第6話 スピードスターの殺戮
俺は仁科守義。ある男の悲劇について聞いている男だ。
「くそっ…高村…」
友添さんが仲間の死を聞き、怒りを露にしていた。
その時、外から叫びが聞こえていた。
「誰かぁ!助けてくれぇ!!」
「なんだ!?」
俺と友添さん、下井さんが外に出る。
「はぁ、はぁ!」
「待てやぁ!」
「殺したらぁ!」
一人の中年の男が、二人の半グレに追いかけられていたのだ。
「なっ…」
俺が驚いているときに、すでに下井さんは動いていた。
「ひぃぃぃ!」
「大丈夫か?」
「なんだよオッサン」
「どけよ。殺しちまうぞ」
片割れがナイフで下井さんを刺そうとする。だが、下井さんはその腕を掴んだのだ。
「なっ…」
「ふんぬ!」
「ぎゃぁぁす!」
なんとその半グレの腕の関節を逆に折ったのだ。
「なっ、嘘だろ…」
「これでも神奈川の方ではブイブイ言わせてたぜ」
「くそっ、化け物がぁぁ!」
もう一人が発砲しようとするも、下井が回し蹴りで拳銃を飛ばしたのだ。
「えっ…」
「眠っとけ」
「ぎぶぐっ!」
そして、下井さんは半グレの顔を飛び蹴りで潰し、気絶させた。
「はぁ…はぁ…ありがとうございます…」
追われていた男は下井さんに感謝した、
「それで、アンタはなんでここに逃げ込んだんだ?」
「助けてください!金を払いますんでぇ!」
男は土下座までして、頼み込んだのだ。
「おいおい、なんだ土下座までして」
それを見ていた友添と俺が男の方へ行く。
「あ、貴方が、TC壊滅軍の…」
「そうだか…いや待て、アンタ」
「はい。私は千葉で暴力団の芝崎組で組長やってた芝崎修です」
「芝崎組って…確か千葉で結構デカイ組織じゃあないですか」
「はい。ですが、私の部下はある一人の人間により全員…ぐぅぅっ」
「お、落ち着いてください」
それから数分後、友添さんは芝崎を客室に通し、俺を護衛として部屋に入れた。
「それで、その人間というのは…」
「はい。奴は『雷の忌み子』なのです……」
二週間前、千葉の某所。芝崎組の事務所。
その日は組長である芝崎が会合で事務所には居らず、若頭補佐の石塚哲哉と50名の組員がせっせと作業をしていた。
12時32分。事務所のドアが開く。
「ん?」
舎弟、澤野が玄関に向かう。
「どちら様…ぐわっ!」
いきなり澤野が吹き飛ばされ、組員全員が驚く。
「どうした、澤野!」
澤野の腹にはまるで雷が当たったかのような痕が残っており、口から血を噴き出していた。
「なっ…」
「遅い」
「ぎべゃあっ!」
紫髪の若い男が組員を襲っていたのだ。組員の反応からスタンガンを使っての殺害かと思われた。しかし、男の手には何も握られていなかった。
「この野郎!」
組員達が得物を構えようとする。だが男は組員達を瞬殺していく。
「遅い遅い遅い!」
「ぎゃぁぁぁぁ!」
「ぐぼぼぼぼ!」
「ぎばばばば!」
全員が感電死。皆が攻撃を出来ずに組員が全滅した。
「何があった」
「おや、組長さんはいないか」
石塚が騒ぎを聞き付け皆の元に向かう頃には後の祭りであった。
紫髪の男が名乗る。
「俺は『雷の忌み子』、雷。アンタ達に恨みはないが、死んでくれ」
「何を…ぐわばっ」
雷が一瞬で石塚に接近し、首を掴む。
「が、あ…(何故だ…俺から何メートルも離れてたぞ)」
「即死レベルの電圧マッサージ!」
「ぐばぁぁぁぁ!」
石塚は即死。雷は笑みを浮かべる。
「そうだ。どうせ俺は全員殺れるし、証拠残しちゃおっと」
その時、雷は何を思ったのか近くにあった紙にこう書いた。
『ライヒカルが、組員を全滅させました』
「さてと、帰りますか」
雷が事務所を離れて数分後、芝崎と若頭の高木彰が戻ってきた。
「戻ったぞ…なっ、何があった!」
芝崎が目にしたのは死屍累々であった。
「嘘だ…おい!石塚ぁ!」
さらに信頼できる石塚の死体を見たときには、芝崎は狂いそうであった。
「くそぅ…誰がこんなことをぉ…」
すると芝崎は石塚の近くにあった紙を見つけた。
「ライヒカル…コイツが皆を…」
『ライヒカル』という男を犯人だと知った石塚は、知り合いの情報屋に頼み、その男がタブーチルドレンの幹部だという事が分かった。(さらにTC壊滅軍も知ったとか。)
そして芝崎と高木はTC壊滅軍のある東京に来たのだ。
しかし、数分前。ここに来る際にタブーチルドレンの者と名乗った半グレ二人が自分たちを襲い、さらには高木を殺したのだ。
それから芝崎がここに逃げ込み、今に至る。
「かわいがっていた部下達を殺られ、しまいには高木も殺られた。俺達の恨みをどうか果たしてくれませんかぁ!」
「……」
友添さんが黙り、考えている。その時、俺の口が開いた。
「俺が、皆さんの恨みを果たします!」
「な、仁科…」
「いいんですか!?」
「はい。俺は皆を守ることを誓ったんです」
「……分かった。芝崎さん。俺達に任してください」
「ありがとうございますぅぅぅ!」
芝崎を隠れ家に入れた後、友添さんが俺に話しかけた。
「大丈夫なのか。相手はタブーチルドレンの幹部だぞ」
「えぇ。分かっています。でも、父さんが言っていました。『自分の誓った事を守らない奴はろくなことにならない』って」
「ふっ、ここも父譲りか。とりあえず情報が揃い次第、計画を始める」
「はい!」
例え相手が嘗ての友人でも、俺は容赦はしない。そう思ったのであった。