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強さを求めて

 謁見の間には、既にタツミとリュウカが胡座をかいて、レイト達の到着を待っていた。


「ごめんなさい。少し遅れたかしら」


「んにゃ、私らも今来たとこだ。それに、客人を待たせるのはうちのモットーに反するからな」


 はっはっは! とリュウカが笑い飛ばす。その横で、


「ええ、気にしないでください御客人方。とりあえずお座りください」


 と、タツミが微かな微笑みを湛えた顔で、綺麗に四つ並べられた座布団の方を指して言う。


「あら、ありがとう。それじゃあお言葉に甘えて……ほら、みんなもそんなとこに突っ立ってないで座りなさいよ」


「え、ああ、うん」「あ、はい」「おう」


 真っ先に座布団の上に座ったリシュアに促されるまま、レイト達三人も座る。


「っしゃ、それじゃあまぁ、ちゃちゃっと本題に入ろうか」 


 リュウカが言う。


「お客人達の「修行」ってのには私とタツミの二人と、こっちに来ている四帝達で分担して見ることになってる。簡単な組み分けを言うと、物理担当が私、魔法担当がタツミってとこだ。昨日リシュアから聞いた限りだと、レイトは私で、レミィはタツミが担当ってのは確定だが、さて、残る二人はどうする?」


「そうね……私はタツミの方に行くとするわ。攻撃系の魔法に関してはまだまだだから。ライナはリュウカの方があってんじゃない?」


「ああ、だな。魔法の使えない体で魔法の勉強したって意味ねぇし、この際、鎧に甘えない戦いの一つでも身につけられりゃ御の字だ」


「決まりだな、それじゃ、時間がもったいねぇし、早速修行場まで跳ぶとするか」


 リシュアとライナの修行方針を聴き終えるや否や、リュウカはパンッと膝を打って立ち上がり、レイト達の方へと歩み寄る。


「はぁ、姉さんは少しせっかちすぎる……と言いたいところだけど、今回ばかりは大陸の事情が事情。仕方ないな……」


 そんなリュウカの動きに溜息をつきながら、タツミも立ち上がって続く。


「んじゃ、早速行くとするか。なに、ほんの一瞬の話だ」


 そんな事を言いながら、リュウカはポンポンポンとレイト達四人と、横にいるタツミ、の体に立て続けに触れた。


 直後、リュウカ自身と、彼女の触れた部分から、青い光が溢れ、それぞれの体を包み込んでいく。ただ一人、ライナを除いて。


「え、ちょ……私は? 予想はしてたけど私だけ何か発動してないんだけど⁈」


 慌てふためくライナの声。


 当然といえば当然のことだった。物理も魔法も、ありとあらゆる外部からの影響を遮断する魔力の鎧。そんな代物を有する彼女に転移魔法が発動する筈など無い。


「しまった……ライナには魔法が効かないんだった……」


 全身を包み、明るさを増していく光の向こうでリシュアが頭を抱えた。


「は? そういうことは先に言ってくれよ……。もう止められないぞ⁈」

 

 リュウカの声を聞いた直後、レイトの視界を、意識が薄れるほどの強烈な青い光が覆った。


*   *   *


 「う……ここは?」


 レイトが恐る恐る目を開けると、そこは霜で薄っすら白く化粧をした草原、冬にも関わらず足首辺りまで青々とした草の茂ったその只中であった。


 つい一瞬前まで座っていたはずの謁見の間は愚か、桜花の城も、城下町すら見当たらない、だだっ広い平野。周囲をぐるりと見渡してみても、近くにポツリと一軒の小さな小屋が建っている以外は、建物らしきものはなにも見えない。


「よっ。レイトの方は無事に跳べたみたいだな」

 

 ガラガラと小屋の引き戸が開き、中から、髪を後ろに括る途中のリュウカが現れた。そのままレイトの目の前まで歩いて来て、勢い良く地面に座る。

 

「なにが起こったかまるでわからないって顔だな。ハハ、無理もないか。えっとな、ここは東方の端の端、桜花から四十キロほど東の修行場でな。今日はここで一日、お前に稽古をつける予定だ。もう一人、ライナの方は転移魔法が発動しなかったが…………魔法を無効にしちまうって体質なら仕方ないな…………」   


「てことは、ライナは一人城に残ってるってことなのか……」


「まぁ、そういうことになるが……、気にしなくていいさ。ライナが城に残ってることは、さっき小屋の中から父上に伝えておいたからな。どうせ暇だろうし、父上から直々に稽古をつけてもらえるはずだ」


「それなら良かった。そういえばリシュア達は?」


「ああ、あいつらならタツミと一緒にもう一つの修行場に跳ばしたよ。外にに魔法の流れ弾が行かないように、防御結界を張り巡らせた特別な修行場さ」


 そう言いながら、リュウカは背負っていた大太刀を降ろし、鞘から抜いた。

  

 鞘より現れたのは、ところどころこぼれた、無骨で、スミゾメの二倍はあろうかという刃幅の黒色の刃。


 それを中段に構えたリュウカの目は既に真剣そのもの。今この瞬間から修行は始まっているという意思の表れが、彼女の身体全体から滲み出している。


「さてと、それじゃあ、眠気覚ましがてら、朝の修行を始めるとするか。四帝達が来る前に、まずはお前の腕を確かめさせてもらうからな」


「わかった、よろしく頼むよ、リュウカ」


 ここで、もっと強くなろう。リシュアの悲願を、大陸の平穏を掴むために。


 リュウカに負けじと、自分の思いを胸に刻み、レイトは腰の鞘から白銀の剣、魔剣スミゾメを抜いた。

 





 


 

















 



 




 



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