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妖怪マニアの転生ギルド生活  作者: 音喜多子平
第一章 魔法学校への入学から卒業までの生活
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第五話

入学テストにいい思い出がない。


 一年後。


 俺とヤーリンは晴れて『ヤウェンチカ大学校』の第八区初等部に入学する運びとなった。


 大仰な名前の学校だが、特別な何かがある訳ではない。住んでいる地区に割り振られている義務教育的に通うだけの学校に過ぎない。


 そもそも、ヱデンキアにある学校の九割は、この『ヤウェンチカ大学校』というギルドの姉妹校であることがほとんどなのだ。


 ヱデンキアには大きく分けて十個のギルドが存在おり、社会の裏表を問わず、日々ヱデンキアを統治すべく各ギルドの覇権争いが繰り広げられているらしい。その隔たりの歴史は深い。が、今のところ各ギルドの力が均衡しているので、小競り合いなどは日常的に発生するものの結果としてヱデンキアの平和な社会構築に至っている。


 他ならぬ俺達がこれから通う『ヤウェンチカ大学校』も、ヱデンキアを代表する十のギルドの一つである。


 俺とヤーリンの両親が現在も所属している所縁の深いギルドであり、ヱデンキア社会に「教育」という観点で多大に貢献をしているギルドだ。ヱデンキアの人口の実に九割の種族たちが、各地に点在する『ヤウェンチカ大学校』の関係機関のいずれかに通って教育を受ける。他のギルドの構成員であっても元を辿って行くと同窓であった、何て事は日常茶飯事で起こるみたいで、ヱデンキアで生活するうえで最も影響力を持っているギルドと考える者も少なくない。


 事実、ここでの成績や学歴は他のギルドであっても一つの指標になっていると聞いた。


 ギルド間で一番顔が利くという事もあり、いつしか教育のみならず役所的な業務を担当する部署も設立している。


 他にも別のギルドと一線を画く点と言えば、ヱデンキアの歴史保護にも尽力しているところだろうか。尤も教育を念頭に置いているギルドなのだから、流れとしては当然かもしれない。


 ・・・だが。


 中には黒い噂もある。


 長年の教育活動の副産物として得られたメンタルケア能力を逆手に取り、洗脳やブレインコントロールを行う魔術師や、研究に熱を入れすぎるあまり非人道的な人体実験に手を貸す研究員がいるなどという噂話がそれだ。


 まあ、アレだ。どの組織にも勝手に出来上がってしまう、よくある都市伝説や七不思議のようなものだ。人が集まれば、あることないこと風潮する輩はどの世界にも存在するのだろう。


 それにそんな黒い話は専らギルドの上層の話だ。末端の…それも初等部の学校にまでそんな物騒なことを考えている奴はいない・・・・・・いないよな?


 ◇


 登校初日。


 俺は母に、ヤーリンは仕事を休んだユアンさんと母親に見送られて、一路学校を目指した。


 ヱデンキアでは入学式のようなセレモニーはないらしい。初日にいきなり登校して、クラスメイトと顔を合わせることになる。当然、親が付き添いに来ることもない。


「何だかドキドキしてきちゃった」


 ヤーリンがそう呟いた。でも気持ちは分かる。


普段遊び慣れた町だが、いつもとは違った風景に見える。前世で小学校に入学した時の記憶なんてほとんど・・・いや、全く残っていないから新鮮だ。


 学校に近づくにつれ、同じように緊張の面持ちの新入生やら恐らくは上級生らしい子供らの数が増えてきた。


 クラス分けは事前の案内で知らされていたので、真っすぐと教室に向かう。ユアンさんの言う通り、俺とヤーリンは同じクラスだったので、ちょっとした安心感がある。やっぱり新しいコミュニティに入るのはいくつになっても緊張する。今生はまだ6歳だけどね。


 流石に今日は授業のようなものはないようだ。


 一人一人自己紹介をして、校内を案内するオリエンテーションのようなもので午前中の時間割は終わった。


 ここだって所謂魔法を教える学校なのだから、喋る帽子を被らされたり、使い魔を召喚する儀式をさせられたり、自分の魔法の属性を調べるために石に魔力を込めたり、もしくは攻撃魔法を的に当てて各個の実力を計るような事をさせられるのかと期待と焦燥に心が躍っていたが、別にそんな事は起こらなかった。


 とは言っても、クラスの内情はこれでもかとファンタジー感に溢れている。まさかクラスで「人間」が俺だけとは思わなかった。


 昼食を食べ終わると、初日という事もあってか明日からの予定を軽く説明されただけで下校となった。


「ごめん。帰る前にトイレ行っていい?」


「うん。教室で待ってるから」


 ヤーリンはそう言って、まだ残っているクラスメイトの輪の中に入って行った。



読んでいただきありがとうございます。


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