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過去人  作者: 富士宮博隆
1/1

カコビト

あなたにはやり直したい過去はありますか?人間誰しも一つぐらい戻りたい過去があるものでしょう。ただ、過去に戻る事など夢のまた夢のお話で、戻りたくても戻れない。そこには後悔と罪悪感しか残らないもの…。ただ、もし一度だけ戻りたい過去に戻る事ができてやり直せるチャンスがあったら、あなたならどうしますか?これは過去に戻りたいと強く願う人達とその人達を過去に戻せる不思議な力を持つ少年の物語である。




 人は何故過ぎた事をいつまでも引きずったりするのだろう?よく耳にする言葉「昔に戻りたい」この言葉を聞いていつも僕は不思議に思う何で昔に戻りたいのか。戻ってどうしたいのか。僕は知っている過去に戻ったとしても何も変わらない事、過去をやり直そうとした人達はみんなこういうんだ

   「過去になんか戻らなければ良かった…」

僕はある日その力に目覚めてしまった。いつもと変わらない日、いつものように朝目覚めて、ご飯を食べて、学校に行く準備をして学校に行く。そんな変哲もない誰もが送っているような日常、その日あの時担任の先生が言った一言によって僕は自分に宿った力をしることになる。


 「みんな今日もおはよう!」 いつもこの人元気なんだよな、この人は数学の小坂美穂先生だ、小坂先生は今年転任したばかりの先生でそのもち前の明るさと生徒からも親しみやすい存在であっという間に生徒からの人気者になっていた。生徒からは「小坂先生」と呼ばれていて特定の男子からは「美穂ちゃん」なんて呼ばれていたりもしていた。ただ、人気者の先生だったが僕としてはうるさいだけの存在でしかなくどちらかと言うと苦手な方だ。そんな先生が急に僕らに言った。 

 「今日は将来の夢を聞いていきたいと思います」

 一時限目の一番最初にそれも突然言われたのでクラスの皆少しおどろいた様子だった。

 「小坂先生数学の時間じゃないの?」一人の女子生徒が言うと先生はにこりと微笑んででこう言った。

 「実は今日甥っ子がセンター試験前で試験会場が近いって事でうちに来るんだけどその時みんなの将来な夢ってもう決まっていたりしてるのかなって先生思ちゃって、君たちも来年は高校受験でしょ?せっかくみんなとも仲良くなったから聞いときたいなって思ってね」

なんだろうどこか切なさを感じるのは気のせいだろうか。なぜか先生の言葉にそう感じてしまった。僕がそう思っている中クラスからは色んな言葉が飛び交っていた。

 「夢とかまだわかんねーよ」

 「公務員になりたいです」

 「いきたい高校はあるけどまだ将来のことまでは決めてないかな」

今思えば当時中学生の僕たちにこの質問はあまりにも難しい話で社会も知らない十代には将来なんて想像もつかないものだったのかもしれない。そんな中先生いつものようににっこりと微笑みながらクラスみんなの飛び交う答えに耳を傾けていた。そして飛び交っていた声が段々と少なくなり静かになった時先生は言った。「みんなの今考えている事、将来の夢聞かしてくれてありがとう。先生がみんなのと同じぐらいの歳の頃はまだ夢もなくて将来の夢が会った子がとても羨ましかったって事今でも覚えているな、だから今夢とかどうしたらいいか分からなくても焦らなくてもいいし君たちの歳ならそれぐらい当たり前だよ。だからゆっくり自分が何をしたいのか見つけていってね。でも後悔だけはしないようにいまは君たちは学生なんだから学生生活楽しみなよ」

先生からの僕らに対するメッセージ、なんなんだ、また感じるどこか残る切ない感覚。と同時に今度は一人の少女の姿が脳裏に浮かんだ。そして少女が脳裏でこう訴えてくる。

 「誰か助けて…誰か私を助けてよ…」

これは一体何なんだ。不思議な感覚に動揺が隠せなかった。体全身から汗が止まらない。それぐらい脳裏で浮かんだ少女が現実的で少女の声が頭から離れないのだ。そんな中クラスのムードメーカー的立場にいる男子生徒が先生に言った。「美穂ちゃんは昔後悔してる事とかあるんですか」 先生は笑顔でこう言った。「うん、ありますよ。先生だって過去に戻ってやり直したい事たくさんありますよ…。」

