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22 1人暮らしの味方。

 22話


 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。






  どこにでもある。俺が住んでいた場所ではよく見かけた、「コンビニ」だ。


  イメージ通りに建物は召喚された。後は入ってみて俺の思う通りになっていれば問題は解決だ。


「シー坊。やってくれたなぁ…。俺はツンディナ様に、確実に、精神的に、殺される。」


  引きつった笑いをしたケイロンが、トラックから降りて、頭を掻いていた。


「シーリィタ様!デメリットは?何を犠牲になさったのですか?どうして呪文作成したんですか!」


  アイルサは俺の肩を掴み、泣きそうな顔をしていた。


「大丈夫だから。それよりも建物の中を確認したいんだ。望み通りの呪文なら問題が解決なんだけど。」


「説明になってません!私のせいで…私が説明しなければ…私がぁ…」


  ついに泣き出したアイルサにケイロンが近づき頭をポンポンなでる。


「シー坊。グーで行くからな。アイルサ・ワン・シー様に謝って、その後、説明な。」


  俺は歯をくいしばると、ケイロンに殴られて吹っ飛ばされる。


  それだけの事をやらかしたってのは理解できる。だから大人しく殴られる。

  5歳児を容赦なく、上司の子供を平気で殴るとか、元の世界でやったらなんて言われるか。


「呪文作成だな?これは?」


「いてぇ。…そうだよ。ケイロン。この呪文があればシー一族は助かると思う。」


  まっすぐ俺はケイロンを見つめる。


「はぁ。もう少し反省しろ。ほら、謝れ。」


  ケイロンはアイルサを少し前に押し出して一歩前に出る形になる。


「アイルサ様。申し訳ございません。」


  俺はアイルサに頭を下げた。泣くとは思わなかった。


「…ぐすっ…謝ったって許しません。…何がデメリットなんですか?…私にはそんな価値は無いんです。」


「…そんなことない。アイルサは可愛いよ。価値が無いなら、必要とされてないなら、俺が貰うから。だから、そんなこと言わないで。」


  そう言いって俺はアイルサに近寄ってきて、優しく抱きついた。


  最初はビクッとして離れようとしたが、俺が強く抱くと、だんだんと弱くなり最後には抱きついてくれた。


「そういう冷静な様で突っ走る所はお前の親父にそっくりだ。もうちょと、相談しろ。どうせ、アイルサ・ワン・シー様の話を聞いて何とかしようとか考えてやったんだろ?」


  図星だ。


「それも、ほぼ一目惚れで、自分で最善だと思う方法で、問題解決しようとしたろ?」


  そうだ。


「確かに上手く行くかも知れん。だが、周りは不安だったり、心配したりするんだ。そこまで考えろ。」


  ケイロンは母様なのか?よく俺の考えがわかるな。


「何でわかるのかって顔してるな?そりゃ、シー坊が呪文作成して救おうとしたように、お前の親父も似たようなことをしてるからな。ツンディナ様に。まぁ、5歳前にするとは俺も思わなかった。本当に5歳児かよ。まったく。」


  少しニヤけて答えるケイロン。


  オヤジぃ!母様を呪文作成で口説くって…そんな所似たくなかった。


「…大人の会話を盗み聞きするだろうとは思ったが、その行動は予想できなかったな。シー坊ならもう少し現実的な解決方法をしてくれると思ったんだがなぁ。どうだ?反省したか?」


