モブとヒロインは同じ考え
はぁ〜。昨日はラノベを朝まで読んじゃったからな。めちゃ眠い。
宏は主人公を学ぶべくラノベを読んだが夢中になりすぎて気づいたら朝だった。
よし、今日は主人公らしく振る舞うぞ。
「行ってきまーす!」
何も返ってこない。宏は悲しい顔をし、家を出た。
ガチャ
それは横の家から聞こえた。
そういえばお隣さん引っ越して来たんだよな。
どんな人だろうかと思い、出てくるのを待つ。
「「あ」」
二人は目が合った、時が止まる。
ん?俺知ってるー。この人知ってるー。
出てきたのは昨日転入してきた西川華恋である。
ガチャ!!
「えちょ、」
華恋はすぐに家に入りドアを閉めた。
えぇー…いや、うん。見間違えかな。もう行こ。
宏は少し早足で学校に向かった。気まづいからだ。
トットットットッ…
よし、行ったわね。
ガチャ。ドアを開けて一歩踏み出す。
やっちゃったぁぁぁぁぁ!絶対嫌われたぁ!最悪!
手と膝を着き頭の中で後悔する。
せめて『あー教科書忘れた』とか『あ、この道に出るんだー。へ〜』とか言っておけば。
この二人が一緒に登校するのは夢のまた夢だ。
華恋は手と膝を払い重い足取りで学校に向かった。
さっき西川さんがウチの横の家から出てきたような…
宏はさっきの出来事が現実なのか現実じゃないのか未だに分かっていない。
それよりも今日は作戦を実行する。これならいけるだろ。
そんな事を考えながらしばらく歩くと横断歩道に知ってる顔の女の子がいた。
「お、香菜じゃん」
そこには友達と登校していた妹の香菜がいた。
「うわ、病原菌だ。2人とも離れて病気になるよ」
妹に菌扱いされた。だが、宏はなんとも感じない。
妹よ。残念だったな。俺には耐性があるんだ。
特殊スキル【菌扱い耐性】だ。
これは宏が小学校の頃。宏は公園に1人で遊びに来た。
その時、その公園には3人の少年がいた。多分身長的に同級生と思われる。
宏は普段はひとり遊びが多いからたまには集団で遊びたくなる。そして宏は勇気をだして声をかけた。
「ねぇ一緒に遊ばない?」すると。
「うわぁ!授業中にうんこ漏らした佐藤宏だ!」
「くっせぇー!」
「うんこマン!うんこマン!」
めちゃくちゃ言われた。だが、屈しず
「お願い遊ぼ」そう言って3人組の1人の肩に触れた。
「うわぁ佐藤菌だ〜!」
「お前こっち来んなよ!佐藤菌つけんな!」
宏に触られた少年が仲間の少年を追いかける。
「はい〜タッチー!感染したー!」
「ちょっとタンマ!てかバリア張ってたからセーフだし!」
「佐藤菌にバリアは効きませーん!」
佐藤菌最強。
「感染したからお前、ひろ死するぞ!」
笑いながら言う。感染したら『ひろ死』するらしい。
「うわ俺ひろ死するのかよー!ダルぅマジ」
「ひろ死エンドな、ひろ死エンド!」
まず間違いなくバッドエンド。
次の日から『ひろ死エンド』『バッドエンド』と変なあだ名を付けられた。2年間その名で呼び続けられ
先生まで点呼の時に言いかけていた。
その経験から得た特殊スキルが【菌扱い耐性】である。
だから佐藤宏という男に菌扱いは効かない。まるでバリアのように。
あーあの時は辛かったな。てかバリア効かないとか佐藤菌強すぎ案件。
そう昔の事を思い出しながら妹に言う
「離れてても感染するからな!なんせバリアすら効かないからな!ハッハッハ〜!」
「自分で言ってて悲しくならないの?」
「なる」
「そう…」
「うん…気をつけてな?」
「え?あ、うん。じゃあ」
ちょっと気まずい空気になった。悲しくなったからこれ以上話す気にはならなかった。普段毒舌な香菜ですらちょっと同情している。
もう黙って歩こ。
宏は学校に着くまでの間、無のまま歩いていた。
また佐藤を見失ったわ。モブすぎよアイツ!
