02 世の中には聞かなかった方が良かったこともある。
何もかもが初めてなので優しくして下さい
2話
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
「さぁ、始めようか。私が主役級で、ストレス発散もできる!そんなことのために、異世界で世界を救う予定の哀れな主人公のキャラメイキングを!」
魂が輝き出し、本作の主人公がその姿を現した。
俺は、佐藤司理太。つかさどれ!ことわりを!という親の頭良さそうな漢字をいかにも付けました的な感じでつけられた。
太は、しりだと尻と間違われるから1文字付け足したそうだ。名前の由来がちょっと安直すぎる。
現代日本生きていたオタクだ。オタクでゲームやアニメなんかが大好きだった。と言ってもゆるい感じの浅く広くだが。
27歳で、独身!彼女もいなければ出会いもなかった。最近は少し外食が多く太ってきていた。ちなみに、身長175。体重75キロ。
やっと、社会人の生活、営業の仕事にも慣れてきたところだ。
ノルマを達成するために必死で飛び込み営業したが、ノルマさえ達成出来れば黙って家に帰ってサボるなんてことも出来るので楽な部分もあった。
ノルマを達成することなんてあまりなかったが。
「初めまして!ようこそ新しい人生へ!君は幸運なことに、2度目の人生にチャレンジできる!」
「私はGMこの世界の神だ!」
凛とした声が聞こえた。
俺はその声に驚いて目を覚ました。
1人暮らしなのに俺の部屋から知らない声が聞こえるぞ?おかしい?
「うわぁ!なんだ?うぉ!」
ビックリして、その場から後ずさったが、何かにつまずいてひっくり返った。
どうやらソファーが後ろにあったらしく、ソファーに座るような形になった。
「はぁ?え?なに?どうなってんだ?」
俺は思わず周囲と自分を見回した。
俺が座っているのと同じ大きさのソファーに1人で真ん中に座り、ワイングラスを傾けている男性がいた。
後ろには、72インチのテレビが置いてあった。
透明なガラスで造られたテーブルには調理されたばかりのフライドポテト、ハンバーガーなどのジャンクフードが置いてあり、赤いもふもふのカーペットがテーブルを中心に部屋半分ほど敷き詰められていた。
部屋の大きさも俺の部屋よりも圧倒的に大きい。というか、俺の部屋じゃない。
そもそも、俺の体、全身真っ白なんだけど。人の形をした白い何かなんだけど。
「なにこれ?というか、ここ何処?あんた誰だよ!」
俺は目の前のいかにもおっさんっぽい人に混乱しながらも訪ねた。
「聞いてなかった?では、改めて〜。」
「初めまして!ようこそ新しい人生へ!君は幸運なことに、2度目の人生にチャレンジできる!」
「私はGMこの世界の神だ!」
「呼び方は、ジーエム。あ〜る〜い〜は〜、ゴッドマスター。神様でもいいね!」
得意顔で男は答えていた。
「はい?」
意味不明だ。はぁ?GM?ゴッドマスター?神様?頭がおかしいだろ?
「頭がおか…って。失礼だね〜。キミ〜。ここは、私のお城。神様スペ〜ス。君は、死んでしまいましたマル。」
神様スペース?俺が死んだ?新しいテレビのドッキリか何かか?全然理解できない。
俺は混乱した。とは正しくこのことなんだろう。
「え〜っと。」
「ドッキリではないね。ち〜な〜み〜に〜、君の世界でもないね。あぁ〜。正確には、まだ死んで無いから、正しい表現では無いけど、死後の世界ってやつさ。」
飄飄とした受け答えを、男…神様らしいやつはしていた。
「死んでない?死後の世界?ということは、生き返ったりもできるのか!」
俺は身を乗り出して思わず聞き返してしまった。
会話ができる程度には落ち着いてきたみたいだ。
誰かと喋れるというのがある種の安定剤になってるのかもしれない。
死んでいると言われてもなぜ死んだんだよって思うが、生き返れるならそれに越したことはない。
「おぉ!少し落ち着いてきたね?だけど、残念!答えはNO!生き返れないね。葬式が終わっちゃってるから帰る場所ないね。葬式の映像とかあれば現実味があったんだけど、用意してなかったよ。ゴメンね。」
軽い感じで、ムカつくゴメンね。それでも、神様は申し訳ない様子で俺に謝った。
「葬式とか終わってるのか。そりゃ、死んだって言われても仕方ないか。実感無いけど。」
俺はまたソファーに身を任せた。沈み具合は丁度よく、いいソファーなんだろうと感じた。
少し納得した部分もある。だって、肌の色が真っ白なんだぜ?多分全裸。ゲームとか漫画とかでよく表現される人形の魂っぽいからな。
「その格好の方が死んだってイメージしやすいだろ?死んでない理由は、魂が新しくなるまでに時間がかかるから。普通ならそのまま新たな人生のスタート!…なんだけど、私がタイミングよく、君を保護!会話ができるようにしたのさ。」
「君は哀れな死に方をしたから、特別に別の世界に転生できる権利が与えられた。やったね!ち〜な〜み〜に〜、拒否権はない!断ったら、物語は始まらないからね!」
神様は絶好調なのだろうか。ノリノリで語っている。
拒否権ない以前に完璧に死んでるじゃないか。つまりこれって異世界に転生だよな。本当にゲームとか漫画みたいな内容だな。
1からやり直すよりはマシか。強くてニューゲームとか思えば気分も楽だ。
ふと、気になったことがあった。
「ん?今更だけど、神様?…でいいんだよな?俺の思ったことも理解して話してるよな。やっぱり神様ってそういうのもできるんだな。」
神様はぽかんとした後、爆笑しながら答えた。
「ウハハハ!ブハァ、ウフェ、そこぉ?ハハハ!死んだことを疑うとか、ハァ…転生先はどことか、ハァ…他にもあるでしょうに、ウハハハ!そこぉ?はぁ、お腹痛い。」
神様はソファーにもたれかかって爆笑していた。
危うく持っていたワインをこぼしそうになり、それで更に爆笑し、ソファーでピクピクしていた。
ちなみに、神様なので思考も余裕で読めるそうだ。
俺はブスッとしながらも笑いが治って無い神様にふてくされながら答えた。
「そんなに、笑うことかよ。ありえないことがここまで起きてたら信じるしかないし、記憶とか引き継いでもう1度人生をやり直せるってことだろ?なら、素直にそうした方がいいと感じただけだよ。もちろん、詳しい内容は聞くけど。」
死んでしまったなら仕方ない。それでも次があるならそちらに挑んだ方が自体が好転するのだ。そも、選択肢があるようでないのだ。余計にこれ以上の事態にならないように動かないといけない。まだ、自我があるのだからいい方に持っていきたい。
「ハァ…ハァ…ヒィ…君が前向きなのはよく分かった。私としてもその方が話が進めやすいし助かるしね。」
ふぅ〜っと息を吐きながら、やっと落ち着いたのか、改めて俺を見ながら神様は喋りだした。
「それじゃ、君が異世界に転生してくれるってことで話を進めようか。」
俺はもう1つの聞きたいことがあったので慌てて口を開いた。
「あっ!その前にもう1つ聞きたいことがある。何が原因で俺は死んだの?」
神様は真面目な表情でこう答えた。
「テクノブレイクだね。」
俺が思考を停止したので話が進まなくなった。
もしよかったら、優しい感想をお待ちしております。




