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忌み子という名の能力者  作者: 蔵品大樹
第3章 二足の草鞋
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第18話 二重人格の忌み子

 タブーチルドレン本部。ボスが電話で報告を聞いていた。相手はバケルだ。

 「黒岩の野郎が仁科に救われ、現在TC壊滅軍の拠点にいます」

 「ほう…」

 「どうしましょうか。俺も今そこに潜入していますが、裏切り者として粛清しましょうか?」

 「いや、殺らんでいい」

 「何故でしょう?」

 「儂には儂の秘策がある。お前は引き続き、潜入捜査をしておけ」

 「了解しました」

 ボスが電話を切ると、ある男が入ってきた。

 「失礼します。ボス」

 「植草か」

 植草生樹。緑の長髪の男で、『草の忌み子』。

 「何の用で私を?」

 「お前に、黒岩を殺ってもらいたい」

 「ほう…」

 「奴はタブーチルドレンを裏切った。その罰として、奴を苦しませながら殺せ」

 「…了解です」

 部屋を出た植草。すると、先程まで物腰が柔らかい雰囲気から変わり、少し荒っぽくなる。

 「本来、俺は回復担当なんだがなぁ」

 植草は、二重人格だった。穏やかで戦う主人格『植草生樹』と乱暴な回復の『草柳茂(くさやなぎしげる)』。組織内では回復担当だが、本来の植草は物腰の柔らかい戦闘狂だった。

 植草にはかつて一緒に児童養護施設で過ごしていた兄代わりの少年がいた。

 名前は草柳茂。いわゆるガキ大将で、自分がこの児童養護施設で一番だと考えていた小学生らしい子供だった。

 そんな草柳は植草と仲がよく、いつも一緒に遊んでいた。

 きっかけは、植草がサッカーで遊んでいる時に転び、膝を怪我した事だった。

 「うわぁぁん!痛いよぉぉ!」

 泣く植草。そこに草柳がやって来たのだ。

 「大丈夫か?」

 「膝が痛いよぉ!」

 「ちょっと待ってろ」

 草柳が持ってきたのは消毒液と絆創膏。傷口を消毒液で染みさせたティッシュで拭き、絆創膏を貼った。

 「これでどうだ?」

 「うん!もう大丈夫!」

 「ガハハ!それならよかった!」

 すると、草柳が名案を思い付く。

 「そうだ!俺達はこれから友達だ!」

 「うん!いいよ!」

 二人の仲は誰にも引き裂くことは出来なかった。あの時までは…。

 それは例の誘拐事件の日。学校からの帰り道、二人は一緒に帰っていた。すると、目の前にとある黒服の男が現れた。

 「坊や、お菓子を食べないかい?」

 「えっ?」

 男が植草の腕を取ろうとする。すると、二人の間に草柳が入った。

 「おい!止めろ!お前!『ユウカイハン』だろ!」

 そう。草柳は察していたのだ。この男は自分達を誘拐するのだと。その時、男の口調が荒くなる。

 「ちぃぃっ!ならてめぇらは死ねやぁ!」

 男は草柳を押し、植草にぶつけたのだ。

 「ぐっ!」

 「がっ!」

 「このクソガキがぁ!俺を舐めんじゃねぇ!」

 植草を持ち上げ、草柳に投げた。

 「ぐぶっ!」

 「ぎにゃっ!」

 草柳は即死。植草も意識を失った。恐らく、この時のショックや草柳の死により、二つ目の人格である『草柳茂』が生まれたのだった。

 それからして解放の後に能力に目覚め、差別を受け失踪。そして今に至るのだ。




 「さてと。黒岩を殺りに行きましょうかねぇ」

 植草生樹であり草柳茂。その男は笑顔を絶やさない『草』である。

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