何故かキレられる宏。華恋は駆け足で学校に向かう。
華恋は登校する時は商店街を通る事にしていた。何故なら
「華恋ちゃん、学校頑張ってね!」
「華恋ちゃん朝から偉いね」
「華恋ちゃん、お昼にどうぞ!」
商店街の人達が声をかけてくれてお昼が貰えるからである。それは以前住んでいた地域でも行なっていた。
私、昨日転入してきたばかりなのに安定の情報の速さね。
西川華恋にとってはこれは安定だった。少し怖いとも思うがもう慣れていた。ヒロインとは恐ろしい。
「皆さん、ありがとうございます!行ってきます!」
当然お礼は言う。これも安定だ。
「「「「行ってらっしゃーい!」」」」
一同が応える。
1人暮しの華恋にとってこの言葉は何よりも嬉しい。
ふふ、やっぱりメインヒロインはこうでなくちゃ!
ステップを踏みながら華恋は学校へ向かう。その同中、声をかけられた回数およそ68回。
はぁ登校するだけで過去のトラウマが引きずり出されるなんて…
宏は机に突っ伏しながら思う。
だが、こんな事で凹んでる場合じゃない!今日は作戦実行をするんだ(2回目)
そうその作戦というのは…
【消しゴムを落として拾う時に手が触れちゃう作戦】
1 授業中に消しゴムを落とす。この時重要なのは自分の近くに落としてはいけない。なるべく彼女に近くまた拾いやすい地点に置くことが大切。
2 拾う。この時に『あ、ごめん』これだけでいい。
何故ならその『あ、ごめん』は2つの意味として捉える事が出来る。まず1つ目、拾う時に集中を途切れさせてしまうかもしれない。そして近づく事を事前に知らせるためにも使える。そして2つ目、『あ、ごめん(拾ってくれない?)』として言ってるようにも聞こえる。消しゴムが彼女の近くに落ちれば、まず間違いなく彼女は落ちた消しゴムを拾おうとするだろう。
3 俺は自分で拾おうとする。彼女は拾ってあげようとする。そして手が触れ合う!
これが一連の流れだ。 ふふふ、完璧だ。完璧だぁー!
人の善意につけ込んだ最低な作戦である。
父さん、母さん。俺、俺……男になります!
もう主人公になる、とすら言わなくなった。末期である。
ようやく学校に着いたわ。メインヒロインも楽じゃないわね…
声をかけられたすぎて朝から疲れていたのであった。
でも、今日は佐藤を主人公にするべくちゃんと作戦を考えてきたのよ。感謝なさい佐藤!
その作戦は…
【消しゴムを落として拾う時に手が触れちゃう作戦】
全く考えが同じである。なので作戦内容は省略。
こちらも人の善意につけ込んだ最低な作戦である。
待ってなさい佐藤!全部私に任せてあなたは主人公になってちょうだい。
西川遅いな、早く来ないかな…
朝、佐藤と顔を合わせたしちょっと気まづいわね。
ガラララララ
華恋が教室のドアを開ける。
「おはよう、西川さん」
「おはよう!今日も髪綺麗だね!」
「おはよう西川さん、今日お昼一緒に食べよ!」
教室ですらこんなに話しかけられる。
「みんなおはよう。今日はみんなでお昼食べましょうか」
華恋は笑顔で答える。
あいつら俺の西川さんに軽々しく話しかけやがって!
佐藤は心の中でブチ切れた。
ふん!まぁ今日はこの教室のクソどもの誰より早く西川さんの手を触ってやるもんね〜!ざまぁー!
クソである。性格と目が腐っている以外にも考えも腐っている。
「よしみんな席に着け」
先生が教室に入りみんなに声をかける。
「今日は全員いるな。よし。おはよう」
生徒の点呼をすまし挨拶をする。
「「「「おはようございます!」」」」
一同もしっかり挨拶を返す。
「若々しくていいね〜。春秋を富む若者は。先生なんて昨日から腰が痛いわ、友人に子供が出来たやら、ちっ。気分が悪いな。みんな1日頑張れ!」
「「「「は、はい!」」」」
生徒も朝から先生の舌打ちと愚痴を聞くとは思わず呆気にとられるが笑顔で返事をする。
うわぁ…先生まだ独身なのかよ。草生えるな。
自分が非リアだから自分以外が非リアだと安心する。
そんな佐藤は最悪だ。
あら、先生はまだお相手が見つかってないのね。はっ!
