06 母様の教え。
メリークリスマス
6話
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
「アハハ。」
そうやって、我が両親はラブラブぶりを発揮した後、食事は終了した。
俺にはどこに笑う要素があったのかが分からないが、もう見慣れた日常になっていた。
朝食が終わりオヤジは仕事に出かけた。オヤジは忙しいはずなのだが、夜は意地でも帰ってきて晩飯を食べるのでしばらくのお別れだ。
俺とアーラシュは母様に連れられて、我が家の勉強部屋までやってきた。
「お父さんも無事に出かけたことだし、アーラシュとシーリィタには呪文について教えてあげるわね。」
「よろしくおねがいします。おかあさま。」
「アーィ」
母様は、伊達眼鏡をかけて話し始めた。それもまた良し。
それに、呪文について初めてまともなことが聞ける。神様はこの世界については、ほぼ何も教えてくれてないから助かる。
「はい。よろしくお願いします。アーラシュは呪文は知ってるわね?」
「うん。しってるよ。ビュバーだよ。」
「知っています。ですよ?」
「知っています。ビュ…呪文です。」
「はい。大変結構。少しずつ慣れましょうね。」
「はい。お母様。」
母様は跡取りであるアーラシュに少しずつだが教育している。大変だが頑張ってもらいたい。
「シーリィタも覚えなきゃダメですよ?アーラシュもお兄さんになるから頑張らないとね。」
「はい。最善をつくします。」
真面目な顔でアーラシュは聞いていた。
「ブゥー」
母様。的確だ。流石だな。でも、丁重にお断りします。俺は次男なので好きに生きたいのだ。
母様は少し俺を見て、ちょっと呆れ顔を気がした。何事もなかったように平然とアーラシュに振り向いて講義を始めた。
「呪文は…っと、その前に魔法について話しましょうね。」
「魔法はこの世界のどこにでもあるわ。アーラシュはお水に顔をつけたことがあったわね。」
「はい。お母様。冷たくて、苦しかったです。」
「そうね。水の中だと苦しいわよね。でも、水から出ると苦しくないわ。自然と呼吸ができるでしょ?呼吸はこの世界のどこにでもある酸素があるからできるわ。魔法はそれと同じくらい自然になことなの。」
そう言いながら、母様は大きく息を吸って、はいてみせた。
「ん?すぅ〜。ふっー。おかあさま。ここにも魔法はあるんですか?」
「そうです。すぅ〜。って吸ったら、一緒に身体に入ってくるわ。それで、魔法はここに貯めておくことができるの。」
母様は自分の心臓部分に手を当てた。
「そして…アレ!」
母様がそう唱えると、胸の前で広げていた手のひらが輝いた。いつの間か、光の玉が浮かんでいた。
「ふぉぉ!おかあさま!すごい!…アレ!アレ!…あれ?出ないよ。おかあさまぁ〜。」
アーラシュは母様と同じ様に唱えたが、全く反応がなく、嬉しそうに輝いていた顔は、泣き顔になりそうだった。
完全にファンタジーの世界だ。母様が普通のことの様に呪文を使った。前の世界では魔法、この世界では呪文を出すことに俺は正直に驚いた。
この世界では、魔法は気体で、酸素と同じなのか?混合気体ってことでいいんだろうか?それで、空気になってこの世界にある。
生前のうる覚えの知識ではそんな感じだった気がする。
まぁ、生前の知識がそのままこの世界に反映されているとは限らないのだが。
母様は楽しそうに笑っている。
「ウフフ。ごめんなさいね。まだ、アーラシュは呪文作成をしてないから呪文が唱えられないの。」
母様は、アーラシュの頭を撫で、アーラシュの目を見ながら、真面目な表情で語った。
「呪文はとても便利で、誰でも使用、なんでも作成できるわ。…でも、呪文作成はとても危ないわ。相応のデメリットが必要なの。デメリットは呪文作成してみないと判明しないわ。」
「お母さんは、強力な呪文作成をしたデメリットで呪文作成出来なくなったの。強力すぎて、デメリットが変わっちゃうくらい。1つ間違えれば命が無かったかもしれない。だから、軽々しく呪文作成してはいけないわ。」
アーラシュもとても真面目に母様を見つめていた。
「アーラシュが5歳になったら呪文協会に一緒に行きましょうね。しっかり勉強して、正しく呪文作成して、呪文を覚えましょう。シーリィタも、もっと大きくなったら母様と一緒に勉強しましょうね。」
とても優しい笑顔で母様は俺とアーラシュに諭すように言葉をかけた。
「はい。お母様。」
「アーィ」
俺とアーラシュは素直に母様の言葉に頷いた。
頷いたハズだったのだ…。
昼食を終えて、赤ちゃんである俺は、マイベッドに戻ってきた。お昼寝をする為だ。
母様は、来客が来る予定があり、メイドと共に部屋から出て行ってしまった。
母様は今日は珍しくずっと一緒にいたな。いつもなら、メイドさんに任せて、別室で仕事しているんだけどな。何故だろう?
部屋には俺1人しかいない。
いつもなら、メイドさんが常に1人は待機して面倒を見てくれているのだが、母様と共についていってしまった。
俺は完全に浮かれていた。
身体が少しずつ思うように動くようになった。この世界の知識も日常会話から少しずつ分かってきた。GMフォンや呪文などを、どう使うか、考える余裕もできた。このタイミングで、呪文とデメリットの説明だ。ナイスすぎる。
自分の好きな呪文をなんでも作成できる。最高じゃないか!この世界!
オタクなら誰もが1度は創造してみたいと思いますよ。僕の考えた最強の魔法ってヤツを!
人気ゲームの移動魔法だって使える。憧れのロボットだって召喚できる。憧れた主人公の必殺技。強力な攻撃魔法、支援魔法、コピー能力、鑑定魔法、時空魔法、忍術、暗殺術、召喚、奴隷魔法、精霊術、治癒魔法、特殊な能力、錬金術、料理、などなど、とにかく、なんだって出来るってことだ。
神様はデメリット無しの呪文作成の権利を1つくれた。これは、正しく、おススメだ。神様が初めて尊敬できました。ありがとう。
でも、でも。待て、待て。慌てるな!俺。深呼吸だ。クールになれ。
スゥ〜。ハァ〜。
今この権利を使ってしまうのは勿体ない。自慢では無いが、堪え性がない。すぐに使用してしまい後悔したことがいくらでもある。
例えるなら、スマホゲームで、課金して、ガチャした後、さらに欲しいキャラが来て、また、課金したりするとかなぁ!
なれば、こそ!2回目の人生は、我慢強く、タイミングよく使う必要がある。
でも、呪文作成してみたい。ならば、どうするか?
俺は目をつむり、集中してGMフォンを開いて、呪文作成を起動させた。
母様曰く、強力な呪文作成をしなければ、それほどのデメリットは発生しないのだ。
しかも、俺はデメリットが分かってる。未だに用途が不明だが、条件だってわかってる。
ならどうするか?
簡単な呪文で有効な使い道のある呪文を作成すればいいのだ。
起動すると目の前に、呪文名、呪文の効果、条件、決定ボタンの欄が現れた。
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