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吸血鬼ハンター  作者: けーすけ
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先程ユーザ登録しまして、初の投稿作品になります。今後の参考にしたいので、是非ご感想をお聞かせして頂ければと思います。書き溜めた次の話も同時に投稿しますので、そちらも見て頂ければと思います。




 吸血鬼、蘇った死者とも呼ばれるそれは、人間の生き血を啜り、仲間を増やしていく。そんなの映画や小説の作り話じゃないか、今までの僕はそう思っていた。 けれど…、ある人との出会いでその考えは間違いだったってことを知ることになる…。


 眩しい朝日が寝室の窓から差し込み、寝ぼけ眼をこすりながら名残惜しそうにベッドから起き上がる。それがこの僕、「ルカ・グレイ」の1日の始まりだ。時計を見ればもう7時、家を出なきゃならない時間だ…。急いでシャツとズボンに着替えて、ひったくるように鞄をコート掛けから外して部屋を出る。  

 下のリビングに入ってはトーストを口に頬張り、足早に玄関へと駆け出した。目指す場所はバス停だ。


「ふぅ…、時間に間に合って良かった…。やっぱり遅くまでスマホ見るんじゃなかったな…。」


 10分後、僕はバスに揺られながらホッと胸をなでおろしていた。ふと窓を見ると、城壁に囲まれた石造りの街が広がっている。この街に来て1年は経つけど未だに中世にタイムスリップしたかのような感覚は忘れられない。

 この街…、「ワラキア市」は東欧にある地方都市の1つ、中世の町並みが現代に残されているのが特徴で、その景色を楽しもうと1年中観光客で賑わっている。たしか…、10年前にギネスに載った年には観光客の数が前年の3倍に膨れ上がった…、なんて話も図書館の新聞で読んだことがある。

 僕がこの街に来たきっかけは父さんの仕事の都合だ。父さんは商社に努めているサラリーマンで、2年前に昇進が決まり、世界中を飛び回って仕事をすることになった。まだ幼い僕を1人家に残すことを心配した父さんは、この街に住む祖父の家に預けて、今に至る。

 母さんはいない…、写真の中でしか見たことはない。僕が生まれた1ヶ月後に交通事故に巻き込まれて命を落としたからだ。

 父はよく、

「あんなに美しい人を見たことがない。そんな母さんに似て生まれてきたお前が誇らしい。」

って言っていた。ふと窓柄に僕の顔にが写る。色白の肌で、紺色の髪はろくに手入れもしていないのに綺麗さを保っている。最初はそれが亡き母との継りを感じられてとても嬉しかった。けれど学校に行ってからそれはコンプレックスに変わっていった…。


「おい女顔!なんでスカートじゃなくてズボンを履いて学校に来てんだよ?校則違反だろうが!」


「だよなぁ〜!こいつ男のくせに背も小さいし力も弱ぇ、おまけに目の大きい女顔ときた!スカート履かねぇのは逆に不自然だぜ!」


 その日の放課後、僕は学校の悪ガキに空き教室に連れてかれた。今日こそはと思い、見つからないように帰ろうと思ったが仲間が後ろからつけていたらしい。逆らったら最後…、何をされるか分かったもんじゃないから大人しく従う他ない。僕は渋々教室のドアを開けたら奴らのボスが手下を侍らせながら机の上で胡座をかいていて、僕を見るなりニヤニヤと笑いながらこんな言葉を投げつけてくる。

 これが僕の日常だ。転校してから奴らに目を付けられ、ことあるごとに僕を呼び出しては絡んでくる…。でも、彼らの言っていることは事実だから言い返せない、そして言い返せないからずっと舐められっぱなしで更に奴らは追い詰めてくる。そんな負の連鎖に僕の自尊心は壊され、この顔は僕のコンプレックスに変わっていった…。


