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忌み子という名の能力者  作者: 蔵品大樹
第2章 岩の如き固い男
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第14話 必要のない人間

 タブーチルドレン本部。

 「ほう。久木田を殺れなかったと」

 「すいません。仁科に邪魔されたもんで」

 幹部の黒岩がボスに作戦失敗を報告していた。

 「貴様は作戦を邪魔されたから、尻尾を巻いて逃げたというのか?」

 「そういう訳じゃあないんです。仁科のバリアに阻まれて、久木田を逃したんです」

 「バリア?」

 「えぇ」

 「はぁ…人間、信頼を積み上げるのは大変だ。長い時をかけなければダメなのだ」

 「はい。確かにそれは分かりますが…」

 「しかし!それを崩すのは、赤子の手をひねるように簡単なのだ!それが分かるか!?」

 「はい。分かりますよ」

 「儂の『禁忌』は、貴様の岩の体でさえも崩壊させる事を出来るのだ」

 「脅し…ですか?」

 「あぁ。儂が今から言う任務を遂行出来なかったら、貴様は所謂『必要のない人間』だ。いいな?」

 「何をすればいいのです?」

 「奴を…仁科を殺してこい」

 ボスからの命令に、黒岩は沈黙を取った。だがボスは、それを許すような人間ではなかった。

 「何を黙っている。今ここで崩壊させてもよいぞ」

 「……はぁ。分かりました。この俺が、奴を殺ります」

 「フフフ、その心意気だ」

 ボスの部屋を出た黒岩は、ため息を吐いてある所に向かった。

 「はぁ…」

 数分後、彼が行った所は喫茶店『ジョー』。

 「今日も来たぜ。城婆ちゃん」

 「おぉ。来てくれたのかい、剛磨ちゃん」

 「おいおい止めてくれよ。俺はもう成人だぞ」

 ジョーの店主である初老の女性、城武子(じょうたけこ)は黒岩を受け入れた。

 「たくっ、今日も客いないのかい?」

 黒岩が見渡すと、店内には客は居らず、店員も城のみだ。

 「いいんだよ。お前が来てくれれば、私はそれで嬉しいからねぇ」

 「あっそう」

 適当な席に座り、メニューを見ずにすぐに頼んだ。

 「コーヒーとオムライス」

 「あいよ」

 普通のコーヒーとオムライス。黒岩にとって、それは自分の宝物であった。

 数分経って自分のテーブルの上に、5個のガムシロップとブラックコーヒー、そして自分の名前がケチャップで書かれたオムライスが乗った。

 「いただきます」

 黒岩が最初に手をつけたのはオムライス。具はグリンピースとハムだけの、シンプルなオムライス。だが、黒岩はうまそうにそれを食べた。

 「うめぇなぁ、城婆ちゃんのオムライスは」

 「ふふふ、誉めてもなにも出んよ」

 オムライスを食べきり、コーヒーに全てのガムシロップを入れ、飲んだ。

 「ふぅ…」

 「剛磨ちゃん、最近どうなの?」

 「ん?まぁ、順調だよ」

 「あらそう。苦しい時は私に相談しなさいね。亀の甲より年の功なんだから」

 「ふっ、ありがとよ」

 実は黒岩にとって、城は恩人でもあった。

 彼が16の時、彼に出される食事はあまりにも貧相であった。理由は言うまでもない。

 そんな黒岩は、賄いを出してくれる店を探した。その時に見つけたのが、この『ジョー』であった。

 城は能力持ちであった黒岩を何も言わずに採用し、賄いも出したのだ。

 黒岩にとって城は神様。返しても返しきれないほどの恩があるのだ。

 コーヒーを飲みきった黒岩は、金を払って店を出る。

 「城婆ちゃん。美味しかったよ」

 「そうなの、よかったねぇ」

 店を出て、黒岩は空を見上げた。今日は珍しく、星空が広がっていた。

 (城婆ちゃん。死んだら、会えねぇな)

 彼はそう思って、帰路に着いた。

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