表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忌み子という名の能力者  作者: 蔵品大樹
第2章 岩の如き固い男
18/39

第17話 かつて救われたもの

 遡ること数十年前。当時真白木区の隣町、式沢(しきさわ)区をシマとする暴力団の高瀬(たかせ)連合会は仁科組の前身、柏原(かしわばら)組と抗争を起こしていた。後にこの抗争は、『高柏(たかかしわ)抗争』と呼ばれた。

 そんな高瀬連合会の末端だったのが、若き日の友添俊だったのだ。

 まだ末端だったこともあるのか、仕事は雑務のみ。同期の者達と切磋琢磨していた。

 そんなある日。この日は高瀬連合会三代目組長の西条幸生(さいじょうゆきお)と若頭の桂芳三(かつらよしぞう)が珍しく末端の集まる事務所にやって来たのだ。

 「よぉ。お前ら。ちゃんと仕事してるか?」

 「お、オヤジ!お疲れ様です!」

 「お前らは組のお荷物なんだからなぁ。仕事して柏原の奴らを殺ればいいんだよ」

 「は、はい…(早く死んでくれねぇかなぁ…)」

 西条はその高圧的な態度から、自身の言いなりである幹部を除く組員から裏で嫌われていたのだ。

 「さぁさぁ早く仕事を…」

 そんな時だった。

 「おらぁ!西条のタマ取りに来たぞぉ!」

 「あん!?」

 そこに現れたのが、当時柏原組の三年目組員でありながら『死神仁科』の異名を持つ仁科義継だったのだ。

 「なっ、柏原組のモンかぁ!」

 「オヤジを殺らせねぇ!」

 自身の昇格を考えた一人の組員が仁科に襲いかかった。

 「死ねぇぇ!」

 「遅ぇ。まだカタツムリの方が速い」

 「ぎにべっ!」

 しかし、ソイツは仁科に顔を蹴り飛ばされたのだ。

 「俺は西条と桂狙いだ。三下は殺さん」

 「ひぃぃぃ!」

 「勝てるわけねぇぇ!」

 その途端、友添を除く末端構成員がその場を去ったのだ。

 「お、お前ら!逃げるなぁぁぁ!」

 「何よそ見してるの」

 「ぎばがっ!」

 いつの間にか、仁科は桂を撃ち抜いていた。

 「かっ、桂ぁぁぁ!」

 「さぁて。西条幸生。ここがお前の死に場所だ」

 その時、西条と仁科の間に出たのは友添だった。

 「ん?」

 「たとえクソッタレなオヤジでも、殺させはしない!」

 「ほう…」

 「と、友添…」

 友添はドスを取り出す。腹を括った事がわかる。

 「し、死ねぇぇ!」

 仁科に突撃する友添。しかし、動きに関しては素人。カウンターの右フックが友添の顔に向けて飛ぶ。

 「ぎゃのぶっ!」

 手加減はしたらしいが、友添は気絶。一人西条が残された。

 「や、やめてくれぇ…」

 「さぁ。西条。死んでくれや」

 仁科のドスは、西条の腹を切り裂いた。

 「ぐぼべやぁぁぁぁ!」

 西条は死亡。仁科は倒れている友添に言葉を掛けた。

 「お前は俺に対して立ち向かった。度胸のあるいい幹部になれるさ」

 そして、仁科はその場を去った。

 西条の死後、若頭補佐であった桑野(くわの)が代理組長となり、柏原組にケジメを付けた事により高柏抗争は終了。

 死人は柏原組では5人。高瀬連合会では西条、桂を含め7人。(そもそも高瀬連合会の若衆が柏原組の幹部をやった事がこの抗争の始まりだったとか)

 後に友添は度胸のある組員として知られ武闘派として名を馳せた。幹部にもなり、最終的には高瀬連合会の組長になるが、タブーチルドレンにより高瀬連合会は壊滅させられたのであった。




 「という感じだ」

 「はぁ…父さんは、貴方と戦っていたんですね」

 「まぁ、瞬殺だったがな」

 「そうだ。黒岩は今どこに」

 「奴はあそこの病室だ」

 俺と友添さん、城さんは黒岩のいる病室に向かった。

 そこには一つのベットがあり、ベッドに寝かされている黒岩が外を見ていた。

 「黒岩!」

 「仁科…城婆ちゃん」

 「剛磨ちゃん…ぐぅぅ!」

 城さんは泣きながら黒岩に抱きついた。

 「もう…心配させて…ぐっ…うぅ…」

 「すまねぇな」

 二人はまるで、絆で結ばれた親子のようであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