23 入り浸る。
23話
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
どうしよう。アイルサにもそうだし、ケイロンにも説明しなきゃならないんだけど、今回デメリット無しなんだよな。
デメリットと条件とか喋れないから言えないんだよね。なんて言えば誤魔化せるかな?
「まだ問題が解決したわけじゃない。これから配ったりしに行かなきゃ行かないだろ?もう少し落ち着いたら、ちゃんと話そう。」
俺はまだ未解決だという方向で話を考えていく。
が、アイルサは少し寂しげな表情をして腕に抱きついてきた。
…誤魔化せないか。
「今話して欲しいのです。デメリット。…やはり私ではダメですか?」
「…ダメではないです。ですが、ケイロンに後で聞いてくれると嬉しい。呪文について俺からは何も言えない。これしか言えないんだ。」
言えないって意外に辛い。
「シーリィタ様?…分かりました。何かあるのですね?私の為にここまでしてくれた貴方様です。会ったばかりですが、私は信じます。」
「ゴメンね。アイルサがダメなんてことはない。こんなに可愛いし、頭も良い。それに、一途だ。一族のことも俺の心配も一生懸命で…嫌う要素がないよ。」
アイルサが抱きついている手をそっと握る。アイルサも握り返してくれる。
俺と同い年で一族の問題とかを把握して、自分の境遇に必死に耐えて、それでも俺と微妙に難しいような会話が成立してる時点で凄すぎだ。
俺が物凄くアホの子なのかもしれないって思う。まぁ、正直、目の前の可愛い子が幸せならそれでいいかな。
「ありがとうございます。私はシーリィタ・ワンダー様のものになりますね。」
「アイルサ?」
「ワン・シー一族を救う事が出来るなら、私はシーリィタ・ワンダー様のものになりましょう。って言いましたよね?この呪文なら確実に救ってくれます。」
エヘヘ〜。とそんな感じで顔を肩にスリスリしてくる。何この可愛い生物。
この世界の人たちは頭の回転が早いというか、先読みする力があるよな。母様は別としても、ケイロンやアイルサは心読んでるのかってくらい把握してくる。異世界で知識使って楽する発想が無いわけでは無かったが…俺には無理そうだ。逆に利用されて捨てられそう。
「俺なんかでよければこちらからお願いするよ。アイルサ。」
「はい。喜んで!そろそろ、他の方々の話も終わるでしょう。」
すっかり、明るい笑顔になったな。可愛い。ちょっと前とは別人みたいだよな。ホント。うん。無駄なんかじゃ無かったな。呪文作せしたのは。
そんな事を考えていたら、他の大人組もコンビニの前までやって来ていた。
「シー坊。アイルサ・ワン・シー様もこの建物の中を先に見たんだな。なら、俺たちも案内してくれ。」
ケイロンはどうやら丁寧な言葉使いを諦めいつもの口調でとおすことにしたらしい。ごちゃ混ぜだったけどね。
「そうだな。シーリィタ・ワンダー。ケイロンから話は聞いた。信じ難いが呪文作成により出来たもので、この建物が我が一族を救えるのか、娘を預けるに値するのかをしっかり見定めなければならない。」
「わ、わかりました。」
ビーサル・ワン・シーは俺に向かって睨みつけるように言った。
怖い。でも、よくよく考えると、一族救う代わりに娘を寄越せって言って勝手に話を進めてる感じだから…あれ?俺ってかなりヤバイよね?
「お父様。そのように睨みつけては、シーリィタ様が怖がってしまいます。私の夫になる方ですよ?もう少し優しくしてあげてください。」
アイルサが俺の腕に抱きついた状態でビーサル・ワン・シーを睨みつける。
「アイルサ。何を言っている?お前の為でもあるのだぞ?まだ、そんな話にはなってし決められるわけがなかろう?まずは調べなければならん。」
「では、睨みつけてないで、急ぎ見てきてくださいませ。我が夫の呪文は素晴らしいものです。一族は救われます。」
「ア、アイルサ?お前がそこまで家族以外に心を開くとは正直思わなかった。信じられん。…いいだろう。そこまで言うなら見てこよう。行くぞ。リテル。レイト。」
「「了解」」
そう言って3人は建物中に勝手に入っていってしまった。アイルサさん凄すぎ。
「シー坊。本当に色々とやらかしたな。とにかく案内してくれ。」
「そうですね。私も商人としてこれは見過ごすわけにはいきません。案内してくださいますか?」
ちょっと興奮気味のゼネラル・マーネジャと呆れた様子のケイロン。
「分かりました。案内するほど広くないですが行きましょう。」
俺達は、先に入ったビーサル・ワン・シー達を追うように入っていく。
そこからは、アイルサと同じように案内をして、物を見てまわった。
建物は無人でどうやって買い物するのかと思ったが、物を持ってレジの前に行くと、物を勝手にスキャンして料金を提示してくれるシステムになっていた。
俺が商品を持って外に出ても問題ないが他の人がお金を払わないで持っていくと、粒子になり消えてしまい、元の場所に戻っている。
レンジなんかのお店にある器具も平気で使えるし便利だ。…試しに持ち出そうとしていたゼネラル・マーネジャだったが、外に出ると商品と同じように粒子になり元の場所に戻っていた。
お店で支払われたお金の半分が俺の手元やお財布に勝手にくるようになっているっぽい。
調べてみた結果はこんなところだ。色々と調整出来そうなので後でじっくりと試してみよう。
「想像以上だ。確かにこれならば我が一族を救えるかもしれん。」
驚いた様子でそれでいて認めたくない表情をしながらもお弁当を食べているビーサル・ワン・シー。
「ケイロン。次はこのカレーマンを食べてみましょう。」
「リテル。もう少しゆっくり食べろ。無くなったりはしないから。」
「だって美味しいんだもん。」
肉まんを食べながらケイロンと話しているリテル・ワン・シー。
「はぁ〜。久しぶりにお腹いっぱい食べれて嬉しいっす。次は何を食べよか迷うっすよ。」
こちらも食べることに夢中になって、自分の喋り方に戻っているレイト・ワン・シー。
「このカップラーメンは素晴らしいです。商売したら間違いなく売れますよ!」
やたらとカップラーメン系を気に入ったゼネラル・マーネジャ。
…もうみんな好き勝手買って食べているので収集がつかなくなってきた。
「ほ、報告します。宝石、アイテムの回収が終わりました。」
「ご苦労。手の空いたものを集めろ。メシにするぞ。他の奴らにも伝えろ。」
「り、了解であります。」
そうしてるうち、ワン・シー一族の部下達が仕事が終わったと報告しに恐る恐るコンビ二へ来て、ビーサル・ワン・シーが食べ物を部下に供給し始めた。
そろそろ、ここから離れないとまずいんじゃないのかよ?そんな不安になりつつも、もう少し終わらないんだろうな。そんな感じがしたのであった。
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口調もう少し変えないと誰が誰だか分からなくなってくる。口調の変化の大切さ。




