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忌み子という名の能力者  作者: 蔵品大樹
第2章 岩の如き固い男
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第16話 たとえ敵でも

 俺は仁科守義。唐突な乱入者に驚く男だ。

 「やめてぇぇぇぇ!」

 その声と共にやって来たのは、ある老婆。その人に、俺と戦っていた黒岩は驚いていた。

 「じょ、城婆ちゃん!?」

 「やめて、あなたは人を殺しちゃあ駄目なの!」

 「だ、だが…」

 「あなたはまだ若い!老人である私と違って、やり直せるの!」

 「くっ…」

 「お、おい、黒岩!この人は…」

 「この人は、俺が行っている喫茶店の店主だ」

 黒岩は乱入者の城武子の事について話してくれた。

 「お前がお世話になった人と…」

 「あぁ。学生時代は、児童養護施設でいい飯を出してくれなかったからな。オムライスを出してくれてたんだ」

 「確かに、高校生の頃は夜はいつもいなかったよな」

 「へっ、お前も覚えてたか」

 「剛磨ちゃん…」

 「それにしても、なんで俺がここにいることが分かったんだよ」

 「あなたはいつも店を出て左の道に行くでしょう?でも、あなたは珍しく右の道に行った。気になって着いていったら、あなたとこの人が戦っていたのが見えたの」

 「……やっぱり、亀の甲より年の功か」

 「もうやめて…あなたはまだ一線をギリギリ越えてない!もう…これ以上は…」

 「……すまねぇな。城婆ちゃん。俺はもう…一線を越えてるんだよ」

 「えっ…?」

 「俺は…」

 その時だった。公園に、二人のチンピラが入ってきたのだ。

 「おいおい黒岩さんよぉ。話と違うんじゃねぇの?」

 「お前ら、なんでいるんだ!?」

 黒岩の話しぶりから、タブーチルドレンの者か。片割れが黒岩に向けてナイフを向ける。

 「俺はボスから『もし黒岩が奴と和解するような事があったら殺せ』と命じられているものでね」

 「ふん、そんなちっぽけなナイフで俺を殺れるのか?」

 「ケケケ、このナイフはボスの能力を纏わせてる。お前も知ってる通り、岩なんて簡単に切れるぜぇ!」

 「ぐぅぅ……」

 城さんが黒岩の前に出る。

 「ん?なんだババア?コイツを守るのか?」

 「私のような老いぼれの役目は、若者を守る事!もしこの子を殺すのだったら、私が許さない!」

 「城婆ちゃん…」

 「あっそう。だったら死ねやぁ!」

 チンピラが城さんに切りかかる。

 「おらぁ!」

 「うっ…」

 城さんが切られた…かと思われた。

 「やらせるかぁ!」

 「ぎのやぁっ!」

 俺は寸前に奴の顔を殴り、それを防いでいた。

 「はぁ…はぁ…」

 「あなた…」

 「俺の役目は、皆を守る事。例え、あなた達も守ります!」

 「この野郎!」

 チンピラが立ち上がろうするが、前に出た黒岩が奴の腹を踏み潰した。

 「がぼべっ!?」

 「黒岩!?」

 「ふん、呉越同舟だ」

 「くそがぁぁ!」

 残りのチンピラが拳銃を構える。しかし、銃口は城さんに向いていた。

 「なら、ババアから死ねぇぇ!」

 発砲。俺は急いでバリアを張るも、なんと銃弾はバリアを貫いたのだ。

 「なっ…」

 俺の頬を掠り、後ろには城さん。

 「ぐぉぉぉぉ!」

 だが、間に黒岩が入り込み、城さんを庇った。

 「剛磨ちゃん!」

 その銃弾は黒岩の腕をお釈迦にした。その時、黒岩の叫びが暗闇の公園に響いた。

 「がぁぁぁっ!?」

 腕からは血がだらだらと流れる。

 「へっ、もういっぱ…」

 「させるかよ」

 俺は先程のチンピラのナイフを拾い上げ、奴を逆袈裟に切り裂いた。

 「ごばぁぁぁ!」

 チンピラは即死。俺はすぐに黒岩に駆け寄った。

 「はぁ…はぁ…」

 「大丈夫か!」

 黒岩の額には、脂汗が流れていた。

 「痛ぇ…初めての感覚だ…」

 「そんな事言ってる場合か!早く治してもらわねぇと」

 「おい、仁科」

 「あ?」

 「敵の…俺を、救うのか?」

 「うるせぇ!お前から敵意を感じなかった。ただそれだけだ!」

 「けっ…」

 俺は黒岩を担ぎ上げ、ある所に向かった。それは、TC壊滅軍の救護所だ。

 「殿山さぁん!怪我人が!」

 「どうした仁科ぁ!」

 救護班の殿山さんがこちらに駆け寄ってくる。

 「コイツは…」

 「黒岩です!腕を撃たれたそうで…」

 「……平等に救うのが、医者である俺の役目だ。おい!急患だ!」

 殿山さんと他のメンバーが黒岩を手術室に運ぶ。

 「黒岩……」

 「剛磨ちゃん…」

 俺と城さんは心配しながらも手術の終わりを待った。

 数十分後。手術室から殿山さんが出てきた。

 「黒岩は…」

 「一命は取り留めた。でも、あの感じじゃあ暫くは安静必須だな」

 「よかった…」

 「うぅ…剛磨ちゃん…」

 すると、救護所にある男が現れた。

 「仁科」

 「友添さん…?」

 友添さんが俺の前に立つ。

 「……お前、黒岩を助けようとしたんだな」

 「えぇ」

 「うちのもんが、お前が黒岩を運ぶのを見たそうだ」

 「……」

 「ふっ、そこも父譲りってところか」

 「えっ…?」

 「アイツもな、例え敵対組織の一員の奴でも、何も知らない、やってない下っぱの奴は殺さなかったんだ」

 「そうなんですか?」

 「あぁ。なんなら、俺もアイツに恩がある身だからな」

 そのまま友添さんは自身の過去を語りだした。

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