こちらも同様、他人の非リアは鼻で笑う。これがヒロインなんてヒロインが聞いて呆れる。
よし、1時間目は現文だなここで決めてやる!
1時間目は現文ね。丁度いいここで決めるわ!
二人が同時にそう思う。
1時間目の現代文。二人は準備万端だ。いつどっちが作戦を実行してもおかしくない。
時計の針が10になったら落とす。覚悟を決めろ。俺
時計の針が10の時に落とすわ。失敗しちゃダメよ私。
カチッ、カチッ、カチッ、カチッ
時計の針が一定のリズムを刻む。そしてその時が来る。
今だぁぁぁ。行っけけけけぇぇ!
二人が同時に消しゴムを落とした。
「「あ、ごめ……え?」」
お前もかよぉぉぉ!
あなたもなのぉぉぉぉ!
ゴツン!静かな教室に鈍い音が響いた。
二人とも頭をぶつけ倒れた。
「え?西川さん大丈夫!?」
「おい、大丈夫か?おま……誰だ?」
酷、なんで俺だけ覚えられてな……
そこからの記憶が無い。
……知らない天井だ。どこだここ。異世界?
「ふふ、」
以前、自分の部屋でも同じような事を言ってたなと思い出し笑いをする。
「あれ?俺、西川さんとぶつかってそれから…」
恐らくここは保健室だろう。教室で気を失ってしまったのだろうか。
「っ!?」
カーテン越しに人の気配を感じた宏は息を殺した。
「「誰だ!?」」
声が重なった。知ってる声だ。
「あれ、佐藤君じゃない。どうしてここに?」
おー俺名前覚えられてる!やっほーぃ!
と心の中でテンションが上げ上げになる。
「確か現文の時間に何故かぶつかって俺たち気を失っちゃったみたいでさ」
何故かは知ってるのにあえて言わなかった。自分の作戦がバレかねないからだ。
「あーそういえばそんな感じだったと思うわ。ええ。」
こちらもこちらで完全に思い出したのにあえて言わない。否、言えない。
おいおい、待てこの状況やばね?西川と二人きりだぜおい。
まずいわね、こんな事になると思わずなんて言えばいいか分からないわ。てか今二人きりじゃないの。
長い沈黙が続く。こんな空気に耐えかねて宏は口を開ける。
「えっと、その。ごめん。痛かったよな」
謝罪はしっかりとする。相手はメインヒロインだ。当たり前である。
「いいのよ。事故だったんだし。気にしないで」
華恋も宏に続けて謝罪する。
「じゃあ、俺は先に教室に帰るわ」
「そう、なら私も行くわ」
「もういいのか?平気?」
「ええ、もう平気よ。お気遣いどうも」
あれ?こいつってツンデレじゃないの?めちゃお嬢様っぽいけど。
宏が夢で見た華恋は紛れもなくツンデレだったから少々気になった。
佐藤ってもう少し爽やかな感じだったんだけど、ちょっと夢とは違うわね。
華恋が夢で見た宏は爽やかな感じだったので少し意外だった。
ガラララララ
二人は保健室のドアを開け教室に向かう。
でもいっか西川さんと会話出来たし。ナイス俺!俺最高!
まぁ佐藤とお話出来たし上出来ね。さすが私!完璧ね。
二人はまた同じような事を考えながら一言も喋らず教室に帰って行った。二人の仲が深まるのは、まだまだ先のようだ。
佐藤菌恐るべし。苗字が佐藤の方。宏という名の方申し訳ありません。これはフィクションなので御安心を
どんどんアイデアが溢れてきて時間さえあれば書いてる状態です。さて、とうとう二人の作戦が実行され失敗のような成功で終わりましたが次はどうなるのやら。次回をお楽しみにしていただけたら嬉しいです!