  殴られるよりよっぽど効果的だったよ。自分の両親の慣れ始めとか聞きとうないわ。


「ケイロン。ごめん。反省しました。」


  それにしても、ケイロンは俺に何を期待してるんだろうか?本来、5歳児に話す内容ではない気がするんだが…。


「うし。次に生かせよ。で、後で様子を見せろ。痛いだろ?」


「了解。ケイロン。」


  ケイロンは俺のデメリットを知っている。母様が通達してるから。


  俺が呪文作成すると痔になるとこを。


  今回は神様からのデメリット無しの呪文作成の権利で何とかなったが次は相応のデメリットを覚悟しないといけない。


「ケイロン・キロン様。シーリィタ様のデメリットは何なのですか?酷いのですか?」


「それは話せません。場所が場所ですので。さて、シー坊。呪文で出した…建物でいいんだよな?あれは何だ?」


  ケイロンは上手くアイルサを誤魔化す。まぁ、お尻の穴が犠牲になる。しかも、女の子に知られるとか、やめていただきたいよね。


「ケイロン。今の光は何なの?」


「姉さん。待ってください。」


「ケイロン。何かあったのか?それから、さっきの光は?」


「これはまた。とんでも無いものがありますね。」


  そんな感じで、リテル・ワン・シー、レイト・ワン・シーが落ち着いたのか近場から戻っきていた。ビーサル・ワン・シー、ゼネラル・マーネジャがトラックから出てきた。


  ケイロンが集まってきたワン・シー一族に説明をしてる間に、俺の呪文で建物召喚したコンビニの中に入った。アイルサも少し落ち着いたのか、手を繋いで一緒に来ていた。


  大きさは25メートルのプール程度。入り口は自動ドア。入れば、開いた時の特有の音が聞こえる。店内は、少し懐かしい光景があった。


  アイルサは自動ドアに反応して驚いて俺の手に抱きついた。


「何ですか?これは?お店なのですか?」


「お店だよ。コンビニって言うんだ。」


「コンビニ?どんなお店なんですか?食べ物があるんですよね?」


「食べ物もあるよ。他にもある程度は日用品があるかな?」


  改めてどんなお店か聞かれると考えてしまう。


「まずは食べ物から見てみようか。」


  お弁当やおにぎりがある棚にやってくる。


「すぐに食べれそうなものが沢山あります。でも、そんなに量がありません。」


  少し残念そうな顔になったアイルサ。


「まぁね。でも、他にもあるから。大丈夫。後ろの冷凍庫にも冷たくて食べれる物。温めれば食べれる物があるよ。」


「この冷蔵庫?も食べ物なんですね。うわぁ〜、冷たいです。あ、前の棚には…パンでいいんですよね?」


「そうだよ。いろんな種類のパン。」


「もしかして、この列の棚は皆んな食べ物ですか?」


  アイルサは俺から離れてカップ麺などの棚へ行く。俺は少し後をついていく。


「そうだよ。お湯を入れ食べるものもある。中身が見える棚あるでしょう?その棚は飲み物。パンの反対側の棚はお菓子。」


「これが全て食べ物に飲み物なんですね。それも、呪文で出せる。これなら何とかなるかもしれません。」


  初めて見るのか、興味津々で自然と明るい表情や笑みがこぼれる。順々に棚をみて周るアイルサ。


  なんだ。そんな表現も出来るじゃないか。やっぱり、笑ったりしている方が可愛い。


  お菓子の棚の方を見て、入り口の方に帰ってくる。


「食べ物だけじゃない。他にもコップやスプーン、タオルとか必要そうなものが揃ってるのがコンビニだよ。」


  俺がコンビニを一から作ったわけでは無いが、嬉しそうにしているのを見ると何だか褒めてもらいたくなる。


「入り口の方の棚にはそういったものがあるのですね?…シーリィタ様。すごいです。呪文で何度も出せるのであれば、確かにワン・シー一族は助かるかもしれません。」


  少し笑顔が曇ったな。なんでだ?


「安心してよ。何度も出せるから。魔法力が無くなったら休んで出せばいい。」


  首を横に振って、不安そうなアイルサは俺を見つめていた。


「そこを気にしてるのではありません。シーリィタ様。私には教えてくれないようですが、貴方にデメリットを負わせてしまった。私がシーリィタ・ワンダー様に相応しいか。それが不安なのです。」


  どうしよう。アイルサにもケイロンにも説明しなきゃならない。今回デメリット無しってことを。

  デメリットと条件とか喋れないから言えないんだよなぁ〜。なんて言えば誤魔化せるかな?

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