第38話 炎の復讐
ある夜。初老の男が夜道を千鳥足で歩いていた。
「うぃ~ひっく。帰ったらぁ、寝るかぁ」
この男はかつて仁科達のいた児童養護施設『幸せの園』の元園長、嘉納である。
この嘉納は職員や子供が仁科達を『忌み子』と差別したのにも関わらず、見て見ぬふりをしたのだ。嘉納曰く『彼らが差別を受けるのには、彼らにそうされて当然な理由がある』という下衆な理由であった。
そして彼らが失踪後、嘉納は定年退職。幸せな老後を送っている。
そしてこの日、嘉納は飲み屋からの帰りに誰もいない暗い道を歩いていた。
「ふんふーん……あ?」
嘉納の数キロメートル先。そこに人型の炎がいた。
「なんだあれ?蛍にしてはでけぇな」
すると炎はこちらに向かって歩いてくるのだ。少し恐怖を覚えた嘉納は後退りする。
「な、なんだよアレ……怖いぞ」
だが、何度後ろに歩いてもこちらに来る炎。遂にそれは街灯に照らされた。炎が消え、そこには赤髪の青年がいた。
「よう。幸せの園の元園長、嘉納茂さん」
「だ、誰だアンタは!しかもなんで俺の名前を?」
青年は一瞬で嘉納の懐に入る。
「うおぉっ!?」
「やっぱりだ。誰も俺の事を覚えちゃいない」
「な、何を言って……」
青年が握り拳を作り、そこに炎を纏わせる。
「死んでくれよ。園長さん」
「えばぶぅっ!」
その拳は、嘉納の腹を貫いた。
「が、がばぁぁ……」
口から血を流し、目からは痛みで涙が流れている。そんな嘉納に青年は言った。
「覚えてないなら言ってやる。俺は火山灯紅。タブーチルドレン、特攻隊長だ」
腕を引き抜き、その場に倒れる嘉納。
「たくっ……俺は他の奴らに比べて名を知られてねぇ。だからこそボスの夢を俺が叶えなきゃならねぇんだ……優秀な男としてな」
火山は倒れる嘉納を尻目に、誓うのであった。