表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

前編



       1



    みーんみんみんみんみんみん


   みーんみんみんみんみんみん



 うるさいセミの鳴き声。

 カラッとした青空。


 夜は虫の鳴き声。

 花火の上がる音。


 夏っていいよね。



 やっ。今日も暑いね、すっかり夏だねー!


 ……えっ、今日こそ例の冒険話を聞かせてくれって?


 えっと、前にチラっと話した「人間の骨を見つけた話」のことかな。

 うんうん、あれはけっこうな大冒険だったなー。


 その話、聞きたい?

 うーん……。


 冷たいコーラおごってくれたら話してあげてもいいよ。

 なんか、のど渇いたし。



 あ、悪いね。


   ぷしゅっ


 うひーっ、しゅわしゅわ炭酸、うめーっ。



 それじゃあ、「人間の骨を見つけた小学生のあたし」の話を聞いてくれ。

 はじまり、はじまりー。



   ぱちぱちぱち。



 はい、拍手ありがと。

 これは、まだあたしが自分のことを「ぼく」と言っていた小学四年生の、夏のころの話。




       2



 あたし――――いや、むかしを思い出して「ぼく」でいこう。


 ぼくの住んでいた町は(オー)県の(ジー)市というところで、G市の真ん中には、こーんな風にド真ん中に大きな米軍基地があってね。

 だから、市の反対側に行くには、まっすぐ行けない。

 反対側に行くには、基地を回り込む様なルートをとらないといけないんだ。

 つまり、右回りでいくか左回りでいくかの2つの選択肢があるんだ。

 すこし面白い話だと思わないかい?


 ぼくは、この自分が住んでいる市を、こども心に「ドーナツみたいだな」と思っていた。



 あれは、ぼくが小学校四年生の夏休みにある登校日の日のことだったと思う。

 ぼくは当時一番の友達の「たっちょん君」と学校帰りに、ちょっとした冒険をする約束をしていたのさ。





       3



 たっちょん君とぼくは、同じ地区に住む近所の幼なじみだった。

 ぼくたちの住んでいる地区は、ぼくたちが通っている小学校から、一番離れたところにあってね。

 学校帰りはほとんどまっすぐ家に帰ることはなかった。

 毎日寄り道ばっかりしていたよ。


 そして、ぼくたち二人は親友と呼べるほど仲良くって、お互いを「せら」「たっちょん君」と呼び合う関係だった。

 ちなみに、たっちょん君は男の子だけど、その頃はぼくも男の子みたいな感じだった。



 それで、この日のたっちょん君との冒険っていうのが、「幽霊坂」と呼ばれている、ちょっと怖い坂の冒険だった。

 この場所は、ぼくの地元ではけっこう有名な霊所でね……。


「この坂道付近は有名な霊能者たちの家が集まっている」

「坂道に近づいたら呪われる」

「頭が痛くなる」

「死ぬ」


 そんな噂で超有名な坂で、ぼくたちの小学校では、誰ひとり近づかないような坂道だったんだ。



 だけど、一人だけ、その坂道付近に住んでいる同級生を見つけてね。

 話を聞いてみたら、その子「平気」っていうし、幽霊坂も案内してくれるっていうからさ。

 じゃーってんで、案内をその子にたのんで、おともに一番仲のいいたっちょん君を誘ったワケ。



 それでやってきました幽霊坂。

 実際に目の前にして、ぼくとたっちょん君は、かなり腰が引けてしまった。


「ふんいきヤバいね」

「うん。なんか、頭がいたくなってきた気がする」

「まだ一歩も登ってないんだけど……」

「どうする? 呪われて死んじゃうかも知れないよ……」



 でもね。

 ぼくたちの腰は確かに引けてはいたんだけど、やっぱりどうして、同時に無謀な小学生でもあったんだ。



「……たっちょん君、行くよ」


 案内役の子もやってきたところで、ぼくたちはとうとう幽霊坂を登り始めた。

 案内役の子によると、このあたりに霊能者が多く住んでいるという噂は本当だったみたい。


 そしてぼくたちは、とうとう幽霊坂の最終地点にたどり着いた。



 いつの間にか、頭痛は治まっていた。

 目の前には米軍基地のフェンスがそびえ立っていて。

 フェンスの向こうは米軍基地があった。



 ――この市の中心には、どこに行っても分かりやすい「行き止まり」があるんだ。



 幽霊坂のはしっこまで来てみれば、結局、ただの行き止まりだった。

 フェンスの両脇には南国特有のジャングルになっている、面白くもないただの森が広がっていた。



「じゃあ、かえろうか」


 そうたっちょん君にいって帰りかけたその時。

 フェンスに向かって右側に小道があるのをぼくは発見した。


 その小道のことは、案内の子に聞いても「知らない」っていうんだ。

 もう話の結末はわかっていると思うけど、ぼくたち三人は、その小道に入ることにしたのさ。





       4



 ぼくたち三人は、フェンスにそって続いている小道を進んでいった。

 その小道はまったく舗装されていない、獣道のような道だった。


 するとある地点で、右に曲がったかと思うと、急に道が広くなった。

 三人で並べるくらいの感じだ。


 それで右の方――つまり「森の中の方」に道は続いている。

 ぼくたちはもちろんその先にも進んでいく……。



 更に右に曲がると、そこはなんだか広場みたいな感じで、いきどまりになっていた。

 そして、いちばん奥に塚みたいなものを発見する。



「なんだろここ?」



 慎重に塚の中をのぞいていくと、何やら貝がらみたいなのがたくさん落ちている。


(もしかして、社会の授業でならった貝塚ってやつかな)


 そんなことをぼくは考えていた。

 そして「――あれ?」何か光る物があるのを発見する。


 それは百円玉だった。

 他にもお金がたくさん落ちている。

 お札のお金も見えた。


「すごい、お金だ」


 興奮しつつも、そのお金と混じって、やけに白い石が落ちているのを発見する。


「何だろう、コレ……?」


 と拾い上げてみると、何かの骨みたいだ……。




「何の骨かな?」

「え、それってもしかして、人間の骨だったりして」

「うわっ、やっべーじゃん」

「バカ、人間の骨なんか落ちてないでしょ。動物の骨じゃない?」



 そんなことを言い合いながら、すっかり怖気ついたぼくたち三人は、すぐにその場所を後にした。

 だけどぼくは、その見つけた骨をしっかり半ズボンのポケットに隠して持ち帰ったのさ。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