「でよぉ〜、話があるんだけどよぉ〜、あと3万!何とかなんねぇかなぁ〜?」


 悪ガキのボス「マイク・ハワード」は全然悪びれる様子もなく、当然のように頼んでくる…。

 太っていて顔も不細工だが力だけは学校一でこいつが不良たちのトップに君臨するのに時間はかからなかったらしい。おまけに彼の兄貴、「レックス・ハワード」も元裏格闘技のチャンピオンで、街中のチンピラを束ねるボス…、らしい。


「そんなに貰ってどうするんだよ…、そんなお金…、持ってるわけないじゃないか。」


「あ!?生意気なこと言ってんじゃねーよ!最新のゲーム機とソフト買う金に決まってんだろ!?」


「マイク、こいつ力も弱けりゃ頭も弱いらしいぜぇ!?こうやって一発殴んねぇと分かんねぇんだよ!!」


バキッ!


 手下の一人が僕の胸ぐらを掴んでみぞおちに拳を叩きむ。余りの衝撃に僕はカハっと乾いた声を出しながら床に崩れ落ちた。その際、頬が木造の床のささくれにあたり、擦り傷ができてしまった。二重の痛みに苦しむ僕を尻目にマイクは手下を引き連れて出ていく。


「まぁいいや、とにかく明日の夕方までに持ってこいよ?じゃなきゃこれじゃ済まさねぇぞ?あと、この教室も片付けておけよ。」


 彼らが出ていき、ようやく立ち上がれるようになった僕は部屋を見渡してみた。机はピラミッドのように積み上がり、床には菓子の袋やペットボトルが散乱している…。僕が教室を元通りに戻す頃には、すっかり日も暮れていた。


「あら、ルカ君も今帰り?今日も遅いわね。」


「ア、アリスさん…。」


 僕がため息を付きながらバス停に立っていると、突然後ろから声をかけられた。後ろを振り向くと白い制服を着た金髪の少女「アリス・キャロル」が立っていた。

 彼女はいわゆる「お嬢様」ってやつで、父親はこの街の市長であると同時に自動車工場やリゾートホテル等、数々の会社を経営している大金持ちだ。当然、僕とは住む世界が違う。

 そんな彼女と僕が出会ったきっかけは、半年前…、今日みたいに僕がマイクにいじめられ、帰りが遅くなった日だった。アリスさんもその日は送迎用の車が車検に出ていた為、バスを使って帰ろうとバス停にきて、ベンチに腰を掛けてる僕に声を掛けた…。互いの自己紹介が済んだあと早速愚痴を言い合い、すっかり意気投合した僕らはこうやって時々合うようになった。


「君と初めて会ったのもこんな夕暮れの日、だったよね。」


「そう…、ですね。」


「もう、年上だからってそんなに緊張しなくても良いんだよ? …、その傷どうしたの?」


 顔の擦り傷に気がついた彼女はバッグから絆創膏を取り出し、僕の頬につける。家が大金持ちだけど、それを鼻に掛けるようなことはせず、こんな僕でも気遣ってくれる…、そんな優しい心を体現したかのように、容姿も美しく、艷やかな金髪も相まってまるでお人形さんのようだ。

 因みに歳は僕が12歳、アリスさんが15歳だ。


「先生や親御さんには相談したの?顔にキズもできてるし、服も汚れてるじゃない…。」


「言ったって無駄だよ…。それに告げ口がバレたら何をされるかわかったもんじゃないし…。」


「だったら…、私が味方するよ?私が頼めばこの街の警察だって動かせるんだから!そうすりゃイジメっ子達も一網打尽、でしょ?」


「そ、そこまでしなくても大丈夫です…。」


 バスに揺られながら、僕らは他愛もない会話を繰り広げていた。一部物騒な発言もあったけど…。でもアリスさんの誰とでも別け隔てなく接する所は1番の魅力…、だと思う。彼女の容姿以上に僕は心の在り方を美しく思い、その思いはいつしか淡い恋心に変わっていった。


