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忌み子という名の能力者  作者: 蔵品大樹
第4章 寡黙の鋼鉄と関西ヤクザ
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第26話 関西からの訪問者

 俺は仁科守義。唐突に訪れた客を迎え入れる男だ。

 植草を殺ってから一週間後、黒岩から種は取り除かれ、怪我は何とか完治した。

 「ふぅ、これで何とか完全復活だな」

 「それで、どうするんだこれから」

 俺は城さんのカフェにて、二人きりで黒岩と話していた。

 「恐らくTC壊滅軍の奴らは俺に復讐心を抱いている。俺を治してくれた奴らやリーダーの人達なんかは理解があるが、俺らに組織を潰された奴らは許さないだろう。タブーチルドレンも、俺を裏切り者として処理してるだろうからな」

 すると、黒岩は一枚の何かを出した。

 「だから、黒岩剛磨(・・・・)は死んだことにする」

 それは、免許証であった。だが名前の欄には黒岩とは違う別の名前が書かれていた。

 『白石幸政(しらいしゆきまさ)

 「…偽名か」

 「あぁ。裏社会にはこういう偽造免許証とかをつくる『にんべん師』って奴がいる。たまたまソイツとは知り合いだったからな。大金積んで作ってもらった」

 そして、黒岩が立ち上がる。

 「俺はこれから白石幸政という放浪者として生きていく。金なら沢山あるし、日本のみならず世界にも飛べる」

 「…それがお前の選択なら俺は止めない」

 「そうかい。もう二度と会わないと思うが、また会ったら、旅の報告でもしてやるよ」

 そして黒岩は、いや、白石幸政は店を去った。




 俺も拠点に戻り、特訓をしていたときであった。

 「すんませぇん。誰かおるかぁ?」

 やけに大きい声。そしてこっちとは違う言い方。恐らく関西の者か。

 俺が声の方に行く。そこには恰幅のいい白スーツの男と明らかに猛者そうな男二人がそこにいた。

 「どうしましたか?」

 「お、アンタここ(TC壊滅軍)の人間か?」

 「…そうだが」

 「リーダーの友添俊は?」

 「その前に貴方は誰なんですか?」

 「俺か?俺は(いずみ)興業の泉寛太郎(いずみかんたろう)。いわゆる組長や」

 「はぁ…」

 とりあえず俺は友添さんに泉の事を報告した。

 「泉寛太郎か…まぁ西の人間とはいえここに訪れたという事は何かあったに違いない。一応話を聞いておこう」

 そして、俺は泉達三人を友添さんの部屋へ通した。

 「いやはや今回はどうも友添さん」

 「泉さん…何で関西で名のある貴方がここに?」

 「まぁ、聞いてくれへんか。俺に襲いかかった悲劇を」

 泉によると関西では元々、『鎌田奈阪会』という巨大組織が西のヤクザの頭として活動していたものの、三年前に何者かに壊滅させられ、『次世代西のヤクザの頭』を誰がやるかと、関西中の暴力団が争った。

 大阪に奈良に京都、和歌山、三重、滋賀、福井、兵庫…。沢山の血が流れた。最終的に『次世代の頭』が決まったのは大阪の老舗組織の泉興業だったのだ。

 それから月日が流れ、今から三週間前の事であった。

 泉の耳にこんな情報が入った。

 「京都の衣川(きぬかわ)組が誰かに壊滅させられた」

 衣川組というのは京都でそれなりに名のある組織。そんな組織がいきなり壊滅したのだ。だが、泉はそれを他人事と捉え、泉興業が動く事は無かった。

 それから2日後後に事態は動く。

 泉興業の傘下である半グレ組織『尾弐山弧凡(オニャンコポン)』がまたも誰かに壊滅させられたのだ。

 傘下の半グレとはいえ、流石に泉は事の重大さに気付いた。

 (もしや…ここ(泉興業)が狙われるとでもいうんか…?)

 泉は急いで情報屋に衣川組や傘下の半グレを壊滅させた者を調べさせた。

 そして分かったのだ。犯人が。壊滅に追いやったのは、あの鎌田奈阪会さえも滅ぼしたタブーチルドレン幹部の金岡練だったのだ。

 泉は金岡の情報と同時にここの存在を知りわざわざ大阪から訪れたのだ。

 「いつかウチの組もやられるんではないかとヒヤヒヤしておるんすわ」

 「それで、どうしろと?」

 「一週間。それぐらいでいいんです。そっちの人間をウチに預からしてください」

 それは唐突な申し出。さらに泉は続ける。

 「猛者、特にそこの仁科守義をですわ」

 泉が指差したのは俺だった。

 「何言ってるんですか泉さん」

 「そのままですわ。その仁科を少し預かりたいんですよ」

 「……仁科。お前はどうだ?」

 「恐らく、タブーチルドレンの奴らは雷や植草を殺った俺を必ず狙う。それなら、襲ってきた奴を大阪で殺ればいいんですよ」

 「……」

 「では友添さん。仁科をこっちで預からせてもらいます」

 だが、友添さんはただで俺を渡すわけではなかった。

 「もしだ。もし貴方達がコイツに手を出したらまずい。監視役として2名連れてかせてくれ」

 「ほう…良いでしょう。別に手は出しまへん」

 泉が立ち上がる。

 「ではまた明日。ここで集合しましょう」

 そして大阪からの訪問者はそこを去った。

 部屋に残された友添さんが俺に言う。

 「仁科。もし自分が死にそうになったら、すぐに逃げるんだ」

 「前も言ったじゃないですか。俺は人を守るためにいるって」

 「ふっ、お前らしい。でも、命を亡くしたら元も子もないからな」

 そして、俺は明日大阪へ発つこととなった。

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