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09 もしかして、伝わってる?

 9話


 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。





「シーリィタ。どうしたの。」


  慌てることなく、落ち着いた様子の母様が俺に優しく話しかけてきた。


  母様だ。相変わらず美しい。毎日見てるのにね。美人は3日で飽きるってあれは嘘だな。あれ?お客さんが来てたんじゃなかったのか?


  全力で泣いているのも疲れるので、今は半べそになっている俺。


「フフフ。キャンディがシーリィタの一大事というから来たわ。泣き方がおかしいって。御客様なら待たせているわ。この様子なら大丈夫なのかしら?」


  母様の目が少し鋭くなった気がした。


  そうなのか。ごめんね。母様。なんか急にお尻が痛くなったから泣いてただけだよ。今はそんなに痛くないんだ。


  キャンディにお尻を丁寧に綺麗にしてもらい、母様を呼んでもらっている間に痛みは引いた。少しムズムズするが大丈夫だろう。


  呪文作成のデメリットで痔になりました。なんて、伝わらないはずだ。条件がそうなのだから。そもそも、赤ちゃんなので喋れない。


「キャンディ。シーリィタはお尻が痛いそうですわ。何かしましたか?」


  鋭い視線と少し低い声の母親。


「い、いいえ。ツンディナ様。オシメを交換しただけです。」


  キャンディが動揺しながら答えた。


  キャンディがするなんて珍しいな。確かに少し怖いけど。


「まぁ、そうでしょうね。キャンディがシーリィタを雑に扱うはずがないわ。ごめんなさいね。キャンディ。」


「謝らないで下さい。ツンディナ様。それで、なぜ、お尻が痛いのですか?」


  心配そうな声でキャンディは母様に聞いた。


「シーリィタ。どうしてお尻が痛いの?」


  目が鋭いままだが、俺に優しく話しかけてきた母親。


  母様は怒ってはいないはずだが、なんか怖い。別にやましいことはしていない。なんで俺は怒られるのを誤魔化してる子供みたいになってるんだ?

  呪文作成しただけだ。デメリットで痔になっただけだし。

  …なんで、母親は俺がお尻が痛いって理解したんだ?お尻ってよりも、穴の方だけどね!


  …もしかして、伝わってる?


  そんなことを思っていると、自分の額を押さえて、呆れている母様がいた。


「シーリィタ!呪文作成は危険だと今日言ったばかりでしょ!」


  突然、大きな声で怒鳴られた。キャンディもいきなりだったのでビックリしている。


  ひぃ。ごめんなさい。母様。呪文作成してみたかったんだ。呪文なんて憧れるでしょ?


「してみたかった…って!あなたは子供ですか!」


「お、落ち着いてください。ツンディナ様。シーリィタ様はツンディナ様の子供です。まだ、赤ちゃんなんですよ。」


  キャンディは母様を必死でなだめている。


  許して下さい。母様。好奇心には勝てなかったんだ。


  それにしても、完全に伝わってるな。母様はエスパーとか心が読めるとかなのか?


「お尻が痛い?穴が痛い?妙に誤魔化す感じ。…あぁ。分かったわ。あなたのデメリットは痔なのね。条件は、伝わらない。とかですね。」


  独り言のようにつぶやいている母様。

  神様。条件看破されましたよ?伝わらないんじゃなかったんですか?


「キャンディ。お医者様の手配を。それから、今ある封印用のミサンガと札をすぐに用意して。御客様にはお帰りしてもらうわ。改めて来てもらいましょう。」


「かしこまりました。ツンディナ様。」


  一礼すると、あっという間にキャンディは部屋を出て行ってしまった。


「シーリィタ。まだ早いと思ってたけど、シーリィタとはじっくりと話す必要があるみたいだわ。」


  少し怒った、鋭い目のままの母様が俺のベットを覗き込んでいた。


「シーリィタ。今からお母さんは、御客様の所へ戻りますわ。すぐに戻ってきますから良い子で待っていてください。呪文作成とか、呪文を使ったりしてはダメです。いいですわね?」


  いつもより、低い声で母様は念を押すよう言った。


「アーィ」


  母様。良い子で待ってます。何もしません。

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