「ねぇ、ところであの森の向こうには何があると思う?」


「へ?なんですか?」


 ボーッとしていた僕は突然アリスさんに話を振られ、びっくりした。慌てて平静を装い質問に答える。


「…、分かりません。そもそも行ったこともないので…。」


「そうよね。10年前にこの森に来た人達が相次いで行方不明になって依頼、警察が立入禁止の立て看板建てちゃったもんねぇ。」


 行方不明者…、物騒な響きだが、実はこの町ではこういった不可解なことがよくあるそうだ。30年前には全身の血が抜かれた変死体が発見されたという事件があったが、犯人は依然として行方不明…。

そんな事件が何度も起こるもんだから一時期は観光客が減るんじゃないかと市役所の人達は頭を抱えたそうだが、其の事件を嗅ぎつけたオカルトマニア達も多く訪れる様になり、観光による収益はむしろ増加したらしい。  


そういえば、つい先月も郊外の住宅が強盗に襲われて、澄んでいた夫婦二人がバラバラ死体になって発見されたってニュースがあった。けれど、犯行に使われた刃物が見つからずに捜査は難航しているんだっけ。そう考えると、かなり物騒だなこの街…。そんなことを考えている僕をよそにアリスさんは話を続けた。


「パパが言うには、森の奥には200年前にある貴族が建てたお城があるんですって。でもそれ以上のことは記録に残ってないから、どんな人たちが暮らしていたのか…、その人達はどうなったのか…、謎は多いんだけどね。」


 そうなんですか…、と僕は返しながらアリスさんの指差す方向に目を向けた。町外れに広がる広大な森は鬱蒼としており、木々の間から見える空間は常に暗く、まるで終わらない夜が続いているかのような不気味さを感じた。


 ふとバスが途中で停まり、後部のドアが開いた。誰か入ってくるようだ。


「あぁ〜、寒いなぁ。この時期のこの街はよく冷えるから寒がりの俺にはきちぃぜ。」


 そうぼやきながら一人の男の人が入ってきた。黒いテンガロンハットを被り、黒いコートを羽織り、おまけに黒いアタッシュケースと全身黒尽くめ…。はっきり言って怪しさ満点の人だ。年齢は20歳くらいだろうか…?カレはウェーブの掛かった金髪の前髪を弄りながらタバコに火を点ける。


(何?あの怪しい人…、おまけに社内は禁煙なのに煙草吸ってるわよ、有り得ない!注意しなきゃ!)

(アリスさん落ち着いて下さい、もしかしたらギャングとかヤバい人かもしれませんし、関わったら危ないですよ!)


 僕らは小声でやり取りしながら、黒コートの男をじっと見ていた。彼は相変わらずボヤきながらスマホを弄っている。


「ったく、お偉方も人遣いが荒いんだよ。まぁその分稼げっから割り切るしかねえけどな。」


 黒コートの男が席に着くと、今度は若い男の人が入ってきた。格好はスーツ姿で、さっきの不審者と比べると余計にまともに見える。


 バスが走りだして10分が経過し…、ついにバスは祖父の家の近所に停まった。僕はアリスさんに別れを告げて降りる。そして僕に続き、スーツの男と黒コートの男が降りた…。こんな不審者と同じ停留所で降りることになるとは…、僕も運が無いらしい。


「さて奴さん、そろそろ人間のふりも疲れたでしょ。そしてそこの坊主!さっさと帰りな。」


 突然声を掛けられた僕はびっくりした。黒コートの人が僕に話しかけたようだ。そしてスーツのヒトにも声をかけたが不可解なワードがあった。


(人間のふりってどういうことだ?)


「なんのことですか?僕はしがない会社員ですよ?明日と早いんで用があるなら手短にお願いします。」


「あぁ、そうかい。」


 黒コートの男はそう言うと、アタッシュケースから何かを取り出し、スーツの人の方へ向ける。僕はそれを見て思わずギョッとした。


(り、リボルバー銃だ!ガンショップでみたことあるけど実際に使われてるのを見るのは始めてだ…!)


 いつの間にかすっかり日は落ちて月が昇っている月明かりに照らされたその銃身は鈍い銀色の輝きを放っている。やっぱりこの人ってギャングか殺し屋だったりするのか…!?


