第10話 禁忌なる能力者の実力
タブーチルドレン本部、ボスの部屋。雷直属の部下の男が玉座に座っているボスに報告をしていた。
「ボス、雷様が死亡したとの情報が」
「……そうか。しかし、儂らの理想の世界への実現には尊い犠牲は必要である。雷、よく頑張ってくれた」
「どうやら、雷様を殺したのは『守』の仁科だとか…」
「ほう。あやつか。やはり、そうなるのも運命であろうか…」
「では、失礼しました」
男と入れ違いで入ってきたのは末端の三人のチンピラ。
「おいおいおいボスさんよぉ!」
「誰だ貴様は?」
「アンタのような老害がボスになるより、俺ら若者がボスになった方がいいんじゃねーの?」
「だからなんだ?」
「だからさぁ、死んでくれよぉ」
一人が拳銃をボスに向ける。
「貴様ら。引き返すのなら今のうちだ。命が惜しくないのなら、引き金を引け」
「なっ…(ボスは後ろを向いてやがんのに、なんで俺が銃を持ってることを…?)」
「どうした、殺るのか、殺らんのか。ハッキリしろ」
「こ、このクソジジイがぁ!」
チンピラが発砲。それは確かに玉座ごとボスの体を貫いた筈だった。
「やったか…」
「なんだ。そんな玩具如きで儂を殺れると思っていたのか?」
「な、嘘だろ…」
ボスは後ろを振り向き、ローブで顔を隠しているのにも関わらず、チンピラ達に殺気を見せ、圧をかける。
「それを撃ったからには、儂も容赦せんぞ」
すると、ボスが先程発砲したチンピラに指を指す。
「なんだよ、指を指して」
「貴様らには特別に儂の能力を見せてやろう」
そして、指先から黒い光線が発射された。その光線は分裂し、チンピラの急所、つまり心臓や目、喉に頸動脈を貫いた。
「その代わり、見学代は命で支払え」
「かぶっ…」
チンピラは即死。他の二人は怯える。
「オイオイマジかよ…」
「何が起きたぁっ!?」
「これが儂の能力。『禁忌』。これは光線だけではない」
ボスが黒い刃を作り、それを見せてやる。
「応用の一つだ」
その刃で生き残りの片割れに唐竹割りを行った。
「なっ…あっ…」
攻撃を受けたチンピラはそれだけ言い残すと、床に倒れた。
「嘘だ…死にたくないぃぃ!」
残されたチンピラは尻餅を付き、逃げようとする。
「全く。自分が攻撃する時はまるで高所にいるような優越感を見せ、自分が攻撃を受ける時は逃げばかり…儂の嫌いな差別者の特徴だ」
刃をチンピラの背中に向けて投げ、それが突き刺さる。
「がくがっ!?」
ボスを襲ったチンピラは全員死亡。
ボスは玉座に戻り、一つ呟いた。
「奴らは儂らの崇高なる思想は分かっていなかった。どっちみち、死ぬのは当然と言えよう」