16 魔物退治に参加。
16話
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
そんな冗談のような愚痴っぽい会話をしていると、アーラシュが走ってこちらにやってきた。何か急いでいるみたいだった。
「ケイロン先生。ガネービス様より招集がかかっております。至急、お父様の執務室までお越しください。」
息を切らせながらも、敬礼をしながらアーラシュはケイロンに伝言を伝えた。
「招集?了解しました。アーラシュ様。至急、ガネービス様の所へ向かいます。お勤めご苦労様です。」
アーラシュに敬礼を返し、いつもの様な口調では無く、丁寧な口調でケイロンは答えた。
「アーラシュ様。質問をよろしいでしょうか。」
「はい。私に答えられる範囲なら。」
「詳細の方は何か聞いておりますか?」
「いいえ。詳しくは何も。ガネービス様が直接話すそうです。」
「…了解しました。すぐに向かいます。」
「シー坊。今日はこれまでだ。また明日な。」
「ケイロン。ありがとうございました。」
「おう。」
ケイロンは走りながら後ろを振り向き挨拶をしてくれた。
俺はアーラシュに召集の理由を聞いてみたくなった。
「なぁ、アーラ…」
「詳しくは何も知らないのは本当ですよ?」
「まだ何もい…」
「言わなくっても分かります。シーリィタが関わると予想斜め上の方向に話がいきますから。地下施設作りたいとか、海空を移動する船を作りたいとか。いや、うちの一族っぽい発想ではあるんです。」
「仕方ないだろ?俺の生前の記憶と同じ位に発展してるんだから、あんまり役に立つ話がないんだよ。」
オヤジに生前のことを聞かれた際に話したことだ。呪文があるんだから、ロマンを追い求めそんなことを言った。
この世界、俺が生きていた世界と同じ位には呪文によって発展している。
トイレ、キッチン、風呂、食べ物、動物などありとあらゆるものが呪文によって作ることが可能だ。
もちろん、それだけでは圧倒的に足りない。強さ、豊かさを呪文に求めればデメリットもそれだけ大きくなる。デメリットを使い便利なものを作った彼らの犠牲の上になりなったいる。
その為、農業や工業など呪文を使わないでも生産できるなものが一般的だ。
呪文で作り出したものを呪文を使わず作る形で発展している。
なので、ちょっとぶっ飛んだ、無さそうなものを言ってみたんだが呆れられるだけだった。オヤジは笑っていたが。
アーラシュは、少し大人っぽくなったが5歳の時から変わらない服装。オヤジの口調を真似ていたりと可愛いところもある。
そんなアーラシュに突然抱きつき動揺させ情報収集をする。
「詳しく知らなくっても簡単なことは知ってるんだろ?オヤジの近くにいるんだから。教えて。プリーズ。」
「し、知りませんよ。離れて下さい。」
「うそだぁ。オヤジがアーラシュに教えないわけない。じゃなきゃ、走ってこないもんな。」
「本当に何も知らないですよ。魔物が出たってことしか…。…あ。」
とまぁ、アーラシュなら詳しく知らない。というよりも、話の冒頭を聞いてて、ことの重要性に気づいて、先読みしてオヤジをサポートする。今頃はオヤジが詳しく話を聞き終わり、誰を行かせるか話し合い、招集をかけているはずだ。
指揮系統の先読みなどは危うさはあるが、それは今から学んでいく事だ。ケイロンもアーラシュのことはよく知っている。それを踏まえて行ってくれたと思う。
魔物。呪文により発達はしているが、魔物がいることにより、この世界の人達は死が身近にある。
「ケイロン先生なら魔物程度問題ありません。お父様もケイロン先生なら融通が利くので臨機応変な対応が可能です。招集して困らない人材です。」
ケイロン頼みなのが気になるが、オヤジの元で勉強中のアーラシュが言うのならある程度は問題ないのだろう。ケイロンとオヤジを信頼してるから言えるのだろうが一歩間違えると危険な判断だ。
「人は見てやってるんだよな?危うさも知ってるだよな?…あんまり言わないけどさ。ちょっと心配だよ。」
「はぁ…どっちが兄だか分かりませんね。大丈夫だよ。シーリィタ。お父様とケイロンだから出来るんだ。それ以外でこんなことしてみろ?俺はトップの名を勝手に名乗ったアホ野郎で死んでる。目下、対応できる部下が欲しいのが最近の悩みだ。」
ジト目で俺をみてくるアーラシュ。
まるで、早く俺の手伝いをしろと言っているみたいだ。
基本アーラシュはオヤジの真似をするがたまに俺に飾らない話し方をしてくれる。
多分、ケイロンの影響を受けているんだろう。
本当に約10歳か?そんなことを思ってしまう、妙な凄さがある。
今度は俺が追い詰められそうになるので撤退することにした。
「あはは…。俺は次男だしな。難しいことはアーラシュに任せるよ。俺は汗をかいたから風呂にでも入ってくるよ。」
そうして、魔物が出たという情報を手にして、その場を撤退した。
「全く困ります。シーリィタにも。思考は大人なんですから、手伝ってくれると助かるんですがね。」
いつもの口調に戻り、独り言をつぶやくアーラシュが俺が逃げていくのを見ていた。
風呂に入ってさっぱりした後に昼ご飯を食べようと我が家の食堂へ向かっているとケイロンを発見した。あれ?招集されてたんじゃないのか?
「お、こんなところにいたか。探したぞ。シーリィタ。お前さん、俺の魔法が見たいって言ってただろ?今から見せてやるからついて来い。」
普段と変わらない様子で平然と言ってのけるケイロンがいた。
「ハァ?招集されたんだよな?」
「されたな。」
「魔物倒しに行くんだろ?」
「なんだ?アーラシュに聞いたのか?まぁ。簡単に言えばそうだな。話が早い。行くぞ。」
「詳しくは知らないよ。魔物が出たって…え…そんな危ないところに5歳児連れてくとかアホなんじゃないですかね?」
「アホとは失礼だな。お前のオヤジにも許可は取ったぞ。アーラシュだってそん位の時に1度俺が連れてってる。それに後方で見てるだけですぐ終わる。とにかく急ぎだ。行くぞ。」
そんな話をしながらも俺に近づいてくるケイロン。
「急いでるのに俺を探すとか意味がわからん。ケイロン?俺はまだ行くとは言って…あぁ…離して。昼ご飯まだ食べてない。」
俺は首根っこを捕まえられて連行される。
「暴れるな。飯を食えないのは、俺をアホ呼ばわりしたからだ。普通の5歳児がことの重要性に気づいて逃げようとするかよ。俺の訓練も受けてる。お前さんなら問題ない。諦めろ。」
「横暴だ。弁護士を呼んでくれ。いやだ。行くたくなーいー。」
「続きは帰ってから聞いてやる。」
いつもと変わらない口調のケイロン。脇に抱えられて、俺は魔物退治に連行されたのだった。
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展開が色々おかしい気がする。




