第33話 鋼を追い詰めろ
俺は仁科守義。忌み子を倒すために、準備をする男だ。
俺達は今、大阪の半グレ『婆忍愚』のヤサにて聖さんが勝ち取った金岡の情報を聞いている。
「金岡は、今日の午後3時に間津原に着いた。これが情報や」
「ほう。恐らくそこで金岡は隠れるだろう」
「ここからは俺の推測やが、間津原にはそこを支配する半グレ集団『苦李夢存』がおる。恐らく金岡の野郎はそこに隠れる。事実、奴が向かったのは苦李夢存のヤサである廃ビルの方向や」
「ふむ、ありがたい情報だ」
「へっ、どや。婆忍愚の情報は大阪の情報や」
金岡は間津原にいる。その情報を本宮と上杉に話した。
「金岡はそこにいるのか。なら、俺が…」
「本宮。お前は金岡から受けた傷を治療しろ。今のお前じゃあ戦力になりかねん」
厳しく言い放つ聖さん。だが、本宮は復讐と言わんばかりの怒りを叫んだ。
「俺は…泉興業の皆さんの仇を討ちたいんです!」
「本宮…」
「皆を殺された上に俺は奴を逃した。それが悔しくてたまらない。二度はありません。だから、俺を金岡討伐に連れてってください!」
「……ふっ、お前も成長したもんだ」
「聖さん…」
「あぁ。行ってこい。だがな、今度は奴を逃がさず、絶対に金岡を殺してこい!」
ドスの効いた声を出して命令する聖さん。本宮はそれを呼応するように返答した。
「はい!奴は、絶対に…」
そして、金岡を討ち取る計画が、明日の深夜に決行されることとなった。
次の日の深夜、俺と本宮さんは間津原に着いた。
「さて、奴をこの手で…」
「えぇ。いつでも全力を出せるようにブラックコーヒー10杯は飲んでます」
俺達は苦李夢存のヤサの廃ビルにカチコむ。
「おらぁ!金岡の野郎出せぇ!」
「TC壊滅軍舐めるなぁ!」
「なっ、誰やお前らァ!」
そこにいたのは三人のチンピラ。
「死にたくなければ金岡の居場所を教えろ。上半身と下半身を別々にされたくないだろ?」
「ちっ、こんなド深夜に来やがって…ウチはコンビニちゃうぞ!」
一人が俺に発砲する。弾は二発。だがコイツは俺の事を知らないようだ。
「はっ!」
俺はバリアを張り、銃弾を防ぐ。
「なっ、何がっ…」
「とりあえず脚を切る」
そいつが怯えてる間に本宮さんが懐に入り込む。
「なっ、早っ!?」
「セイヤァッ!」
そしてそのまま膝から下を切り裂いた。
「いばがぁぁっ!?」
「こうなりたくないだろ?」
「ひっ、ひぃぃ!」
「か、金岡さん呼ばんとぉ!」
他の二人は金岡を呼びに行くためにその場を去った。
「金岡は絶対にこの手で…」
本宮さんは復讐に燃える炎が写ったような目で奥を見た。
それからして向こうからねずみ色のパーカーの男が現れた。
「あ、アイツらです金岡さん!」
「殺っちまってください!」
「…ほう。仁科と先日の剣豪か」
「俺は本宮龍次郎だ。名前ぐらい覚えろや」
「まぁいい。どうせお前達はここで死ぬ」
「死ぬのはお前だ」
いきなり本宮さんが地面を蹴る。それは金岡の懐に入る合図だ。
「セイヤァァッ!」
いきなり繰り出したのは横薙ぎ。だが、それを金岡は既に見ていた。
「そんなもの、昨日もしただろう?」
金岡が何かを張り、刃が止められる。それを止めたのが鋼線だというのは本宮から知らされている。
「俺に同じ技は通用しない」
「そいつはどうかね?」
「ん?」
金岡が本宮の後ろを見る。奴の目に入ったのは、俺が本宮の後ろから突撃するところだった。
「はぁっ!」
「何っ」
俺は金岡の胸元目掛けてドスを突き上げる。
「おらぁっ!」
「ちぃぃっ!」
金岡は後ろに避け、腕をレイピアに変えた。胸元には掠り傷が出来ていた。
「やるじゃないか。仁科。流石幹部三人を殺った男だ」
「けっ、褒められても何も無いぞ」
「2対1…。人数的には不利だが、レイピアと鋼線を極めた俺に勝てると思うなよ」
レイピアを構える金岡。それに呼応するかのように俺はドスを、本宮さんは日本刀を構えた。
そして、この戦いは衝撃的な結末を迎える。