!」
しかし、ターゲットである雷は余裕そうにコップに入ったウイスキーを飲んでいた。
「……ふぅ…」
「テメー雷!何酒飲んでんだよ」
「別に良いだろう?これでも酒には強いんだ」
「ちっ、速戦即決だぁ!」
雷が空になったコップにウイスキーを入れようとした瞬間、有川の拳銃から銃弾が放たれる。狙いは、雷の顔だ。
普通の人間なら避けられない。しかし、雷は顔を背けたのだ。
「おっと」
「なっ!?」
それは雷の目の上を通り、いつも通りかの如くコップにウイスキーを入れたのだ。
「全く、酷いじゃないか。人が酒を入れる時に撃つなんて」
「くそがぁぁ!」
そして有川が撃とうとした瞬間、俺の背中に悪寒が走る。
(なんだ…何か分からないが、嫌な気が…)
俺は何かを察し、後ろに下がった。
「死ねぇぇぇ!」
有川が引き金を引く。しかしそれより先に雷が動いた。
「よっと」
「何ぃっ!?」
何とコップの中のウイスキーをこちらにぶちまけてきたのだ。
「ぐわっ!」
ウイスキーが有川の目や体にかかる。俺は奇跡的に後ろに動いた為、かかる事はなかった。
「くそっ、目がぁ!」
「なぁ、知ってるか?」
雷がいつの間にか有川の前に立っていた。
「な、何がだ…」
「ウイスキーに限らず酒ってのはアルコール水溶液なんだよ。アルコールは水に良く反応して溶けるからアルコール水溶液であるお酒は導電性を持つんだわ」
「まさか…」
「死ぬ前に豆知識得られてよかったねぇ。地獄で話してくるといい」
「やめっ…」
雷がウイスキーで濡れた体を触れた瞬間、有川が痺れ始めた。
「ぎゃばばばばばぁ!」
「有川さぁん!」
その場に倒れる有川。感電死だ。
「雷ぃぃぃ!」
「正直お前らがここに来るのは分かってたさ。だから護衛も三人連れてきた」
そのまま雷が語り始める。
「仁科。俺はお前の事を大事に思っている。だから殺したくはない」
「何を言ってんだ」
「でも、TC壊滅軍に入ったからには死ぬしかないんだよ」
雷の手には電気が纏っている。もし触ったら痺れて死にそうだ。
「いつもならすぐに殺すが、お前はどうせ痛みを感じない。嬲り殺してやるよ」
「来るなら…来い!」
そして、『雷の忌み子』との戦いが始まるのであった。