魔剣の使い方
「「所有者に協力的な死者の魂を取り込んで剣自身の姿と性能を変化させる」……ねぇ……」
ほら見たことか。一通り話し終えたレイトはリシュアの表情の変わりっぷりに少しばかり後悔した。
予想していた通り、数分前までの余程ドキドキに胸を躍らせていたのであろう、眩しいくらいにキラキラした表情は何処へやら。代わりに「それ、微妙じゃない?」と言わんばかりのポカンとした表情が彼女の顔に張り付いている。
「うん……まぁ……そうね……確かに使い勝手は悪そうね……」
「……だろ?」
そもそも、仮にこの手の中にある魔剣スミゾメが、あの転生者であるリョウジの所持する魔剣ロードゲヴィナーに匹敵するほどの力を有していたとしたら、カムイとの会話を、今しがたリシュアに聞かれるまで心のうちに留めてはおかず、昨日のうちに彼女に話していただろう。
「まぁ、単純に「死者の魂を吸収する」っていうなら相当強いとは思うんだけどさ…………」
「ええ……そうよね、その部分よね。何なのかしら、「所有者に協力的な」って。あれかしら、御先祖の魂が力を貸してくれる。的な?」
「さあ。それとも「戦場で死んだ仲間の魂を宿す」みたいな話かもしれないけどな……」
もしも本当にそうだとすれば、スミゾメを使う場面など起こらないに越したことはない。
「ちょっと! 縁起でもないこと言わないでよ……。とにかく、今はその剣の性能の話は保留にしましょ。別に所持していたところでデメリットはないだろうし、何より、あなたのお父さんの過去と桜花の人達の思いの詰まった剣だもの、大事にしなきゃね」
「ああ、もちろんだ」
正直なところ、レイトはこのスミゾメが、魔剣と言うからには何かしらの恐ろしく強力な能力を秘めているのだろうと、少しばかり期待していた。その能力を使いこなすことができればリシュア達他の三人に比べてまだまだ貧弱な自分も、もっと追いつけるのではないか、もっと強くなれるのではないかという、そんな期待。
とはいえ、この剣は父であるブランの遺した唯一の形見らしい形見。リシュアに言われずとも、そもそも手放すつもりなどない。むしろ昨日のカムイの話を聞き、その気持ちはより一層強くなっていた。
その意味を込めて、レイトはリシュアの言葉に強く頷き返す。
頷き返しながら、レイトの頭の片隅に
(親父はこの剣の能力を誰の魂に使ったんだろう…………)
そんな疑問がふわりと浮かんで消えた。