000─月森の仔─
我々が存在するこの世あらゆるものは、世界創始者である3人の源創魔術師。そして次に古くから存在する4人の四大魔術師。その7人の古代魔術師によって生み出されたとされている。
──第四位紅属魔術師は心の豊かさを、第五位金属魔術師は屈強なる心身を。
──第六位緑属魔術師は豊かな知恵を、第七位青属魔術師は先見の眼を。
──第一位紫属魔術師が世界の理を。
──光が降り注ぐ世界は第二位白属魔術師が。
──闇が支配する静寂な世界は禁忌の──。
──古代魔術師伝(写し)一部抜粋──
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真っ白な空を見上げる。
そこにあるのは唯一の赤。
それなのに 周囲に広がるのは そのあかが上空に存在しないかのように思わせる
不気味なほどの しろ だけ。
……白い。
草も 木も 葉も 動物も
妖精も 精霊も
この自分さえも しろい。
「……」
この場所は 恐らく 自分の知らない森。
見たことも 訪れたことも ない場所。
でも 聞いたことは ある気がする。
いつだったか 誰かが 言っていた。
「……ここは」
頭の中に響くのは 聞き慣れた声。
"……セレシルヴァ、これから話すことをよく覚えておきなさい。つきは──"
「──つきは……」
その先の言葉は 上手く思い出せなくて 言葉が 止まる。
それでも 必死に 復唱 し続けた。
忘れないように。
思い出すように。
「し、ろ……」
あたまにひびくこえを
その人の教えを
忘れないように……。
「森……」
ふと みあげると さっきまで あかかった つきは
しろく 輝いていた。
しろい つきが
ぼくを てらす。
「……つ、きが」
……。
……どうして……。
「……し、ろ」
どうして……。
行き場を失った 感情が…。
薄れていく中で……。
「……も、り」
ただ同じフレーズを ひたすらに
繰り返し 口にする。
どうして くりかえしているのか じぶんでも分からなかった。
「月に照らされたこの森に……」
遠ざかる世界の中 かすかに
だれかのこえが きこえた気がしたけど……。
体は もう 動かなかった。
「……おいで、月森の仔」
そのこえと 温かいぬくもりを最後に──
──せかいは 暗転した。
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──"月森の仔"は、意識が途切れる最後に黒い彼女の手を取った。
眠るように気を失った今も、この森に住む精霊と妖精達に囲まれて。
まるで、どこかの御伽噺に出てきそうな状況だった。
その光景も相まって、月森の仔はどこかの少女を思わせる。
黒い彼女が月森の仔を抱き上げて静かに歩き出す。
後をついてくる彼らをそのままに、黒い彼女は元来た道を引き返して月森の仔と共に白い森の中へと姿を消した──。
源創魔術師の黙示録を一読いただきありがとうございます。
初めまして、世埜です。
別サイト様で投稿していたこの作品を修正加筆しつつ、こちらのサイトでも投稿することに。
温めに温め、現在も練りに練り続けているこの作品をどうにか形にしていければ…。
毎月15日を目標に更新予定。※あくまで予定。
魔術児達が織り成す物語、目を通してくださる皆様にも楽しんで頂けますように。