先生は何か思い出したのか少し落ち込んだ様子で答えた

  …ならば選べ一番に戻りたい過去を…

また聞こえたでも今度は違う声だ。でも何だろう聞き覚えのある声。何でみんな僕を見てるんだろう

 「だったら中学生の頃に戻して」 また別の少女の声が脳裏に聞こえる

  …それがお前の望む過去であるのなら…

だから何なんだよこれは

 「…君、…君、どうしたの大丈夫?」 先生が僕の名前を呼んでる、みんなもずっと僕を見ている。聞き覚えのある声、どこかで聞いたことある声

  …小坂美穂、お前の望み聞き入れた…

あぁ分かったよ、聞いたことあるこの声間違えない僕の声だ。何で僕は急にこんなこと言っているんだ?だめだ意識が飛んでいくどうしてしまったんだろう。僕はどうなるんだ。意識が失いかけた時また少女の声が聞こえた。

「ありがとう…」

******

キーンコーンカーンコーン♪キーンコーンカーンコーン♪

 私は小坂美穂、今は地元の中学に通う学生です。私には夢があります。それは看護士になる夢です。小さい頃母が入院していて毎日のようのにお見舞いに通っていた病院、そこでいつも見ていた看護士さんに憧れてその頃から看護しになりたいと思っていました。母はその後亡くなってしまい父も仕事の関係でなかなか家に帰って来ることがなく今は妹と祖母の家で暮らしています。

 「美穂〜私達もう中二だしさ、そろそろどこの高校行くか決めた?」 隣の席で一番仲の良い咲ちゃんがそう聞いてきた。

 「うん、看護科のある高校行くつもりだよ」 私がそう伝えると咲は「美穂はすごいなぁ」ってそう言ってくれた。昔からの夢そのためにも勉強はずっと頑張ってきたし、少し気が早いのかもしれないけど看護士の本なんかも買ったりして本を読んだりして自分なりに勉強もしていた。私が看護士になりたいという夢はクラスのみんなも知っている事で実は咲も知っているのだけど咲自身まだ進路を決めかねているのでこうして毎日私に進路をどうするのか聞いて自分の焦りを少しでも和らげているのだと前私に教えてくれた。逆に焦らないのかと聞いてみたのだがそれはなぜか焦らないみたいで逆に良い感じにストレス解消になっているみたいだ。咲曰く、「私ってバカじゃん?だから人と話ている方がストレス解消するてきな?それに美穂が看護士になりたいって言ってる時の顔私好きだもん。」とても嬉しかった。咲も一緒に頑張ろうと伝えると咲はいつもニコッと微笑んでくれた。私もいつもニコニコして頬えんでくれる咲が大好きだ。中学に入学した頃は私は人見知りがあったのとあまり人との会話が得意では無く一人でいることが多かったのだがそんな私に明るく話しかけてくれたのが咲だった。そこから咲のお陰でクラスのみんなと仲良くなれて今では人との会話にも苦手意識を感じなくなっていた。咲には感謝しかない私にとっての親友だ。 そんなある日、咲が私に「美穂、私にも夢出来たよ」ととびっきりの笑顔で行ってきた。

 「ほんと!何になりたいの?」と私が聞くと咲は

 「学校の先生!」と教えてくれた。

深く聞いてみると今やっている教師モノのドラマを観てすごく感化されたみたいだ。最初は単純で可愛いなと思っていたのだが、やっとできた咲の夢、いつも私の夢を応援してくれる咲に対して私も段々と咲を応援したくなっていた。でも咲の成績はお世辞にも良いとは言えない。でもまだ私達は中学生これから勉強を頑張れば全然無理な夢でもないと思っていた。それに今は中学生だし将来の夢何てこれから何度も変わるもんね?今は咲が自分の夢を見つけられた事を一緒に喜ぼう。

 それから咲とは一緒に勉強会開いたりして二人で夢のために頑張っていたが咲の成績が上がる事はなかった…

「美穂ごめんね。せっかく美穂に勉強教えて貰っているのに私全然成績あげれなくて」 咲はかなり落ち込んでいる様子でした。「大丈夫だよ!これからも一緒に頑張っていこう!咲ならきっと大丈夫だよ」わたしがそう言っても咲の落ち込んでいる顔が笑顔に戻ることはなかった。

