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忌み子という名の能力者  作者: 蔵品大樹
第4章 寡黙の鋼鉄と関西ヤクザ
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第31話 情報の条件

 俺は仁科守義。泉興業の隠れ家で作戦を立てる男だ。

 遡る事数分前。俺と聖さん、組長の泉は吾妻組の事務所にて金岡の指示による襲撃が。

 時を同じくして、本宮と若頭の上杉は組事務で金岡の襲撃を受けた。

 この2つの襲撃より、泉と上杉除く泉興業の組員は全員死亡。ほぼ壊滅状態となった。さらに泉は吾妻組組員の吉岡に襲われ足を撃たれた。現在、泉は闇病院にいる。

 俺と聖さん、本宮と上杉は現在、泉興業傘下の半グレ『婆忍愚(バーニング)』のヤサに隠れている。

 「すいません…俺が未熟なせいで…泉興業の人たちを…」

 悔しがる本宮に上杉は慰めた。

 「いいんですわ本宮さん。人はいずれ死ぬ。それなたまたま今日だっただけで…」

 「……ぐぅっ」

 そんな二人をよそに、俺と聖さんはTC壊滅軍から送られた金岡の情報を見ていた。

 「金岡錬…タブーチルドレンの幹部で、『鋼の忌み子』。奴の能力は体の一部を鋼に変える事が出来たり、どこかに鋼線を張る事が出来る…さらに幼少期から学んでいたフェンシングの技術を使い、レイピアのような鋭い刃で相手を貫く…か」

 「なんとも厄介な相手ですね」

 「お前が今まで戦って来た奴らはスピード狂()や、岩の如き男(黒岩)植物を操る奴(植草)なんかがいたが、今回はスピードに加え体を変える事が出来て鋼線を張る…三人のいいところを詰め合わせたような奴だ」

 「はい。前の三人に比べ、今回は厳しい戦いになりそうです」

 すると、部屋にある男が入ってきた。

 「失礼すんで」

 「貴方は…?」

 「俺は婆忍愚の豊田秀臣(とよたひでおみ)。あんたらにいい情報を渡そうと思ってなぁ」

 「情報?」

 「あぁ。確か…金岡って奴の情報や」

 「何だと?」

 唐突に明かされた情報。聖さんは豊田に確認をした。

 「その情報は、確かなものだな」

 「あぁ。そうや」

 「なら、その情報を…」

 その時、豊田の笑顔が悪いものになる。

 「おいおい。誰が無料でこれ渡すと思ってんねん」

 「何?」

 豊田は無料で渡さない理由を話す。

 「俺らを懇意にいてもろてる上杉さんはともかく、関東の奴らがいるとどうも嫌なんだわ」

 「ほう」

 「何だと…」

 俺の頭に血が上る。拳を握りしめ、俺は豊田に近付こうとする。

 「止めろ。仁科」

 だが、それを聖さんが止めた。

 「聖さん…」

 「ほぉ、関東のもんは喧嘩したくないやな。臆病者やね」

 「俺らはケンカするために関西まで飛んできた訳じゃない。落ち着くんだ」

 「くっ…すいません」

 だが、俺には分かる。聖さんも、心の奥底で豊田を殺したいぐらい怒っていることを。

 「とはいえだ豊田さん。俺達も金岡を倒すという目標を持ってここで隠れている。何とかしてそれをくれないだろうか?」

 「そうでっか。なら、漢といえばこれやろ」

 豊田が拳を突き出す。

 「ほう…殴り合いか?」

 「そや。俺が参ったと思ったら、その情報渡したる。でもなぁ、お前がもし負けたらこっから出ていきや」

 「ふん、いいだろう」

 「ここの部屋はちと狭い。屋上でやろか」

 そして、二人はそこを出た。

 「聖さん…(大丈夫だろうか)」




 屋上の二人。お互いに殺気を向ける。

 「どっからでもかかってこいや」

 「それなら、お言葉に甘えて」

 聖がいきなり豊田に飛びかかる。

 「ふんっ!」

 「おっと、遅いでぇ!」

 豊田は聖を引き付け、拳を受ける直前でバックステップをとった。

 「ちっ」

 「俺は『引き付けの天才』なんて呼ばれとる。今までひょろっちぃ攻撃なんて受けたことない!」

 「そんな余裕を言えるのも、今の内だ」

 聖が下段の回し蹴り。だが、豊田はそれに対し…

 「ほっ」

 「なっ、跳んだか」

 ジャンプを選択。そして跳び終わった脚は、聖の顔を捉える。

 「おらぁっ!豊田ーキックぅ!」

 「まずいっ」

 そしてその蹴りは聖の顔を喰らった。

 「ぐぅっ!」

 「ケケケ、どうや。俺のキックは」

 「ちぃっ」

 鼻血を拭き、笑みを浮かべる聖。

 「俺ァ、こんな攻撃何回も受けてきた。今さらこれでギブアップするかぁ!」

 「ほぉ。強いやんかオッサン!」

 次に豊田はハイキックを聖のコメカミに目掛け、脚を跳ばす。

 「ほあぁっ!」

 「せいやぁっ!」

 だが、コメカミと足の間に腕を挟んでそれを防いで見せたのだ。とはいえ、その代償はデカい。

 「ぐぅっ!」

 踵の攻撃が腕の骨をほぼ破壊したのだ。

 「さぁ、右腕は死んだ!後はどうすんねん?」

 豊田の質問に対し、聖は笑いながら答える。

 「フフフ…」

 「何が可笑しい?」

 「それなら、お前を壊せばいいだけの話よ」

 いきなり聖が豊田の肩を掴んだ。

 「うおっ!(なんや、早ぇっ!?)」

 「一旦顔を壊してくれよ」

 そのまま頭突き。豊田はそれに対応出来なかった。

 「ごぼぉっ!(なんでや、この俺が引き付けれなかったやとぉ)」

 鼻が壊れ、鼻血を出す豊田。そのまま聖は倒れそうな豊田の鳩尾に強烈なストレートを打ち込んだ。

 「ごぼぉっ!」

 「はぁ…はぁ…」

 豊田は知らなかったのだ。自分は聖孝親という狂人と戦っていたことを。

 大の字に倒れる豊田。聖はギリギリで気絶させないようにしていた。

 「ど…どうだ。渡す気になったか」

 「へ、へへ…確かにアンタは強ぇわ。まさか東にこんな奴がおるとはな」

 そして、豊田は満足したかのように口を開く。

 「わかった。わかったよ。渡すわ。奴の情報」

 「ふっ、血を流した甲斐がある」

 「だが、その前に肩を担いで元の場所に戻してくれへんか」

 「たくっ、最後まで面倒くさい奴だ」

 こうして、仁科達は金岡の情報を得ることとなった。

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