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中編



       5



「ほら、たっちょん君、見てよこれ」

「あっ、せら、それってさっきの」


 ぼくは、持ち出した例の骨をたっちょん君に自慢した。


「この骨、人間のだと思う? それとも動物の骨かな」

「分かんないけど、人間の骨ということにしておこうよ。だってロマンがあるじゃん」

「だよね。みんなに自慢しようぜ!」



 そして、ぼくたち二人は、あの塚にあったお金を拾わなかったことをさっそく後悔し始めていた。


「それにしても、さっきの場所のお金、ひろえばよかったなー」

「うん。もったいなかった」


 ――という感じでね。


 そんな二人が、思いついてしまったんだなぁ。

 小学生のこどもには無謀な冒険を。



「幽霊坂の逆から、あの塚を目指そう!」



 何度か説明したと思うけど、この市は「米軍基地を中心としたドーナツ型」なんだ。

 フェンスに沿っていけば、逆からでもあの塚にたどり着けるはず――。




 ここで、すこし話が横にそれるけど、ぼくとたっちょん君の住んでいた地区のことも説明しておくね。

 ぼくたち二人の地区は、幽霊坂のある場所から歩いて二、三十分くらいの場所にある、高台のような場所にあった

 この地区が本当に米軍基地とフェンス一枚で接しているような場所でね……。


 ぼくたちの地区には、当時出来たばっかりの公園があったんだけどね。

 その公園でぼくたちこどもが野球やフリスビーをすると、よくフェンスを越えてボールやフリスビーが入ってしまうことがあった。


 ぼくたちこどもの間で、こんな有名なうわさ話があった。



「基地に入ったのを監視のヘリや車に見つかったら機関銃で撃たれる」ってね。


 だから、フェンスを乗り越えるときは命がけだった。



 えっ、フェンス越えたんかい――だって?

 ツッコミありがとう。


 そりゃモチロンだよ。

 この地区のこどもにとって、ボールやフリスビーは超貴重品だったんだ。

 君みたいな裕福な家のこどもとは違うんだよ……。



 そんな恐ろしい噂のある米軍基地のフェンスだけど、中に入りさえしなければいい。

 ぼくとたっちょん君の計画は、大胆に作られていった。

 家にもどってお昼ご飯を食べ終わったら、お昼後の一時に再出発する約束をした。



 この時のぼくらは、この計画を死ぬほど後悔することになるとは、つゆほども思わなかったのさ。





       6



 幽霊坂から戻ってきたぼくは、かなりいそいでお昼ご飯をかきこみ、たっちょん君の家へと向かった。


「たっちょん君、あーそびーましょー」


 大きな声で呼びかけて、たっちょん君を待っていると、なぜか一学年下の妹のユーリちゃんを連れている。


「ごめん、せら。ついていきたいってしょうがないんだ。いっしょでいいかな?」

「ユーリもいきたい! ねえ、いいでしょ?」


 なんということだ。


「ユーリちゃん。この冒険は女の子のユーリちゃんにはキビシイと思うんだ」

「なによ、せらちゃんだって女の子じゃない」


 ぐうの音も出ない。

 見事に論破された、いや自爆してしまった。

 ぼくも一応女子だったのを忘れていたんだ……。



 仕方なくユーリちゃんを連れていくことにしたぼくたちは、こっち側の入口がある公園の高台に向かう。

 そして公園の高台についたときには、なぜか近所の子があと一人仲間として増えていた――。


 新しい仲間はユーリちゃんのさらに一つ下のケータ。


 ぼくとたっちょん君が小学四年生。

 ユーリちゃんが三年生。

 ケータが二年生。

 この四人が今回の探検隊のメンバーというワケだ。


 公園の高台とフェンスの間の細道に立って、これからの冒険についてまだ何も知らないユーリちゃんとケータに説明する。



 目的地は幽霊坂近くの貝塚のような塚であること。


 その目的地には骨やお金があるかもしれないこと。


「そして、これが、その骨です!」

「うわー、すごい!」

「もしかして、人間の骨?」

「そうだよ、人間の骨だ」

「「すげー!」」


 常識的に考えれば人間の骨なワケはないんだけど、年少組が盛り上がっているのでそういうことにしておいた。


「人間の骨だけでなく、お金もたくさん落ちていた」

「「すごい!」」


 この冒険が終わったとき、もしかしたら大金持ちになっているかもしれない。

 ぼくたちは期待に胸を高鳴らせて、米軍基地のフェンス沿いに幽霊坂を目指して出発したのさ。





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