「危ないでしょう?町中でそんなゴツい銃を向けないでくださいよ…?ここで僕を撃ったらあんたは殺人犯だ、もうまともな人生は歩めない。」


「ちげぇよ、俺が今からやんのは害獣駆除だ、1ヶ月前の郊外に住む夫婦を狙った強盗事件…、あれやったのお前だろ?」


 何を馬鹿なことを、と僕とスーツの人は戸惑った。そんな僕らの様子を見て、男は懐から1枚の写真を出した。

 その写真には事件の被害にあった住宅が写っており、玄関の前にはスーツの人の後ろ姿も写り込んでいる。その後ろ姿は目の前のスーツの人のにそっくりで…


「写真の端の日時には、事件が起こる30分前の時刻が刻まれている。写ってる奴の後姿…、服装、背格好、髪型に至るまで…、あんたそっくりだな?」


 その瞬間、銃口を向けられていた男の人の表情が変わった。さっきまでの優しそうな顔と違い、血走った目を見開き、黒コートの人を睨みつけている。


「そうですか、それでは…………………テメェから喰い殺してやラァ!!」


 スーツの人は激昂して口調を荒らげたかと思うと、メキメキという音をたてて身体を変形させていった。上半身は膨張した筋肉で破け、両手の爪はナイフのように鋭く変形する。そして口も耳まで裂け、鋭い牙が次々と生え始めた。最後に全身から灰色の毛が生え始め、さっきまでいた穏やかな人物の面影はもうない。その姿はまるで…


「お、狼男だぁ!!」


「おいガキ!まだいやがったのか!?いいか、ここで見たことは忘れろ!!そんで、家帰って風呂入って寝ろ!!」


ビュンッ


僕とコートの人がこんな問答をしているうちに、狼男は突然跳び上がり、姿を消した。やつはどこだとコート人は探していると、突然後ろから物凄い力で僕の体が何者かに掴まれた。後ろを振り向くと、恐ろしい形相をした狼男が口から涎を垂らしながら僕を睨んでいた。


「まずはこのガキを喰って……腹ごしらえと行くかなぁ!!」


ガブリ


「ッーーーー!!!!」


 首筋に鋭い痛みが走り、僕は声にならない悲鳴を上げる。大量の血が噴水のように流れ、僕の意識はもうろうとしてくる。


「………、そうやって飯食ってるときってのはデケェ隙ができるってもんよ!」


バンッ!!


 そう言うとコートの男は瞬時に弾丸を発射する。弾丸は見事に狼男の眉間を貫いた。怪物が僕を盾にする前に弾丸は発射され、僕は九死に一生を得た。

怪物はその場にうつ伏せになって倒れ、その衝撃で僕の身体も地面に叩きつけられる。


「な、なんで弾丸が俺に効くんだぁ……、この程度の傷………、一瞬で回復するはず……だ………ろ……。」


 虫の息の狼男に向かい、黒コートの男はニヒルに笑いながら答えた。


「これは十字架を溶かして作った銀の弾丸さ。聖なる力が宿った武器で、人狼だろうと容易く仕留めることができるのさ…。」


 「はは、そうか……、おしかったぜ……、けれどそのガキももう手遅れだ……後悔するぜ……。」

 


 狼男は今際にそんな台詞を吐いて息絶えた。コートの男は懐からハンカチを取り出し、僕の首に巻きつける。


「…、大丈夫だ。傷は浅い、これで止血すれば病院まで間に合う。良かったな坊主。」




薄れゆく意識の中、僕は彼の言葉に安心して眠りについた…。このときはまだ、自分がどんなに数奇な運命を辿ることになるのか…、霞ほどにも思わなかった。





 いかがでしたでしょか?昨年の秋に見た「ヴァン・ヘルシング」という映画や「悪魔城ドラキュラ」に影響されて作った作品で、それらの「現代版」をコンセプトにしました。今後も定期的に上げていきたいと思いますので、宜しくお願いします。

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