後日、咲は塾に行き始めた。親には初めて反対されていたみたいだが咲の真剣さが伝わったみたいで塾に通う事を許してくれたらしい。

「美穂、私本気で先生目指すから」 こんな咲初めて見たって言うぐらいの咲の表情に私はびっくりしてしまい言葉を返せなかったが心の中で「咲、頑張れ」と言ってあげた。 それから咲は他の友達からの遊びの誘いを断ったりして塾に通うようになっていた。私もどこか寂しかったけれど頑張っている咲に対してこの想いを伝える事は出来なかった。ただいつからだろう、あんなに皆んなから囲まれていた咲にもう誰一人として咲の周りにはいない。

 「咲…笑ってよ、いつもニコニコしている咲に戻ってよ。勉強が大変なのも、咲が努力しているのもわかるけど今の咲なんだか近寄りがたいよ」 私はつい思っていた事を咲に伝えてしまった。でも、本当に寂しいんだ。これで少しは前みたいな関係に戻れたのなら嬉しいんだけどな… だけど咲からの返答は私が想像もしていなかった言葉だった。

 「は?あんた私をバカにしてんの、良いよね頭良い人はお気楽にやっていけるんだから。私は先生に本気でなりたいの、最初は単純な理由だったけれど今は本気でそうなりたいの!なのに何でどいつもこいつも邪魔してくんの意味わかんない。一番の理解者と思っていた美穂にもこんな事言われると思っていなかった。とりあえず次のテストで結果出さないと塾も辞めるっていう条件で今の塾にも通っているからそれまで私に話かけないで」   …とてもショックだった涙が止まらない。私何も知らないで、いつも私を応援してくれてた咲に対した私なんて酷いこと言ってしまたんだろう。とても後悔してしまった。今すぐにでも謝りたい。けど今私にできる事それは次のテストまで咲をみまもること、応援することだけだ。私も咲にそうしてもらっていたように。 そして私はテストが終わるまで咲の事を陰から応援していた。テスト終わってからも咲の表情は昔のニコニコしている表上に戻ることはなくテストの結果が戻ってくるまで私は咲に話しかけるのはやめとく事にした。

 …本当に話かけなくていいのか?…

なんだろう一瞬そんな言葉が頭によぎったけれどこれでいいの、このままでいいんだよね?咲もそれを望んでいるはず。そしてテスト結果の日、テスト結果が貼り出されて担任の先生が「今回のテスト全体的に難しかったのに、咲、お前どうしたんだ。今回のテストお前学年二位だぞ」その瞬間咲は笑顔の表情に戻るかと思ったら大粒の涙を流しながら私の方を見て泣きながらニッコリと微笑んでくれたのだ。おめでとう咲。そして先生が教室を出て私と咲が立って駆け寄ろうとした瞬間だった。 

「きもいから早く消えてくれない?」

私と咲は止まってしまった。そして気づいたクラス全員が冷めた目で咲を見ているのを、どうして皆んなそんな目で咲を見るの?今まで皆んなあんなに咲と仲良かったじゃん。そんな目で見てなかったじゃん。そして一人の子が咲に言った。

 「あんた私らのこと邪魔なんでしょ?あんたが美穂と話してるところ私ら見たんだよね。」

 それは違う咲は…

 「いやまじで失望したは、ていうか俺ら邪魔って俺らからしたらお前が邪魔なんだけど」

そんなこと言わないで…

 「なんか言ったらどうなの?テスト終わるまでとか言ってたじゃん。あんた美穂にもあんなひどいこと言っといて謝まりもしなかったよね。何か言ってみたら?咲」

私はそんなこと望んでいない…

 「ごめん…美穂、皆んなごめん」 どうしてこうなったの咲はただ夢のために勉強頑張っていただけなのに、元はと言えば私が軽率な発言をし咲にしたから。そう伝えようとしたときにはもう遅かった。次から次にと咲に罵声、暴言が吐かれていった。みんなずっと我慢していたらしくあの日みんなで咲に想いを胸に押し殺してでも咲に頑張れと伝えようとしたところあの咲の発言を聞いてしまったらしい。私も何度か誤解だと伝えたが集団である者に一人がどんなに訴えようとしても伝わる事は叶わずあっという間に咲はいじめの対象になってしまった。あの時、テスト終わってから私が先に話かけていれば、テスト返される前に話かけれていればその時あの言葉を思い出した。

