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大規模討伐依頼

会議室には既に職員が集まっていた。

上座には会長のマルクが座っている。

「さて、知っての通り大規模討伐依頼(レイドクエスト)だ。今回出現したのは翼竜の群れ。

個体値によってはLv.150を超える物もあるようだ。

 そこで、今回はAランク冒険者を中心に依頼をこなす。場合によってはSランクの冒険者を考えなくてはならないだろう」

いくつか補足をすると個体値とはLvを使って現す物であくまで程度で表すことができる。

Eランクは10~25、Dランクは25~50、Bランクは50~75、Aは75~100、Sランクが100~、という区分だということを把握しておけばいいだろう。

つまりこのレイドクエストがどれだけの規模なのかは大体察しが付く。

Sランク冒険者はあまりの強さに王国が囲う程の実力を持った冒険者のことを指す。

その経歴は平民から貴族、転生者まで様々だ。

多くはSランクを手にした後、王国騎士団のエリート部隊に配属される。

捉え方にもよるがまさに勝ち組の終着点だろう。

「では、編成を紹介する――」

それから援助の残りを確認した後職員の職務をさらに確認、任務開始となった。

「さて、始めますか」

俺は職員に続いてギルド会館の扉をくぐった。

向かうのは城壁だ。

 『魔力強化』で視力を強化し翼竜の数を数える。

「数は300~400ってところか。翼竜の住処を誰かがつつきでもしない限りはここまで総出で襲ってはこないんだがな」

「うわぁ……こんなにたくさんの翼竜を見たのは初めてだよ」

俺は受付嬢の言葉を無視し、『上昇気流(アップドラフト)』を応用して地面に着地する。

冒険者たちは一斉にこちらを向くがすぐにそれぞれの作業に戻った。

地図を広げて交戦地帯を確認する。

なだらかな広い土地が広がっており、どちらかというと翼竜(ワイバーン)の方が有利だ。

やるのであれば土属性の魔法、魔術を使える奴で塹壕を作って攻撃するのが一番手っ取り早いだろう。

今回の作戦はどんなものを提出するんだろうか。

「よし、行くぞ!」

――は?

俺は唖然とした。

お前らまさか何の策もなしに突撃する気か?

これはSランク冒険者が出張るを得ないだろう。

だから俺は止めることにした。

「その声を戦場に響かせろ、《音勢強化(ハウリング)》待った!!!!」

大音響の声に冒険者たちはぴたりと勇み足を止める。

「土属性魔法で塹壕を掘ってください!!!!ワイバーンに掴み攻撃をなるべくさせない様にしてください!!!!」

俺の指示に真っ先に動いたのは最近腕を上げてきた冒険者パーティーだ。

「《岩壁(ロックウォール)》!」

地面を掘り下げて岩の壁を作り、即席の塹壕を作って突撃していく。

「塹壕で地面に潜るってのもありならよぉ……上空で攻撃してもなんも問題はないってことだろぉ!?」

そういってBランクの冒険者が『上昇気流』で翼竜の群れまで突っ込んでいく。

そのまま上空で爆発が起こって数十秒もするとバタバタと翼竜の死体が落ちてきた。

中々派手なことをするな。

賢いとは言えなかったが。

その証拠に空へと飛んでいった冒険者は黒焦げの状態で頭から落下してきた。

Bランクになったからといって頭がよくなるわけでもないらしい。

味方が慌てて回復魔法をかけているがもう死んでいることだろう。

「まったく、レイドバトルの報告書に余計な手間を掛けてほしくないのだが……」

俺はぼやきながら中級魔法を展開する。

「大いなる風よ我に従え、《風槍(ウインドスピア)》」

見えない風が槍を形作り上空の翼竜に飛んでいく。

槍は翼竜の薄い羽根を貫通しバランスを乱す。

そこで耐え切れなくなって落ちてきた翼竜がそのまま滅多打ちにするという作業だ。

塹壕を掘って応戦しているチームも討伐した翼竜を盾にして順調に戦闘を継続している。

しばらくは何事もなく進みそうだ。

俺は降下してくる翼竜に片っ端から魔法をぶつけて少しずつ体力を削り取っていく。

負傷した冒険者はほかの職員や回復役(ヒーラー)が手当てしている。

俺はその手の物は苦手なのでそこら辺は完全に任せっきりだ。

「うあぁぁぁ!」

悲鳴の方向に顔を向けると翼竜の口の中へと消えていく冒険者の姿があった。

「《火柱(フレイムピラー)》」

中級魔法を半分無詠唱で放ち翼竜の頭を爆発させる。

首のないワイバーンに駆け寄って冒険者たちは翼竜の解体を始めた。

「この浄化されし土地を外敵の侵攻より守り給え《魔陣(マギアス・キークロ)》!」

冒険者を救出している部分を中級魔法で守り翼竜の襲撃を防ぐ。

魔法陣の中の冒険者たちは手早く呑み込まれた冒険者を救出すると自ら魔法陣の外へと足を踏み出し、再び攻撃を開始した。

――風が吹く。

戦況は一変された。

「ッ!?」

変化が起きたのはあっという間だった。

俺は反射的に耳をふさいだが、肌が痛くなるほどの衝撃が全身を襲う。

耳をふさいでいなかった冒険者は衝撃と共に卒倒した。

「『王者の咆哮』……!?」

翼竜を統べる個体だけが発することが出来る技だ。

しかし、そんな個体は大規模討伐依頼でもなかなか出てこない。

だからこそ、その異常性を俺は身をもって体感した。

この襲撃はどんだけ大規模なんだ!?

遠くからからゆっくりと羽ばたいてくる大きな影。

それは俺達を絶望させるには十分すぎる物だった。

大風竜(タイフーン・ドラゴン)……」

冒険者の1人がポツリと呟く。

その種族は大風竜(たいふうりゅう)またはタイフーン・ドラゴンと呼ばれる。

翼竜の上位互換であり、その見た目も大きく異なる。

「なぁ……まさか緑か?」

飛んでくる大風竜は緑の羽毛に包まれていた。

間違いない、こいつは神話級災害個体(ネームド)だ。

車椅子の横に付けておいたカバンから急いで図鑑を取り出してページをめくる。

「雷風竜ネヴァン……」

700年程前にその存在を確認された個体だ。

突如としてある王国首都付近の山に現れると半日足らずでその都市を滅ぼし、一週間で王国全土を殲滅したという。

隣国が退治に乗り出した時には既にどこかへ消え、それ以降の確認さされていない。

推定個体値はLv.570。

記録によるとその姿は大風竜でも稀な緑の羽毛に覆われ、黒と金の角を一対づつ生やしている。

残念ながら確認された個体はそれに該当していた。

まだ1キロも距離はありそうなのに既に羽ばたきの音が聞こえる。

これはSランクの冒険者が必要になりそうだ。

俺達はただただ迫ってきた絶望を前に呆然としていた。

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