第23話 傀儡と矛盾
俺は仁科守義。我孫子さんから作戦を聞く男だ。
数時間前、黒岩が隠れているカラオケバー『カサブランカ』にタブーチルドレン幹部、草の忌み子の植草生樹が襲撃をかけたのだ。その結果、植草は黒岩に種を埋め込み、こう言ったのだ。
『一週間の間に俺を見つけて殺せ。そうしなければ、貴様が死ぬ』
俺はその事実を黒岩から聞かされた。
「くっ…植草ぁ…」
負傷者二名。ましてや黒岩が死ぬ可能性がある。俺はその事を友添さんに伝えた。
「ほう。タブーチルドレンめ…卑怯なことを」
「はい。これは、奴を通した俺の責任です。本当にすいません」
「仕方ない。襲撃をした植草も猛者だ。あの東郷も勝てないとなると…」
友添さんが数分沈黙する。すると、友添さんが立ち上がり、俺を連れて諜報機関の所へ向かった。
「青柳。少し調べて貰いたいことがある」
「なんでしょうか?」
友添さんが植草の事を話した後、こう言った。
「植草の居場所を特定してくれ。二日以内にだ」
「分かりました。出来る限り早く特定します」
その言葉の通り、次の日には奴の居場所が特定されていた。
「足原区、南東のドヤ街です。そこに植草が潜んでおります」
「ありがたい」
そして友添さんは俺と戦闘班No.2の男、源田遥人を呼んだ。
「どうやら植草は足原区南東のドヤ街に潜んでいる。奴は一般人に危害を加え、うちのものを二名負傷させた。あの卑劣漢を、完膚なきまでに叩きのめしてこい!」
「はい。同じ釜の飯を食べたものでも、俺は容赦しません」
そのまま俺達は植草のいるドヤ街に向かった。
「さて。奴はどこにいやがる」
源田さんが適当なホームレスに植草の写真を見せて話しかける。
「あの、このような男がここに来てませんでしたか?」
「……」
ホームレスが黙っている。しかし、源田さんは諦めずに話しかける。
「あのう…」
「……うわがぁ!」
何といきなりホームレスが源田さんに襲いかかったのだ。
「おっと。不意打ちか」
しかし、バックステップをとり攻撃を避ける。
「うぐぅぅ…」
そのホームレスの目の焦点は合っていなかった。まるで違法薬物を吸ったあとかのような…。
「うがばぁぁ…」
「いぎぎきぎ…」
先程の襲撃を皮切りに、他のホームレスが俺と源田さんを囲む。
「おいおい…まさか操られているとは言わねぇよなぁ」
「ぐがしゃやぁぁっ!」
一人が源田さんに殴りかかる。
「カタギだから殺らねぇ。でも気絶だけしとけ」
しかし、クロスカウンターでそのホームレスを気絶させたのだ。
「仁科。ここは俺がやる。植草を見つけろ。後で追い付くからな」
「分かりました。後は任せます」
俺はホームレスの大群を押し退け、一番高い建物に入った。
「植草ぁ!いるなら返事しろぉ!」
「そんなに叫ばないで。耳が痛いです」
上から現れたのは、植草その人だった。
「見つけたぞ…」
「いやぁ、私の作った傀儡を避けてここに着くとは。流石『守』です」
「たくっ…黒岩は嘘ついてたのか?」
「まぁいいでしょう。ここで貴方をやりましょう」
植草が笑みを浮かべる。それに呼応するかのように、俺はナイフを構える。
「来るなら…来いやぁ!」
そして、傀儡を使う男と俺との殺し合いが始まったのであった。