第三の眼
お久しぶりです。最近あんまり執筆の時間が取れず、結構な間が空いてしまうことが多いので、今回は、分量を減らして投稿間隔を短縮することにしてみました。
「で? 組織を追い出されて命まで狙われるって、あなたいったい何をやらかしたのよ」
あの後、少女の身体の魔力走査と周囲の生体反応の探知を四、五周は繰り返してから、リシュアはようやく少女への警戒を解き、軽い自己紹介を交わした後で、レミィに事情を尋ね始めた。
「……リシュアさん、それにレイトさんと言いましたか。あなたはブラックロータスについてどこまで知っていますか?」
受け取ったココアのカップに息を吹きかけて冷ましながら、レミィが焚火の向こうで上目遣いにレイトとリシュア視線を送る。
さすがは元ブラックロータス、魔族であるリシュアの容姿にも全く驚きも怖がりもしない。
「……俺はずっと傭兵のよの字もないド田舎で暮らしてきたから、そのブラックなんとかっていう名前も初めて聞いたな。リシュアは結構知っているようだったけど」
「知ってる、って言ったって一般に知れ渡っているレベルの話よ? 金さえ払えば善も悪も関係なしに依頼を受けて、盗みから街一つの破壊まで何でもこなす最凶の魔法傭兵組織。それと、あとは何か特殊な魔法を使うってことぐらいね」
「はい、リシュアさんの言う通りです。自分で言うのもなんですけど、最凶というのはおおむね正しい表現です。ただ、一つだけ間違いを指摘するとすれば、ブラックロータスは組織ではなくて一つの種族の集団である、ということです」
「…………え、なに? あなたのところ、種族ぐるみでそんな残虐で手の付けられないくらいやばい傭兵集団やってるの? まぁ昔は種族総出で人間を滅ぼそうとしてた魔族の子孫の私が言えたことじゃないんだけど」
「……面と向かってそこまで言われるとさすがにグサグサくるものがありますけど……まったくもってその通りです……」
質問にコクリとうなずいて、レミィはココアを一口すする。
「私もよく知らないですけど、今から数百年以上前に、どこかの狂った国の狂った魔法研究者達が長い年月をかけて生み出した人造にして最強の魔法使い『セロ』。それが私達ブラックロータスの祖らしいです」
そう語りながらレミィは立ち上がって二人の方へと近づくと、おもむろに右手の掌を二人に見せた。
「なんだこれ……眼帯? でもどうしてこんなところに?」
「最近巷で噂の中二病ってやつかしら」
彼女の右掌には黒い革製の眼帯がちょうど目を隠す部分が掌の中心に来るような形で巻かれている。
「……もちろん、本来の用途でつかうためです」
どこか憂いを帯びたほほえみを浮かべながらレミィは意味深な言葉と共にスルスルと眼帯の留め紐をほどいていく。
「これこそが私達ブラックロータスの存在意義なのです。…………そして私にとっては忌むべき能力でもあります」
そして、ハラリと落ちた眼帯の後ろから、およそ手という部位にはあるはずのないものが姿を現した。
本来の用途で使うため。とレミィが言った通り眼帯で隠されていた掌の中心に一つ、ルビーの如き透き通るような赤色の瞳をした眼球が、ギョロリあたりを見回すように蠢いていた。
どうも、今回も最後まで読んでいただきありがとうございました<(_ _)>。
やっぱり異世界冒険ものには魔法使い、ということで新キャラ、レミィを登場させてみましたが、どうでしょうか。特殊な魔法とは何なのか、そしてなぜ追い出されたのか。まだまだ謎が多い彼女ですが、次回では早速その謎が解消されると思います。
今回は1000字程度と結構短い内容でしたが、次回はもう少し伸ばしたいなぁと思います。 それではまた、数日後に<(_ _)>