第37話 親の仇
俺は仁科守義。TC壊滅軍の本部に戻ってきた男だ。
俺と聖さん、本宮。そして大阪で仲間となった豊田が本部に足を入れると、構成員の皆がすぐに迎え入れた。
「皆ぁ!よく生きて帰ってくれたぁ!」
「あぁ。お前達も無事のようだな」
「あれ、聖さん。その茶髪は誰なんですか?」
「コイツか?コイツは…」
すると、豊田がいきなり皆に自己紹介をしだした。
「俺ァ、大阪からやって来た豊田秀臣。異名は『引き付けの天才』や!この人、聖の兄弟に惚れてここまでやって来た!よろしゅうお願いしますぅ!」
「まぁ、そんな奴だ。よろしく頼む」
「お、おう…」
皆が苦笑いをしている間、奥から友添さんがやって来た。
「久しぶりだな」
「友添さん。こちらこそ、一週間振りで」
すると、友添さんは俺に耳打ちをする。
「後で俺の部屋に来てくれ。報告したいことがある」
俺はその言葉に頷いた。
「まぁ、三人が死なずに帰ってきたわけだ…新しく人も来たが」
「貴方がリーダーの友添さんですか!聖の兄弟からは話は聞いてます!」
「ハハハ、元気そうな若者だ」
そんなこんなで、その後俺は友添さんの部屋に訪れた。
「失礼します」
「仁科か。待ってたぞ」
そこには諜報機関隊長の青柳さんがいた。
「それで報告の内容は?」
「それを今から話す」
丁度友添さんがやって来た所で、話は始まった。
「それはな…お前の親、いわば仁科義継を殺した火山の事についてだ」
「は、はぁ……」
「あぁ。コイツだ」
友添さんが提示したのは赤髪の男の写真。後ろ姿だが、コイツは火山だ。
「これは……?」
「この写真は仁科組事務所の近くにある商店街の監視カメラの映像から切り取ったものだ。これが撮られた日は仁科組襲撃と同日。時間帯的に襲撃直前と言った所か?」
「そう…ですか……」
この間言われていたとはいえ、俺は火山に対して復讐心を烈火の様に燃やした。
「ぐっ…火山ぁぁ…」
だが、その怒りを沈めるがの如く友添さんが言った。
「しかし、不可解な事がある」
「不可解?」
「あぁ。調べて分かったことだが、その日にも奴は別の極道組織を壊滅に追いやっている。しかも、仁科組襲撃の数分前にだ」
「そ、それって…」
「火山が壊滅させたのは嶋脇組という釘柴町をシマにする組織。釘柴町と真白木区は確かに隣町。だが、数分で行けるほど両組織の事務所は近くない」
「……」
その時、俺はある男の存在を思い浮かべた。
(まさか、バケルが?)
バケルというのはタブーチルドレン幹部の男で本名は衣斐学。他人に化ける事が出来るという能力を持つが…。
俺はその事を二人に話した。
「バケルか…確かにその線はあるが、他人に化けられるとはいえ、他の奴の能力を使えるのか…」
俺達が頭を抱えていると、誰かがノックをした。
「あ?誰だ?」
ソイツは扉越しに用件を伝えた。
「甲斐です。客人がリーダーに会わせろと…」
「それなら入れ」
そして、友添さん直属の部下である男、甲斐が入ってきた。
「失礼します」
すると、甲斐の隣には、俺と同じくらいの男がいた。
「ど、どうも」
「貴方は?」
「お、俺は…嶋脇武寿と言います。先日壊滅させられた嶋脇組組長、嶋脇武の息子です」
「ほう……嶋脇の息子さんですか」
「えぇ。俺は親を、親たちを、タブーチルドレンの火山って奴に殺されたんだ!」
嶋脇の話によると、数日前。何者かが嶋脇組事務所に入り、その後組員全員が斬殺されていたり焼死体となっていたのだ。
それを発見したのが、そのシマの見回りから帰ってきた嶋脇なのだ。
「俺ァ親父達が殺されてとても悔しいんだ!そんで、情報屋に親父達を殺ったのを探させたら、火山って奴が犯人だったんだ!そん時、貴方達の事も知り、ここに訪れたんだ!」
この人も、俺と同じく父やその部下達を殺された者。まるで能力を持たない自分のようであった。。
「……嶋脇さん」
「はい」
「私達も今、火山を討伐しようとしていたところなのです」
「そ、それなら…」
「ですが条件がある」
「それは一体…」
「貴方は今後、裏社会に関わらない事を誓って、表社会で真っ当に働いてください」
それは父がヤクザだった嶋脇にとって難しいこと。だが、嶋脇は首を縦に振った。
「えぇ。分かりました。父も『お前には真っ当に働いてほしい』と言っていたもので」
「そうですか。それなら、火山討伐後、私の知り合いの店で働かせてくれるよう、手回しをしておきますので」
「あ、ありがとうございます…」
「甲斐、この人を隠し部屋に入れさせておいてくれ」
「分かりました」
隠し部屋というのは、ここに訪れた人がもしタブーチルドレンに目を付けられていた際に入れる部屋のことである。
「では、親父達の仇を…どうか」
そして二人はその場を去った。
「……まさか、俺と同じような境遇の人が現れるとは」
「あぁ。もし集団を潰したとしても、生き残りが現れる。そしてその生き残りは復讐を誓う…。生物というのはそういうものだ」
そう語る友添さんは、何か物悲しそうに扉を見つめていた。




