第36話 雀卓での殺し合い
神奈川、縦菅。そこはかつて米軍が闊歩していた町。今でも元米軍の人間がいるという。
縦菅南部の寂れた雀荘『天和屋』。そこにて、ある四人が麻雀を始めようとしていた。客はその四人のみであった。
4分の3は元米軍の麻雀打ち。残りの一人は野球帽を深く被った日本人だ。
「さて、オヤはお前だな、日本人」
日本人の対面にいる男、トム。
(ククク…俺の手元には大三元、四暗刻単騎、字一色の4倍役満が潜んでいる。アイツが南の牌を出せば、一発KOだ)
トムの手牌は、イカサマで作られたもの。そもそも、この三人はグルで、日本人をカモとして金を毟り取ろうとしていた。
「さぁ、早く引けよ」
日本人が山から牌を取る。すると、ソイツの腕が止まったのだ。
「おっと」
「あ、なんだよ?」
「すまねぇな。やっちまったよ」
日本人の手牌を三人に見せる。
「ん?なっ、お前ぇっ!?」
三人が驚く理由。それは日本人の手牌が国士無双十三面待ち、そして天和の三倍役満だ。しかも引いたのは南。もしこれを出していれば、日本人はすぐに箱割れし、三人に金を獲られていただろう。
「う、嘘だ!ありえねぇ!」
「こ、この勝負はノーカン!もう一回だ!」
日本人の手牌をイカサマだと思った三人はソイツにもう一回勝負を仕掛けたのだ。だが、日本人はそれを快く受け入れた。
「いいでしょう。手牌がこれでつまらなかったものでね」
そして、勝負がやり直しとなった。
数分後、手牌を並べた四人。勿論トムはイカサマをしていた。
(よし、今度は大四喜、四暗刻単騎の字一色の五倍。今度は發を持ってくれば…)
親はまたしても日本人。だがしかし、ここでも奴の豪運を見ることとなる。
山から牌を引く日本人。またも笑みを浮かべ、自身の手牌を見せた、
「あーあ。やらかしたわ」
「何だってぇぇっ!?」
「緑一色、四暗刻単騎。そして天和…」
「よ、四倍役満だ!」
「くそっ!やってられっか!」
トムが雀卓を吹き飛ばし、ナイフを取り出す。他の二人もナイフを取り出した。
「ケケケ、ぶち殺して金を取ったらぁ」
「オイオイ、店長がいるだろ」
「どうせお前は死ぬ。だから言っといてやる。俺達とここの店はグルでね、俺が何しようと店長はなにもしない!仮に誰かが死んでも、店長がそれを誤魔化してくれるんでね!」
「ふぅん。それなら、死ぬのはお前達だ」
「はぁ!?殺しやらぁ!」
トムがナイフを振り上げようとする。だが、日本人はある物を握り込んでいた。
「やるよ、欲しかったんだろ」
そしてそれをトムに投げつけたのだ。
「ぐおっ!?」
虚を突かれるトム。それは先ほどのトムのアガリ牌だった發の牌だったのだ。
「なっ、何を…」
「さて、終いだ」
日本人の右の手が、3本の爪に変わる。それはまさに西洋のドラゴンのようであった。
「はぁっ!」
「がぉぉっ!」
その爪が、トムの腹を切り裂いたのだ。
「な、トムぅ!」
「う、嘘だろ」
「お前達も同罪だ」
日本人は片割れの男に口から吐いた炎を吹きかけた。
「ぼぉぉぉ!」
「うがわぁぁぁ!」
「ま、マイケルぅぅ!」
残りの一人が逃げ出そうとする。だが、日本人がドラゴンの如く瞬発力でソイツを捕らえた。
「はぁっ!」
「がぎやぁっ!」
そして、背中を縦に切り裂き、アメリカ人の麻雀打ちを全員殺したのだった。
「な、け、警察を…」
一部始終を見ていた店主が逃げ出そうとする。だが、日本人は店主を後ろから燃やしつくした。
「がぁぁぁぁ!」
その場にいたものを全員殺した日本人は、雀荘を後にした。
「さて、これで悪徳麻雀打ちと協力者の店主は殺ったな。さて、観光してから戻りますか」
男の名前は壱岐龍継。タブーチルドレン幹部の中で唯一、二つの能力を持ち、『龍と運の忌み子』。
そして『仁科義継の実子』である。