 …本当に話かけなくていいのか…

話かけてたらよかったよ。何で話かけてあげれなかったの…

それからというもの咲に対してのいじめはエスカレートしていき咲は学校に来なくなった。

 咲が学校に来なくなってから何度も咲に電話した。でも咲が私の電話に出ることはなく咲が電話に出てくれたのは三ヶ月ぐらい経ったころだった。

 「咲、大丈夫?ごめん私のせいでこんなことになってしまって…」私は泣きながら何度も謝った。すると咲は

 「美穂は何も悪くないよ。悪いのは私…、私がもっと周りをもっとみていていたら、もっと上手くみんなと付き合っていたら。今でもクラスの子からメール来るんだ。消えろとか○ねとか」 信じられなかった。学校ではもう咲の話とか一切出てないのに陰でみんなまだ咲に嫌がらせしていたなんて…。そして咲は泣きながらこう言った。

 「咲…助けてよ。…誰か助けて、誰か私を助けてよ…」 何も言えなかった。私の知っている先はもう居ない明るくていつも笑っている咲はもういなかった。そこから少し話して二人とも落ち着いてもう遅いってことででんわを終わろうとした時「やっぱり私美穂と喋っていると落ち着くよ」嬉しかった。これから少しずつ咲を助けていこうと思った。でも、咲の声を聞くことはもう二度となかった。 翌日咲のお母さんが咲を呼びに部屋に行った時そこには首を吊って自殺している咲が見つかった。

         十年後

「咲、久しぶり、私ね先生になったよ。咲がなるはずだったはずの先生になったんだよ。私にできるか分からないけど先みたいに明るくていつも笑ってて皆んなから好かれるような先生にきっとなってみせるから。天国で見守っててね。」

******

今のはなんだったんだ?先生の記憶?それにしてはなんだかリアルすぎたな

 「起きた?」

そこには先生の姿があった。

 「私どうやら過去に戻っていたみたい。多分過去に戻してくれたのはあなたよね?」

何を言っているのか少し分からなかったがなぜだろう今ならわかる先生は過去に戻っていた。そして先生を過去に戻していたのは僕だ。なんで急にこんなことがおきたのかわからないが先生は過去を変えるその後の未来を変えるチャンスを与えられていた。でも失敗してしまった。そりゃそうだ。未来に行くのであれば記憶はあるだろう。だが過去に戻っても過去の自分に未来の自分の記憶などあるわけがない。こんなもので未来を変えるなど無理ゲーに等しい。

 「何度も何度も願った。過去をやり直したいって、願いが叶っと思ったけど実際に過去に戻ってもそんな甘くはないよね。咲の事忘れたことなんて一日たりともないけれど忘れていた嫌な記憶、あのときに感じていた罪悪感、後悔していたことより一層強くなったわ。」そして先生は最後僕にこう告げた。

 「過去になんか戻らなければよかった」

僕はこの日他人を過去に戻すという不思議な力を授かった。それ以降過去に戻りたいと思ってる人たちを何度か過去に送った。そして、そこからいくつか分かったことがある。

 一、行くことのできる過去は十年以上前であること。

 二、過去の自分には今の自分の記憶はない。ただ、過去から戻ってくるとその時の記憶が嫌でも蘇り、死ぬまで消えることがない。

 三、過去に戻って結果次第死ぬ可能性もある。

 四、自分が過去に戻った事を他人に話すとその者の記憶及び世界中から忘れられた存在になる。

 五、過去に行く代償として、違う記憶を忘れるか、知り合いの誰かに忘れられてしまう。

そしてこの力を授かった僕に分かったことがある。それは自分の名前の記憶がないこと。名前を忘れられた事。これに気づいた時苦労するかと思っていたのだが案外苦労はしていない。ただいつしかこんなふうに呼ばれるようになった、過去に行くことが許された人間その名は過去人と。


最後まで読んで頂いた方がいたのなら幸いです。

まだまだ下手ですがもし読んで頂いて感想をもらえたら嬉しいです。

私にも戻ってやりなおしたい過去がたくさんあります。そんな中この作品を書いてみたいと思い今回思い切って投稿してみました。一人でも喜んでいただいたりしたら嬉しいです。

また続きを書けたら投稿するつもりです。

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