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13 シー一族。

 13話


 この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。





  キャンディは少し不安な手紙を持ってきたのだった。


  ガネービスはキャンディから手紙を受け取り、手紙の内容を読んで、困っていた。


「無理難題を言ってくれます。明後日の午後、シー一族の一氏族。ビーサン・ワン・シーが来るそうです。秘蔵っ子のアイルサ・ワン・シーを連れてやってきます。」


「キャンディ。至急、歓迎の館の準備をしてください。こちらの館の管理はプリュムに任せれば大丈夫でしょう。ワン・シー一族を迎え入れたいと思います。」


「至急ですね。かしこまりました。失礼します。」


「バーィー」


「はい。失礼します。キャサリン様。」


  キャンディは笑うながら反応したキャサリンに、にこりと笑うと大急ぎで部屋から出て行った。


「あなた。そんな無理難題付き合う必要はないですわ。たとえ、旧知の仲で恩があったとしてもです。」


  母様はかなりご立腹である。普段ならオヤジに文句を言わない。


「そう言わないでください。ツンディナ。彼がいなければ私はツンディナと出会えなかったのです。」


「知りませんったら。知りませんわ。」


「ぶーぅ?ぶーぅ!」


「そんなツンディナも可愛いですね。キャサリンもです。」


「もぅ!」


「もぅ?もぅ!」


  母様が駄々っ子になってしまった。こうなると元に戻るまでかなり時間を要する。

  それを一部だけ真似する我が妹キャサリン。可愛い。


「お母様、お父様の心を読んで話を進めないでください。手紙の内容はなんと書いてあったのですか?」


「そうだな。オヤジ。そろそろ会話に混ぜてください。」


  アーラシュと俺は話についていけず、手紙の内容を確認するのだった。


「すみません。話したつもりになってました。手紙の内容は、簡単に言えば、しばらくの間、私の領地に住まわせて欲しいと言う内容です。それから、アイルサ・ワン・シーのシー一族での婚約者を探してくれという内容です。」


「それはまた無理難題ですね。」


「え?そんなに無理難題なの?」


  兄さんと俺の反応がまるで違う。なぜだ?


  そんな俺に兄さんは補足をしてくれた。


「シーリィタ。アイルサ・ワン・シーはシーリィタと同い年にして、勉学、運動、家事など教えたことはすぐに覚える天才と呼ばれ、地方でも有名になっているのです。容姿端麗、性格も大人しめではありますが良い子との噂です。」


「へー。そうなんですね。兄さん。それで、なぜ無理難題なんですか?それだけ文句のつけようがないなら婚約者も引く手数多でしょうに?」


  そう。家柄もよく、性格も良く、天才、容姿端麗と全て揃っていれば婚約者には困らないだろう。


  オヤジが口を開いた。その顔は少し曇っていた。


「髪の色です。シー一族の中では、黒髪は不幸や不吉の象徴なんです。シー一族はほとんどが、プラチナブロンドかアッシュブロンドなのです。そんな中、突然、黒髪の子が生まれるのです。なので、不幸や不吉の前触れとして黒髪は嫌われているのです。それに優秀なのが余計に気味が悪く思われているみたいです。迷信にも程がありますが。」


「なんだそれ?変な話だね。髪の色で否定されるのかよ。俺と同い年でなんでもできるって褒められることじゃないのか?一族の気持ちは分かるが、外見でその子の心まで否定したらダメだろ?」


「そうですね。シーリィタ。僕も同じ気持ちです。」


  兄さんも俺と同じ意見のようだ。


  見た目というのは結構重要だ。初めて出逢った時、見た目の印象で9割決まるという。ましてや、同じ髪色が当たり前という認識がある中では余計にだ。それによって好みが出るのはある程度仕方ない。

  だが、それだけで、性格や能力、中身が否定するのは納得がいかない。中身は、これまでの経験と努力の表れだ。見てきた、聞いてきた、感じて歩んできた道のりだ。その人、自身だ。見た目とは別に考えるべきだと思う。


「その通りですわ。アーラシュ。シーリィタ。心を見ないで、外見だけを見て、大切なモノを見失う一族なんて知りませんわ。そんな人達と関わるべきではないのですわ。」


  母様は何に怒っているんだ?本当に?


「ツンディナ。ありがとう。私はその言葉で救われます。あぁ、アーラシュとシーリィタは知りませんでしたね。私も元はシー一族だったんです。ニ・シー氏族でしたが、髪の色で苦労しまして、氏族を飛び出して商人をしていたんです。若気の至りです。商人をしてた時の恩人が彼らなのです。」


  オヤジは恥ずかしそうにしていた。


  だから母様はあんなに怒って、反対しているのか。最愛の人を外見で捨てた一族。そりゃ、母様はどんな理由であろうと反対するわけだ。


  オヤジは母様をなんとか説得していた。最終的に母様が折れてワン・シー一族を受け入れる方向で話が決まった。

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