第5話 下手な潜入者
タブーチルドレン本部。金岡直属の部下、高村が報告をしていた。
「こちら、例の集団の情報にございます」
「……」
金岡が渡された情報を見る。しかし、高村は笑みを見せる。
(ククク、今のは偽の情報だ。それを幹部内で共有し、いずれ共倒れを…)
なんと、高村はTC壊滅軍のスパイであった。
数ヵ月前、高村はタブーチルドレンの情報を得るために友添からスパイとして潜入することを指示されていたのだ。
「……」
「どうでしょう?金岡様」
「すまないな」
「いえいえ、私は奴らの情報を貴方様に渡すだけでございます」
「おっ、何してんの?」
するの、同じく幹部のバケルが金岡の元へやって来た。
「バケルか」
「ん?これは?」
「情報だ」
金岡がバケルに情報の書かれてある紙を渡す。すると、バケルが急に怪訝そうな表情を見せる。
「おやおや…ん、ここ…」
「な、なんでしょう、バケル様?(なんだ、見破られたか!?)」
「ここのリーダーの名前、見たことあるなぁ。なになに…磯村幸一?」
「えっ?(待て待て、そいつは架空の名前のはず…)」
「確か、磯村の部下を何年か前に殺ったんだっけなぁ」
「(な、なに言ってんだコイツは!とりあえず合わせておくか…)そ、そうでしたか!いやぁ、まさか、磯村組を壊滅に追い込むなんて、とてもお強い!ハハハ!」
高村がバケル達の元を去ろうとする。しかし、バケルは高村の肩を掴む。
「待てよ」
「はっ…はいっ!」
「磯村組なんてものは存在しない」
「えっあっ、えっ!?」
「俺は磯村組があるなんて一言も言ってないけど?」
「えっ、ま、まぁ、人間間違えるものですよ!」
「へぇ……」
その瞬間、高村の背中が斬られた。
「がぁぁっ!」
「スパイは失敗しないんだよ」
「せ、背中がぁぁ!」
「そもそも、リーダーの名前は友添のはずだ。いきなり代替わりでもしたのか?」
「そ、それはぁ…」
バケルが高村の目を見る。そして、言い放った。
「目が泳いでいる。嘘だな」
「なっ…」
「まさか俺達に嘘の情報を渡したね?」
「わ、分かりました!何でもいいます!殺さないでぇ!」
「やだね。あ、そうだ。どうせ君は死ぬし。言ってあげよう」
「な、何を…」
「俺は、TC壊滅軍にスパイとして潜入している」
「そ、そんな…」
「さぁ、後は金岡に任せるよ」
「……死ぬがいい」
金岡の腕がレイピアに変わる。
「やっ、やめ…」
高村が言い切る前に、金岡は心臓を貫いた。
「あがっ」
高村は即死。
「…タブーチルドレンを侮るものは死ぬ。平等にだ」
「おっ、あの寡黙な金岡が珍しい」
「……」
「もう、黙らないでよ」
こうして、タブーチルドレンに這い寄る魔の手は幹部二人によって撤退させられた。