第22話 私を見つけてみろ
その後、カサブランカを去った植草は足原区のドヤ街に入った。
「さてと。ここに隠れてますか」
適当な建物に入ろうとする植草に邪魔者が現れる。
「おい兄ちゃん。ここは俺の居場所だ。当たり前かのように入られると困る」
それはその建物の所有者と名乗る中年ホームレスだった。
「貴方は?」
「俺はここの長だ。ここに入るには俺の許可を貰ってくれ」
「ほう。お金ですか?」
「いや、ここで居座り続けるには、暴力だ」
いきなりホームレスが植草に殴りかかる。右のアッパーだ。
「ほっ!」
「おっと」
体を背け、アッパーを避ける。すると、ホームレスが聞いてもいないのに語り出す。
「俺は元々格闘技を習っていてな。八百長ばっかりしてたから今こんな感じなんだわ」
「ふむ、いわば自業自得ですね」
「うるせぇ!俺はその言葉が大嫌いなんだよ!」
激昂したホームレスが脛を狙う下段蹴りを仕掛ける。
「おらぁ!」
「おっと。怒りにまみれては死あるのみですよ」
その時、植草が跳んだ。
「何ぃっ!?(今まで俺の下段蹴りをジャンプで避ける奴はいなかった!)」
「さて、トドメと行きましょうか」
着地の後、そのままバックステップをとる。
「この野郎ぅ!」
植草に襲いかかるホームレス。だが、それは計算の内だった。植草が葉っぱを指にはさみ、それをホームレス目掛けて投げる。
「がびゃっ!!」
それは綺麗に目を切り裂き、ホームレスの視界を永遠の闇に導いた。
「み、見えねぇ!」
「さて、どうします?」
「うぐっ!」
目をやられた恐怖により、ホームレスは見えない植草に媚始める。
「ど、どうかその建物はあげますのでぇ!命だけはぁっ!」
「ありがとうございます。では、また」
建物に入り、最上階に着いた辺りである者から電話を受ける。相手はバケルだ。
「なんだバケル?」
「オイオイ、黒岩の野郎を殺さなかったのか?」
「そうだが」
「やはり甘い。お前は甘いんだ」
「ほう?」
「お前のそういうところが、ダメなんだよ」
「答えになっていないですね。だから貴方は変装しか能がないのですよ」
「ちっ。選択次第で、お前も裏切り者だ」
電話を切った植草。その時、草柳の人格が宿る。
「けっ、バケルの野郎。俺はすげぇんだよ。力があって、回復も出来る。なんなら、あの黒岩をも追い詰めた。そんなの、アイツには出来んのか?」
建物内では、植草の怒りの言葉が響いていた。