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18 ビーサル・ワン・シー。

 18話


 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。






  大型の猪はあちらが見えるくらいに穴が空きつつも、そのまま突っ込んできたが横に傾き、その巨体が地面に倒れた。


「すげ〜。あんな魔物倒せるのかよ。地味じゃないじゃんか!ケイロンの呪文すげぇよ。」


  さっきまで死ぬ。と思っていたが、あの光景を見て今度は物凄く興奮した。


「ふー。あー。もう、しばらくは戦いはしたくねぇ。でも、呪文の凄さが分かったろ?」


「そりゃ、もう!」


  髪を掻きながら照れ臭そうにしてるケイロンがいた。だが、ちょっとすると真面目な顔になって言うのだ。


「シーリィタ。大型の猪が突っ込んで来た時。どう思った?」


「死ぬかと思った。」


  俺は正直な感想を言った。


「俺もあいつが出てきたのは予想外だった。おかげで、俺の魔法力はほとんどない。人型の魔物に襲われるとしか聞いてなかったからな。」


  俺はその言葉を聞いた時、背筋がヒヤリとした。


「1歩間違えば死ぬかもしれない。それが魔物との戦いだ。五体満足に次があるってのは幸せなことだ。本当に。その意味を忘れるなよ。」


「わかった。ケイロン。」


  ケイロンが無理矢理、俺を連れて来たのは明日があることの大切さ、日々の大切さを伝えたかったんだろうと思った。


「ま、俺がこんな所に連れて来なけりゃ、危険なんてなかったんだけどな。」


「それを言ったら台無しだよ。ケイロン。」


「そもそも部隊を連れてくる案件だからな。こういうのは。」


「ケイロン。俺の感動を返して欲しい。」


  本当に戦闘からの言葉を伝えるまではカッコよかったのにな。


「あぁ、後続部隊は来るか。シー一族の一団だからな。」


  思い出したかのようにケイロンが言った。


  おい。待て。かなり重要な案件だぞ。これ?「思い付きでピクニックに来ました。」的なノリで来たらダメなヤツだよ。


「え?今日着く予定のシー一族?それを単独で来たの?子供連れで?」


「そうだ。俺にとってはシー坊の成長の方が重要だからな。」


  当然と言わんばかりに平然と言ってくれるのは嬉しい。だけど今は違う気がする。


「いや、ダメだろ。お偉いさんなんだろ?そもそも招集されたんだから部隊で動かないと。」


「招集はされたさ。部隊がここまで来るのには時間がかかる。最悪、間に合わない可能性があった。だから、俺が先行して可能な範囲で手助けをしたのさ。ついでにシー坊の魔物体験をさせたってわけだ。」


「予想外のことがあったが、この程度ならなんとかなるからな。」


  訓練の時と同じでケイロンは落ち着いていた。まるで、本当に俺の訓練のために予定が組まれたような感覚に陥る。


「それでいいのか?組織としてはダメだろ。なんか今回かなり滅茶苦茶だな。」


「柔軟に物事を考えて対応した結果と言ってほしいな。」


「なんか、いいように丸め込まれた気がする。」


「結果、俺が来て正解だったんだ。それで良しにしとけ。シー坊が部隊の決定にあれこれ言っても意味ないだろ。」


「そうなんだけどさ。なんだかなー。わかったよ。そういうことにしとくよ。」


「まぁ、無理矢理連れて来たことは悪かったと思ってるよ。」


  はぐらかされてる気がするんだよな。無理矢理連れて来られたこと?ケイロンが部隊より単独で来たこと?分からんが違和感が半端無い。


「ケイロンじゃないか。久しぶりだな。」


「ビーサル。ずいぶん余裕そうだな。手伝ってくれても良かったんだぞ?」


  中型のトラックの1つから俺のオヤジと同じくらいの歳の男が降りて来た。

  複数ある中型トラックの1つは、キャンピングカーのように改造されてるようだ。


「そういうな。アクシデントが重なってな。正直ギリギリだ。」


「安心しろ。後続部隊が来る。僅かだが色々持って来てある。」


「正直助かった。もう少し遅かったらどうなってたか…。そっちの子供は?お前の息子か?」


  親しげに話をしているケイロンと男。シー族の部隊の知り合いか誰かだろうか?


「俺がまだ独身なの知ってるだろ?シーリィタ・ワンダーだ。ガネービスの息子だよ。シーリィタ。こいつが噂のビーサル・ワン・シーだ。一応挨拶しとけ。」


「こいつ呼ばわり出来るのはお前くらいだ。ケイロン。」


  ビーサル・ワン・シーって、シー一族のトップに近い、お偉方だろ!ケイロンなんでタメ口なんだよ。いや、お偉方が軽いノリで登場しないで欲しい。


「シーリィタ・ワンダーです。ビーサル・ワン・シー様。遠方からの長旅さぞ大変でしたでしょう。安全な領地まで、あと少しなのでもうしばらく耐えて下さい。」


  敬語あってるか?対応なんぞ俺はわからんぞ。ドキドキものだよ。お偉いさんに挨拶アドリブとかやめて。心がやられる。


「ビーサル・ワン・シーだ。シー一族のワン・シーをやっている。シーリィタ・ワンダー。出迎えご苦労。…堅苦しいのは無しにしよう。ガネービスの息子よ。」


  微笑みを向けてくる、ザビール・ワン・シー。おおよそ間違いではなかった対応だと思う。


「そう言っていただけると助かります。」


  俺は頭を下げるのだった。


「俺の娘と同じくらいか。ガネービスも順調なようだな。」


「シーリィタはもうすぐ5歳になる。おまえの娘と同じ歳だ。話は後にして魔物からの戦利品を回収したらすぐにここから移動した方がいい。多少なら動くだろう。」


「本当に僅かだが移動はできる。戦利品の回収は部下にやらせる。ケイロンも少し休め。正直ギリギリだろ。」


「助けに来たのに助けられるとは情けないが助かる。」


「お互い様だ。中に入れ。」


  どうやら、オヤジとケイロンとは付き合いではなく、本当に仲が良いみたいだ。


「済まないな。シーリィタ。中に入るぞ。」


「あぁ、わかった。」


  会話をしながら2人は入っていく。


  俺も後に続いて中型のトラックの中に入った。

もしよろしければ、感想、ブックマークなどよろしくお願いします。


他国との関係とか部隊がどうとか作者も曖昧で作っててかなり滅茶苦茶な気がします。


これでいいのか。

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