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妖怪マニアの転生ギルド生活  作者: 音喜多子平
第二章 ウィアード対策室発足までの生活
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第二十一話

何かで売れないものですかね


 全員がプレートアーマーやチェーンメイルに身を包んだ騎士のような出で立ちだ。それを着ている種族こそ、人間、天使、ゴブリンなどとバラバラだが、荒々しい雰囲気と鎧の色彩が赤と白で統一されていることが、彼らに一体感を与えている。


 そして彼らのリーダーと思しき、蜥蜴人(リザードマン)がこちらを鋭く睨みつけながら近づいてきた。俺の姿は映っているだろうが眼中にはなく、どうやらサーシャさんに用があるらしい。


「騒々しい」

「おい、何を勝手に仕切っていやがる」

「極めて語弊のある発言ですね。今日催されるウィアード対策室の発足を恙なく執り行う為の準備を、我々サモン議会が自己犠牲の精神で買って出たまでのことです」

「発足準備?」


 蜥蜴人は鼻で笑うと、はき捨てるように続けた。


「サモン議会の新しい会議所を作ってるのかと思ったぜ。とにかく鬱陶しい数の人員配置と建物の防護魔法措置をすぐにやめろ」

「その意見は容認できません。人員配備は他のギルドとの兼ね合いがある点は認めますが、防護魔法措置は必要だと判断しています」

「ドア一つ開けるのに解除キーが必須になる仕様が必要だと? ウィアードが出現した時にそんなちんたらした行動ができると思っているのか?」

「外敵の侵入を防ぎ、情報漏えいのリスクを減らすのは一機関として当然の事です」

「んなもん、一部の部屋だけでいいだろう。有事の際に初めに手に握るのが武器でなくドアの鍵じゃ、俺達『ナゴルデム団』の名折れだっつってんだよ」


 二人の口論は徐々にエスカレートしていき、蜥蜴人はとうとう腰にさしていた剣を抜いた。どう考えても恐喝だろ。だが、サーシャさんは切っ先を突き付けられようとも、顔色一つ変えずあくまでも冷淡な弁舌を崩さない。


「武器を収めなさい。今日のウィアード対策室発足は急務なのです。あなたを逮捕する手間さえ惜しい」

「逮捕だ? やってみろよ」


 その言葉を合図にしたように、後ろで控えていた『ナゴルデム団』の全員が何かしらの武器を構えた。


「ちょっと・・・」


 俺は思わず仲裁に動いていた。とは言え、何ができる訳ではないのだが。


 だが、結果として俺の仲裁などは必要なかった。


 突如として、先程の口論が可愛く見える程の爆発音がこの地域一帯に響き渡ったからだ。


「今度はなんだ?」


 その場の全員がどよめき、誰に宛てた訳ではなく声を出した。『ナゴルデム団』は素早く武器を収め、廊下へと出て行く。


 サーシャさんもそれを追いかけて、二階からエントランスの様子を伺うと、すぐに『サモン議会』の誰かが大慌てで建物の中に入ってきた。上の階にいたサーシャさんの事が目に入ると、息が切れているのも忘れて高い声を出す。


「ほ、報告いたします」

「何事ですか?」

「近隣の建造物が爆発と共に崩落する事件が発生。原因が不明であることから、恐らく『ランプラー組』の仕業ではないかと」

「こんな時に・・・」


『サモン議会』の報告を聞いて、まず行動を起こしたのは『ナゴルデム団』だった。蜥蜴人は柵を乗り越えて一階に飛び降りた。そしてそのまま駆け出すと、二階に残された連中には目もくれず、命令だけを繰り出す。


「すぐに現場に向かえ。人命救助を最優先に行動しろ」

「了解!」


『ナゴルデム団』はまるで戦争にでも赴くかのように鬨の声を出すと、乱暴に走り始めた。その地鳴りにも似た喧騒が収まると、サーシャさんは同じく号令を飛ばす。それは鐘の音と違わんばかりに、凛と響き渡る。


「サモン議会第七八番班員全員に命じます。進行中の作業を一旦中止し現場に向かいなさい。人命救助を優先し、原因の特定と解明を」

「了解しました」


 聞くが早いか『サモン議会』の面々が続々と出動していく。『ナゴルデム団』に比べれば余程静かだった。サーシャさんは蜥蜴人と同じように柵を飛び越えたが、下に着地することはなかった。すぐに空中で背中の翼を広げ、開きっぱなしだった正面の大窓から外へと羽ばたいていく。



読んでいただきありがとうございます。


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